東北海区近海の海況(昭和58年)

武藤 清一郎



 当水研海洋部では、関係各機関の観測結果より、毎月の東北海区漁場海況概報を刊行している。1983年の東北近海の海況の経過および特徴については、概報をもとにして第33回東北海区海洋調査技術連絡会(東北水研、1983年12月8日・9日)および第14回東北ブロック水産海洋連絡会(福島水試、1984年1月24日・25日)にそれぞれ報告した。以下に海況の特徴についての述べる。


黒潮域
 東北近海の黒潮は5月に一時的に36.5゜N付近に達したが、8月までは36゜N付近で南偏傾向であった(6月100m深水温図)。9月以降は37゜N付近に達し例年並となった(10月 100m深水温図)。
 沖合では148゜E、152゜Eおよび160゜E付近でそれぞれ38゜N、37.5゜Nおよび36゜N付近が蛇行の北限となっていた(6月 100m深水温図)。
 また,黒潮の蛇行の谷は5・6月と35゜N以南にあり,6月には冷水塊(T 100 13゜C)が観測された(6月100m深水温図)。
混合域
 近海の黒潮の北縁から北にのびる暖水は5月に37゜Nに張り出し,その先端(T100 10℃)は6月には38゜Nを越えていた。沖合でも黒潮の蛇行の北縁から暖水が北に張り出し,その先端(T100 10℃)は149゜〜150゜E,152゜Eおよび160゜E付近でそれぞれ40゜N付近に達していた(6月100m深水温図)。
 2・3月と塩屋埼沖に暖水塊(T100 14℃)があった。
 2月に三陸沖にあった暖水塊(T100 9℃)は徐々に北上して,5月以降は鮫角沖に至った(6月100m深水温図)。更に,襟裳岬に接近し,秋には津軽暖流に接した(10月100m深水温図)。
親潮域
 親潮第1分枝は3月に鹿島近海(36.5゜N)に達した。鮫角沖に暖水塊が接近するにともない北に移り,8月以降は暖水塊の北縁にとどまった(10月100m深水温図)。 親潮第2分枝は5月には鮫角沖の暖水塊の沖側を南に張り出し,その一部は暖水塊の南縁沿いに西にのび6月に金華山近海に達し(6月100m深水温図),8月には三陸〜常磐近海に張り出して36.5゜N付近まで達した。それ以降も三陸近海に分布し,それに連らなる冷水が三陸〜常磐近海の各所に点在した(10月100m深水温図)。
津軽暖流域
 津軽暖流の尻屋埼東方への張り出しは,4〜6月は142゜E付近までであったが(6月100m深水温図),8月以降は143゜Eを越え9・10月と右回りの環流域を形成した(10月100m深水温図)。11月以降は再び142゜E付近までの張り出しであった。

(海洋部第2研究室)

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