東北水研の30年

庄司東助



 東北水研を定年退職して早や5カ月が過ぎました。27年5月に、東北水研の底魚資源研究の 補助職員として再就職して以来、ずうっと東北水研の職場はもとより、八海区水研の職場のみなさんの、憲法擁護の毅然たる立場によって、全農林 労働組合の組織の中っで、私は拙い自分の学問思想の自由を堅持し続けることが出来ました。この ことだけでも私は、ずいぶんと幸運に恵まれた人間であったと、思うことが出来ると思います。こう して東北大学は農学研究所の、農業経済研究室の先輩や友人たちにはげまされながら、漁業経済研究に一貫して打込んで 参りました私は、みなさんの深い暖かい友情にただ感涙するばかりでございます。水産研究所の研究 手法は勿論自然科学的なものであり、経済学専攻の私はむしろ異端者的な存在でしたが、水産研究の 究極の目的は、漁業経済社会の民主的発展の保障にあったわけですから、それは全農林労働組合運動の 組織理念と全く軌を一にするものでありました。科学と宗教との戦い、地球は円くて太陽の周囲を まわっているんだといって、ローマ法王の宗教的権威に屈しなかったガリレオの地動説の あの不屈の思想こそ、人類思想の発展における、科学と宗教との斗いの発展の基調をなすもので あり、水研の職場に再就職した30年前のあの日から、皆様の深い暖かい御支援と御鞭撻の御蔭で、 私は今日までなんとか健康で幸運な生活を送ることが出来ました。ここに更めて心から厚く御礼 申し上げる次第でございます。農研の農業経済研究室の吉田寛一先生に、やめる半年程前に、退職 することの電話連絡をいたしましたら、「何やめる、やめるなら御土産をおいて行け」ということに なり、この秋頃には出版されると思うのですが、「日本漁業の経済構造、その発展と矛盾」という 題名の拙著を出すことにしました。農文協から出版される私の最後の著書を何とぞ御批判頂くよう お願い申し上げて、みなさんへの御別れの御挨拶にしたいと思います。
 最後に、皆様の一層の御活躍と御多幸を御祈り申し上げ、益々の御健斗を期待する次第であり ます。1982年5月19日、五月晴れの好日に、石巻にて。
Tosuke Shoji

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