海水濾過装置の改修なる

櫻井 保雄



 昭和46年春,増殖研究施設が本所構内に完成したことにより,魚介藻類の増養殖技術の基礎となる,対象生物の生理・生態特性を解明する研究が進展し,アワビ属の成熟・産卵生理の解明など,国際的にも注目される数々の研究成果が生れて来た。
 昭和46年以降14年間に東北水研・研究報告に発表された増殖関係の研究論文だけをみても,この施設を利用して生まれた論文は23篇(60%)を占めている。
 これらの研究を支えた実験施設の腎臓にも相当する海水濾過槽は,昭和53年6月の宮城沖地震による若干の漏水があり補修を行ったほかは,ほぼ,年中無休で用水を浄化する役目を果して来たが,昭和57年7月に発生した茨城沖地震以降,底部から少量の漏水が断続的に発生し,いつ破局を迎えるかも知れない危険な状態となり,緊急に改修する必要にせまられていた。
 幸い,昭和59年度に予算要求を行なったところ,改修費として,施設費757.5万円が計上された。
 早速,東北地方建設局の技術援助を得ながら,新しい重力式全自動濾過槽の完成に向け,計画設計を行なったところであるが,旧濾過槽は,前記のとおり若干耐震性に難点があったため,この点を改善すべく苦慮したが,昭和59年12月大望の完成にこぎつけた。
 新濾過槽は,耐震性を改善した強化プラスチック(FRP)製で.濾渦能力は旧濾過槽に比して20%アップとなっており,附属の揚水設備も更新され,万全の給水体制に整備されたことにより,増殖研究の一層の発展が期待される。
 最後に,この施設の完成にあたり,予算の確保に努力された研究課並びに技術会議,技術援助をして下さった東北地方建設局営繕部の諸氏に感謝する。

(庶務課長補佐)

 仕 様
 寸 法 内径:2.4m,高さ:4・5m
 濾 材 アンスラサイト(径1.5m),砂利(2〜15mm)
 濾過能力 20立方メートル/H

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