新任にあたって

三輪勝利



 10月1日付で私はたまたま東北水研所長の役をひき受けることになった。資源,海洋,増殖の研究分野しか持たない東北水研に来ることには多少ためらいがあったが,ものの見方や考え方にそれほどの違いがある筈がないと思い踏み切ったわけである。
 東北水研の担当している海域は,北海道と共に魚介藻類の大供給水域であり,200カイリ時代になってより一層重要性を増している。したがって,東北水研の果たすべき役割りも重くならざるを得ないのである。とはいえ太平洋北部海域における漁業は数多く,ここでの問題をすべて担当することは,現有スタッフからみて不可能である。業界,水試,栽培センター,大学との結び付きを大事にしなければならない。とくに水試は水研と共通した役割りを持っているから,水試に頼られるような存在であって欲しいと思う。東北水研も発足以来30年の歴史を持ち,その間に着々と実績を挙げてきている。
 水研や水試は産業研究機網であるということがよく言われる。産業の発展に如何に役立っているかが,存在の評価となっているようである。産業との直接の結び付きは技術を媒介して行われる。現在ある基礎的知見をフルに活用して技術化することが必要であり,技術化の段階で不足している基礎的知見の補充もまた水研や水試の仕事であり,その過程はプログレシブであり,第三者にも理解できるものでなければならないと思う。資源や海洋の研究は,資源評価,資源培養,漁況予測,海況予測などの技術の確立を指向していると思われるが,その進歩の過程は理解し難い点が多い。企連室長懇談会で,各漁業毎に研究の現状と問題点を整理することになっていると聞いているが,結構なことだと思い期待している。
 老令化社会の到来という言葉が昨今よく聞かれる。これは60歳以上の高令者が全人口の7%を越えた時に使われる言葉だそうである。東北水研の平均年令をまだ計算してみていないが,恐らく45〜50歳の間にあるろうと思う。養殖研を除いて,他の水研もすべて,年令構成のピークは50〜51歳にある。したがって10年後には水研の変革は避けられないだろうと言われている。ともあれ,事務関係とは違い研究関係は後継ぎの養成には少なくとも3〜5年は必要であるから,早めに対策をたてておかなければならない。水研には定員のあきが2名しかないというから,研究の後継者問題は即高令者の勧奨と連動する仕組みになっている。昭和60年をメドに公務員の定年制が提案された理由の一つは公務員の年令構成にあるといわれている。
 高令化に伴って心配されるのは研究の停滞であり,とくに乗船調査等に支障が起こりがちとなることである。研究の発展には,アイデアとバイタリテイが必要であるが,これは若い人に期待せざるを得ないのである。
 私は研究活動がスムースに回転するための潤滑油の役割りを果たしたいと考えており,よき相談役を目指したいと思う。
(所長)

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