標識放流からみたビンナガの東・西回遊について

浅野政宏


 ビンナガの回遊・生長を調査研究するために、かなり古くから日・米両国で標識放流を実施してきた。日本の研究機関では遠洋水産研究所が中心となり、数年前より力をいれて放流を行ない、その結果本年度日本で放流したビンナガが東へ回遊して米国沿岸で再捕された。いままでは、日本近海で放流したビンナガは米国側沿岸では再捕された記録はなく、本年度の再捕によって北太平洋水域におけるビンナガの回遊は、東から西、西から東へと回遊することが実証されたわけである。米国側水域で放流し日本近海で再捕された記録は過去にも数多くあり、1974年に報告を受けた尾数は14尾に達している。(を参照)
 つぎに今年度再捕報告を受けた分について簡単にふれてみたい。          
 ビンナガの盛漁期に当たる6月に多く再捕され、14尾のうち13尾が6月、1尾が5月に再捕されている。放流はカリフォルニア沿岸およびバンクーバー沿岸で、1971年に放流したビンナガが1974年に2尾再捕、1972年放流したものが8尾再捕された。また1973年分については現在のところ4尾が再捕されている。次ぎに放流してから再捕されるまでの経過日数をみると、いずれの場合も長く、最長経過日数は1035日に達している。また700日以上を経過し再捕されたビンナガが全尾数中9尾もあった。このことは放流した水域より約2年後の日本近海の竿釣り漁場に来遊したことになる。最後に1974年再捕されたビンナガの特徴としては、ほとんどの魚が長期再捕であったことである。
資源第2研究室

Masahiro Asano

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