編集後記


 誰のため、何のために作るのか。編集し終えたニュース原稿を積み上げて、一服つけて、つくづく難しいものだと思う。せめて惰性に流れぬよう、ときどきは初心を新ためることにしよう。
 昨夜はラッパがいつになく近く聞こえた。わが家の辰己、警察学校のグランドをへだてた小高い森の向こうの自衛隊駐屯地で鳴っている。毎日朝晩、兵隊さんを寝起きさせているらしい。隣りの警察学校で毎朝聞こえる君が代と共に、去年の春ここに住みついて以来なじみのラッパである。春頃の乱調子にくらべると、近頃は一段と滑らかな音色になった。夜の底から吹き上って、木立の闇をぬい、冬枯れの芝生を這ってすべるようにまるで“音もなく”流れてくる。ピアノやビオロンは耳にひびくが、ギターは胸にひびく。雷と太鼓は肚に、女の声は脳天に、鐘とラッパは心にひびく。
 春浅く身を刺す風に向いけり   河多郎
 鳶の舞春立つ風は歯にしみて    〃
 この度の編集委員は、私のほか森英夫、林小八、平井光行、谷口和也、渡辺光男の各氏でした。どうもご苦労さま。
(倉田)

kiren@myg.affrc.go.jp

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