200カイリ水域内漁業資源調査

堀田秀之


 1977年に入って各国の200海里漁業水域の設定に端を発し国際漁業環境は急激に変化した。
 海洋法会議の草案によると,沿岸国の生物資源については,余剰分配の原則である。すなわち「沿岸国は水域内の魚など生物資源の維持,保存と利用限度を示す許容漁獲量を決定しなければならない。その許容漁獲量の内,自国の漁獲能力に見合うものは優先的に漁獲できるが,他国に対し漁獲許容量の余剰分に対し入漁の機会を与えなければならない。」 この卑近な例として,東北・北海道の漁民が,長年にわたって開発してきた伝統的な北洋漁場において,余剰原則の優先によって,従来この漁場で活躍していた,北転船167隻,沖合底びき網70隻,ニシン漁業167隻,西カム母船式底びき網20隻,底はえなわ・刺網約200隻,コンブ漁船約330隻など合計約1,000隻にのぼる漁船が出漁できなくなってしまった。
 日ソ漁業暫定協定による,ソ連200海里水域における我が国漁船の操業水域,漁獲割り当て,魚種別組成,漁期その他条件は次の表1表2のとおりである。
 このような国際情勢を背景にして,これまで我が国沿岸および近海漁場における生物資源は,我が国だけの漁船が利用してきたが,これからはこれらの水域の資源についても国際的資源との認識に改めざるを得ない。
 我が国200海里漁業水域の設定に伴い,当該水域内における漁業資源を科学的根拠に基づいて評価し,漁獲許容(可能)量等の推計に必要な関係資料を整備する目的で,「昭和52年度200カイリ水域内漁業資源調査」が推進されることになった。
 この調査は,投棄魚等未利用資源をも含む漁業資源について,既存資料を再整理するとともに,次のような事項について実施する。なおこれらの調査は,今後継続的に実施する。

(1) 資源評価のための基礎資料として,基本的には,漁獲成績報告書により漁場別漁獲統計を作成整備する(漁場別漁獲統計)。
(2) 市場水揚魚について市場調査員等により生物測定を行ない,生物統計を作成整備するとともに標本船による操業実態細目表により生物情報を補足する(生物統計)。
(3) これらの基礎資料を基に,既存資料等をも加味して科学計算を行ない,その結果を用いて資源評価を行なう(科学計算および資源評価)。
この調査は,我が国周辺のあらゆる魚種について実施する必要があるが,当面重要漁業資源ならびにその主要漁業を対象に実施する。

 この調査が円滑に推進されるためには,船の大小を問わず漁業者各位をはじめ,各種漁業団体,各地の漁業協同組合,各県行政部局ならびに各県水産試験場の支援と協力が必要ですからよろしくお願いたします。

(企画連絡室長)

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