東北水研に来て

奥田邦明



 本年4月1日付でもって、東北大学理学部海洋生物理学講座から、当水研海洋部に転勤して まいりました。学生の時からずっと大学にいたため、今回初めて就職したかのような緊張感の混った 新鮮な気持ちで移ってまいりました。
 大学では水産と余り縁のない風波の研究をしていたためか、これまでに何人かの人に なぜ水研に移ったのか聞かれました。今思うと、学生の時、海洋学の研究を志した頃 頭に描いていたのは黒潮に代表される雄大な海流現象でした。それがいつの間にか風波の研究に のめり込んでしまい、10年以上の年月を費やしてしまいました。今、東北水研に来て、心を 惹かれながらただ遠くからながめていた黒潮、親潮、暖水塊といった海洋現象が、自分がこれから 調べなければならない対象として身近なものになって、軽い興奮と幸せを感じています。何度か 予報会議を経験し、漁況予測での最も大きな問題のひとつが、暖水塊あるいは黒潮分派の動向と いった、現時点では正確に答えを出すことが困難な中規模スケール(数百Km)の海洋変動の 予測であること、また水産と関係がないと思っていた風波と密接に結びついた海洋混合層の現象が、 水産にとっても非常に大事であることなどがわかりました。やらなければならないことの大きさ、 困難さがわかってくるにつれ、自分の不勉強さ、非力さが思い知らされ、少々不安も感じています。
 これからの自分にとって、さし迫った問題に対処するだけでなく、予測を念頭においた基礎 研究を地道続けてゆくことが大事であると考えています。
 温かく迎えて下さった水研の先輩同僚諸氏に厚く感謝致します。今後ともよろしくご指導 下さいますようお願い致します。
海洋部第1研究室

Kuniaki Okuda

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