YHP  その後

八百正和



 この頃帰宅するとマイクロコンピューターをいたずらしている。12KBのROM(Read only Memory)の中にLevelU級のBASICインタプリーターが入り,更に16KBのRAM(Random Access M.)を持っているCPUと,電源,TV−Disply,CMT−Recorder計22万円の構成であるが,一時代前のミニコン程度の仕事は可能である。コンピューターも安くなったもので,ハードに弱い私でも結構簡単に動かせるようになった。もともとコンピューターは人間が楽になるように作られたのであるから,使う方が大変になる事はある筈がないし,あったら誰も使わない。もっともこの為に裏方の苦労は大変なもので,2進法の数字ととりくんでコンパイラーとか,エディターとか実に難かしいプログラムにとりくんでいる。私はこういう方面は全く駄目でもっぱらソフトだけであるが,ハードに強い方は10万以下でコンピューターを動かす事が出来よう。
 このようにコンピューターが安くなったということは,逆にコンピューターにまかせられる仕事はコンピューターにまかせた方が良いという事になる。ところでコンピューターに何が出来るかとよく質問を受けるが,非常に困った質問で,一般的にはコンピューターに何が出来るかというよりも,何をやらせるかが問題だと,逆に質問する。ところでコンピューターの出来ることは簡単にいうと4つしかない。
 第1に外部からのデータを覚えこむこと。第2に覚えたデータ又は内部で作ったデータで計算すること。第3に結果又は覚えたデータを外部に出すこと。第4に条件によって仕事の順序を変更すること。以上である。
 この4つを組合せて簡単な仕事から優雅な仕事迄人間がどのように与えるかがプログラムであり,コンピューターを使わなくても,常に私達がしていることである。一番簡単なプログラム言語であるBASICでは,基本的にはINPUT,PRINT,GOTO,IF−THEN,DIM,STOPの6つのコマンド,更にFOR−NEXT,GOSUB−RETURN位覚えると,プログラマブルの電卓より簡単にプログラム作成が可能であり,又仕事も早い。このようなコマンドを知っていると自分自身がプログラム言語でプログラムを作成出来なくとも,自分自身の仕事の内容即ちプログラムを,プログラマー(この人はプログラムをプログラム言語に変換する人である)に充分説明出来るであろう。それがFORTRAN,COBOL等のプログラム言語を使用する場合でも。
 前に紹介したように本所にYHP9830シリーズというコンピューターがある。徐々にではあるがUSERが増えてきている。殆どの方はコンピューターなんて始めてという人が多いが(実際には電卓を使った事がないという人はいない),プログラムの入力から本人自身にまかしている。間違えてもコンピューターからエラーメッセージが出るからその指示に従えば良い(私の安物では実行時に出てくる)。要は習うより慣れろで,一度使用するとこんな便利なものかということになる。今迄手作業で自分自身又はアルバイトを使っていた事が簡単に出てくるのだから当然であろう。少し気に喰わない結果が出てきても,プログラムをチェックして変更すれば,又やり直してくれる。手作業ではこうはいかない。
 コンピューターのプログラムなんてコロンブスの卵で,種をあかすと極当たり前の事である。従って種をあかさずにこのような事迄やっているという例だけを示そう。入力データはカツオ漁場別統計である。出力は緯度・経度1度桝目毎の漁穫量を級別に記号で打出すという事で,漁場図を作ろうという事である。魚種をINPUT,更に漁獲量か,1隻当り漁獲量かを指示すると,旬別に漁場図を打出してくれる。YHPは打出し間隔を調整出来るので,桝目を正方形にすることが出来る。この点大型のLINE PRINTERより便利である。透明紙に印刷した地図を重ねてXEROXすると5頁の図が得られる。1枚のOUTPUT約15分である。
 この図はコンピューターで打出したもので絶対に正しい。プログラムどうりに正しいという事で本当にこのとおりかは別問題である。プログラムには自信があるが,次に与えたデータは?之はコンピューターに判断出来ない問題である。そしてこの図をどうみるかはコンピューターは全く関係ない。このようなプログラムを作ったUSERの責任である。
 コンピューターは万能ではない。具体的にはデータを作成することは出来ない。又データが正確であるかの判断は出来ない(プログラムでチェック出来るがそのプログラムは人間が作っている)。コンピューターで出来る仕事は良いけれど,むしろこのようなデータ作成及び結果の考察はどうしても人間様の領域である。そのための時間をコンピューターで稼ごう。
 最後にコンピューターには結果に対して全く責任はない。プログラムの問題,デ一夕のINPUTミスが誤った結果(人間の期待に反して)を出してくる。
(資源第2研究室長)

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