昭和56年東北海区の浮魚資源と漁況の概況

佐藤祐二


 スルメイカ 三陸沖のスルメイカ漁況は,昭和40年代後半から約10年間をこえる低調な時期が続いた。昭和55年になって,これを一挙に挽回するかにみえる漁況の好転があったが,56年にはストレートな漁獲増とはならず,資源の回復が未だ本格的でないことを示す結果に終った。三陸の代表として八戸港についてみると,55年の約9,500トンに比べほぼ3分の1の3,100トンを湯げたに止まった。55年7・8月には特に道東近海で好調で全国から漁船が集中したが,56年にはここでも低調であった。6月中旬に関係機関で実施した漁期前一斉調査において,“わかたか丸”は40゜20′N,145゜30′E付近でイカ釣り機1台1時間あたり26尾といったやや濃密な魚群を補え,その後の漁況予測の基礎資料を得たが,同じ頃石川水試が実施した標識放流の結果では魚群が早期に南下し、道東・三陸沖における魚群の滞泳は数量的にも時間的にも55年に及ばなかったことを示している。

 アカイカ 沖合の凍結船を主体とするアカイカ漁況は,数量的にはほぼ55年並の水準であって,八戸港の陸揚量は約32,000トンであった。上述のスルメイカの伸び悩みもあって,アカイカを指向する漁船も多かったが,結果としてはそう大きな漁獲量の伸びにはつながらなかった。

 マサバ 八戸沖のサバ漁場は大体8月下旬から本格的な盛況になる。56年には漁期開始が大巾に遅れ,9月6日が初漁であった。漁獲量も少なく,まき網船1回投網あたりの漁獲量は5〜10トンが大半という,これまでの各年では考えられない程に低調であった。
 主要漁港である八戸港の9〜12月の陸揚量は約18万トンで55年同期の2分の1弱にすぎなかった。11月半ばから利根川尻にも好漁場が形成され,東北海区の南北2ヵ所に漁場があり,中間には全く無いという特異な漁況を呈した。
 漁獲物の体長がここ10ヵ年で最も大型であった点も特徴であって,夏季に三陸の定置網に乗網する未成魚のサバが殆ど姿をみせないこととあいまって,太平洋の資源についてはここ数年の動向が注目される。

 マイワシ 56年における三陸近海のマイワシ漁獲量は著しい伸びを示した。八戸沖では6月半ばからマイワシ対象のまき網の操業があり,例年この時期の主漁場が常磐沖に限定されることと対象的であった。12月までのこの海域の漁獲量は13万2千トンで近年最高である。7〜10月に操業された釧路沖漁場でも70万トンを越す史上最高の漁獲があげられた。

 漁獲物の特徴は特に漁期後半に昭和55年生れの末成魚(中羽イワシ)の数量が大きかったことであり,この年級が卓越していることを示した。

(八戸支所第2研究室長)

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