増養殖概況

小金澤昭光



 1〜6月の東北太平洋岸における水産増養殖の主な動きについてお知らせします。この期間は,魚類ではサケ,ニシン,貝類ではカキ,ホタテガイ,アワビ,コタマガイ,ウバガイ,藻類ではワカメ・コンブ・ノリの採取期で,最も多忙な時期である。
 アワビについては岩手・宮城両県で,例年より生産量の減少が伝えられ,ノリについては壷状菌による生産の減少が宮城県下松島湾,万石浦においてみられた。ホタテガイ・アサリ・コタマガイの二枚貝類では下痢性,麻ひ性貝毒が青森県から福島県に至る沿岸部で例年より早期に発現し,3月下旬から出荷規制に入っている。このような生産量を阻害する側面がある一方,明るいニュースとして,漁場管理,種苗放流による新資源の定着という,漁民と行政・研究が一体となった新しい資源管理方策の知見が得られつつある。
 例えば,福島・茨城両県においては,ウバガイ・コタマガイの漁期前資源量の把握によって,漁獲規制を行ない資源の維持に成功した。また,宮城県万石浦においては,地域性ニシンの定着による漁獲量の増加があった。さらに青森県下北半島野牛漁業協同組合では,昭和53年よりホタテガイの種苗を継続放流し,本年は1,281トン,3億4千万円の漁獲があった。ちなみに,当漁協の年間水揚金額は約4億円で,従来はホタテガイの漁獲はみられないところであり,この新資源の造成は未利用水域として位置づけられる外海砂浜地域の開発に強い影響を及ぼしている。
 これらの知見は,行政・研究・漁協と一体の中で進められていることに注目すべきで,資源培養型漁業の技術開発上重要な意味をもつものと考える。また漁業生産を行いながら,自然に発生する資源を維持している事例として貴重なもので,これらの資源動向の解析を充分に行なうことにより,現在求められている複合経営のメニューを拡大できるものと考える。

(増殖部長)

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