私の一歩

沢田龍治



 東北区水産研究所八戸支所に採用になってからもう5カ月。仕事は今だおぼつかない 毎日ですが、それなりに日を過ごしています。もともとがのんきな性格なものですから。
 海が大好きな私にとって、この職場はなかなか気に入ってます。自分の部屋から毎日海へ 向かって出勤という訳ですから、満員電車で汗をかく人達に比べれば、天国と地獄。同じ水研でも 八戸とは違い満員電車で出勤という所もあるそうですが、それでも私は若いうちに是非全国の水研を 廻ってみたいと考えています。
 人生は潮の満ち引きのようなもので、楽しい時が来たかと思えばすぐ逃げてゆきますし、 苦しい時だって長くは続かないはずです。大切なものをなくしたと思えば、またいつの間にか 戻ります。住む土地をかえ、部屋をかえ、ふとふり返ってみると、つくづくそう思います。
 今、学生時代の部屋を思い出してみてもそうです。
 ぼくのまわりには熱いコーヒーと
 一生懸命生きてる気の合う仲間たちがいた。
 みんなみんな不器用で、だけどやさしくて
 一緒に笑い、一緒に歌い、一緒に泣いた。
 何故か、私は引越が好きです。住み慣れた部屋をひきはらい、また次の場所へ行く。 最後の荷物を車に積み込むと、いろんな思い出がふと通り過ぎる。今度こそ幸福になれますようにと 車を走らせる。あるいは、この町は最高だったねと涙を落とす。立ち去る町の思い出をかみしめ、 新しい町への希望を胸に・・・この感じがたまらなく好きです。そんなわけで、若いうちは、 いろんな土地で生活してみたいと思っています。しかも海のある町がいいですね。
 住み慣れた町を出るときは、思い出の数だけ楽譜が増えています。荷物のなくなった部屋で 一緒に過ごした仲間たちと、一緒に作った歌を歌います。
 とりあえず、今は、この八戸で一生懸命生きてゆかなければと思います。自分の人生の 主人公は自分ですから。
八戸支所庶務係

Ryuji Sawada

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