わかたか丸改装工事

田 村 和 一



本船は昭和45年3月建造され,北太平洋を主な舞台として毎洋観測及び漁業資源調査に従事して来たが調査研究の多様化に伴い諸種の欠点や不便さが次第に目につくようになった。もちろん毎年改善を重ねては来たが十分ではなく,昭和53年度補正予算において改装の運びとなった。その内容は船体をほば中央部で切断し長さを3.06m延長して次の通り設備の充実と船内居住環境の改善を計ったのである。


1.居住区の増設(士官室,調査員室及び職長室 各1)及び配置替え(職長室及び船員室 各1)
2.発電装置の換装(補機関及び発電気 各1台の換装)及び機関室区域の拡大(当直室の改装,工作室の新設並びに機関取出し開口部の新設)
3.事務室の新設及び賄室備品の更新
 何分にも建造以来の大工事なので慎重の上にも慎重を期さないと後日取り返しのつかない悔いを残すことになるので専門家(造船界及び水産庁関係者)及び経験者(過去に改装の経験のある船主及び乗組員)に出来る限りの参考意見や指導を仰いだ。とくに懸念されたのは,次の点である。


1.船体構成材料が法的にも又,耐航性にも充分合致し耐えられるだろうか。
2.船の安定度はどうなるだろうか(特にナビゲーション,スタビリティ)。
3.船体長と機関馬力がアンバランスとなりスピードに影響したり,振動や騒音発生の原因とならないか。
4.船体に歪を生じ,他の部分にまで影響を及ぼさないか。
 その他細部にわたって検討すると工事に着手する迄は憂鬱であったが故人日く「なせばなる……」であった。工事日程の大略は以下の通りであった。

昭53.12. 6 船体上架(船体中央部切断個所及び機関室改装附近の調査開始
12. 8 船体切断個所焼払い及び外板受支柱設置
12.20 切離部熔断開始
12.22 切離完了及び船前部3・06m移動
12.23 延長部骨材取付け開始
12.24 魚艙撤去及び工作室作製準備開始
12.25 延長部外板取付開始及び旧補機関陸揚げ(D320)
12.27 旧主配電盤陸揚げ
昭54. 1.11 パイピング開始及びスカイライト開口部工事開始
1.12 ビルヂキール取付開始及び通風ダクト工事開始並びにケーシング取付
1.16 船底バラスト注入
1.18 配線工事開始
1.26 旧空調機陸揚げ
1.28 船員室内大工々事開始
1.30 空調機(新)取付け
2. 2 補機積込み(3304T)
2. 3 ボートデッキ木甲板張り開始
2. 5 各パイプ類テスト及び主配電盤並びに給電盤積込み
2.12 当直室,無線室,事務室新設工事開始
2.13 当直室ウレタン吹付け工事
2.15 船底外板塗装
2.26 延長部及び新設ケーシング塗装
2.27 各室内備品及び調度品取付け
3. 5 下架及び重心検査
3. 7 主機及び補機確認運転
3. 8 補機及び発電気負荷運転
3. 9 航海計器及び電気レンジ類テスト
3.13 予行運転(各種テスト実施)
3.14 同上
3.16 試運転(各種テスト実施)
3.17 総補正工事(手直し工事)
3.22 工事完了及び検収引渡し

 試運転に於いて各種テストを繰返した処,改装前より安定した航走をし,何れも納得行く結果が出たので関係者一同安堵の念に包まれた。この新しい性能が今後の調査に充分生かされる様期待する。終りに本工事を指導して下さった関係係官,実際に現場で工事を担当した造船関係各位又,数ヶ月の間味気ない寮生活をしながら頑張った乗組員各位に紙上を以て感謝します。

(わかたか丸船長)

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