東北海区の沖合漁業概況

安井達夫



 初夏になると,東北の海は黒潮分派の北上,暖水塊の形成,親潮の後退,表面水温の上昇に伴って,カツオ,マグロ,カジキ,サンマ,イワシ,サバ,イカなどが北上を始め,カツオ釣,マグロまき網,イワシ・サバまき網,イカ釣,イカ流し網,大目流し網などの沖合漁業が一斉に活動を始め,8月からはサンマ棒受網も加わって,水温が低下してこれらの魚介類が姿を消す12月まで,各地の漁港は大変賑います。この間,当水研の資源部と八戸支所は漁況予報や情報収集や海上調査に大わらわになります。
 57年度のカツオ漁は前号に書いたように,初めのうち漁場が北上せず気がもめましたが,台風通過後の7月になると漁場が急速に北上し好漁となり,秋には三陸・道東沖が高温になって,珍しく11月になっても好漁があって,総計47千トンの好漁で終りました。ビンナガはカツオ好調のためもあって,竿釣りでは昨年並の10千トンでしたが,大目流し網では11千トン強となり,比較的好漁で終りました。まき網によるクロマグロは,昨年同様三陸北部のはるか沖合に漁場が形成されましたが,昨年大漁をみせたメジ(若齢魚)が育ってくるかとの期待ははずれ,それより1年大きい50〜60キロものが多く,時には100キロを超えるものが1まきで100尾以上も獲れて,文字どおり一かく千金を得た人もあった。8月15日から解禁になるサンマ漁は,出だしに好漁した船があって予想どおりの好漁(25万トン前後)と思われたのが,その後極端な不漁となり,9月末までの漁獲量が平年の3分の1という状況で,サンマ棒受網漁業が始まって以来の最悪の状態になるのではないかと騒がれ,10月初めの第2回予報会議に集った関係者の顔色は冴えませんでした。ところが,2日日に好漁ありの情報が入り皆愁眉を開いたものです。当水研は第1回予報会議のときから一貫して,冬春季の稚魚分布調査,春〜初夏の幼魚未成魚北上群調査,漁期前のサケ・マス流し網漁船,モウカザメはえなわ漁船,調査船のサンマ群発見情報などを根拠に,57年度のサンマ資源量は多いと判断していましたが,夏秋季に北海道東部から千島列島沿いの海域に,観測史上かつてなかった暖水塊群の羅列,海面の高温状態が起きたために,サンマが北千島沖合に集まり,なかなか南下してこなかったため初漁期の不漁となったものです。このため10月以降一転して好漁となり,大型魚の混合割合も多かったのですが,台風の通過数も多く時化気味で,結果は193千トンの中漁に終りました。サバの極端な不漁,初漁期不漁のため小型サンマの漁獲が少なかったこと,在庫が少なかったことなどにより魚価は平均して前年度の2倍以上に終始したため,最低でも1億最高は3億円に近い漁獲高をあげ,サンマ漁業者にとっては史上最善の年になりました。その替り消費者にとってはサンマも高級魚の仲間に入ったかとため息のでる秋であったわけです。

(資源部長)

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