近況報告
笠原康平
東北水研を退職して、早くも半年が過ぎました。在職中はもとより、退職後も何かとお世話に
なりながらその後すっかり御無沙汰してしまい、まことに申し訳なく存じています。この度「東北
水研ニュース」に何か執筆するようにとの編集委員会からのお薦めがありましたので、この機会に
お詫びを兼ねて近況などを思いつくままに書いてみます。
昨年11月、依願退職の辞令を懐にして東北水研の玄関を後にした時、第一線から退くという
淋しさの一方で、これからの自由な生活への期待で胸がふくらむ思いでした。しかし実際にその
生活に入ってみると、意外な所からいろいろの障碍が起こってきました。その一つは体の故障です。
足や腕の関節に不意に痛みが走り、歩行や腕の上げ下げにも不自由するという状態が、断続的ながら
続いています。さらに唯一つ残っていた奥歯がぐらつきだし、咀嚼の用をなさなくなりました。
これらの故障は当然起るべき老化現象の1つとみてよいでしょう。しかし体だけはまだ十分若いと
思いこんでいた矢先に、はっきりした老いの事実を突きつけられて少なからずショックでした。この
ショックで万事消極的となり、退職以来今日まで文字通り鳴かず飛ばずの毎日を送っています。
朝は7時頃起きだし、2種類の新聞を午前中一ぱいかけて読み、午後は庭いじりや散歩で過ごすと
いうのが1日の大体の日課です。新聞は隅から隅まで、虫めがねで丹念に記事を拾ってゆきます。
大見出しの記事よりも、隅の方のベタ記事にむしろ興味を惹かれるものが多いことも新しい発見です。
最も興味を惹くのは、やはり水産関係のニュースです。特に三陸の漁況の動きには強い関心が持たれ、
日々の入港船数や水揚量の推移を追っています。この間カツオ漁況予報の記事が掲載されていましたが、闇夜を手探りで歩むに似た予報文作りの苦悩が、
今は懐かしく思い出されます。30年間の水研での思い出は、これからも折にふれてよみがえって
くることでしょう。
水産世界の前途に極めて多難を予想される今日、水産研究をとりまく環境もまた厳しいものが
あろうかと思います。
皆様の御健闘を切にお祈り致します。
前 資源部長
Kohei Kasahara
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