1998年度VENFISH成果:1212
課題番号:1212
大課題名:海洋環境が動物プランクトンバイオマスに及ぼす影響解析
中課題名:動物プランクトンバイオマスの変動予測
小課題名:動物プランクトンの環境応答特性の解明
担当課題別課題名:混合水域における環境変動が動物プランクトン及びツノナシオキアミの分布様式に与える変化の解明
担当研究室名:東北区水産研究所 混合域海洋環境部 高次生産研究室
担当研究者名:瀧 憲司
協力分担研究室名:東北水研生環研・東北水研動態研

1.目的
 本課題は気候・海況変動が混合水域の鍵種であるツノナシオキアミや動物プランクトンの分布や成長・生残に与える影響を明らかにし、サンマとスケトウダラにつながる栄養動態モデルの構築に資することを目的にする。今年度は、前年度に採集した資料を基に道東〜常磐沿岸におけるツノナシオキアミの分布、産卵、加入、成長の実態並びにP/B比を明らかにした。
2.方法
 1997年4月〜1998年2月の2ヶ月毎に道東、三陸・金華山及び常磐沖に数定線を設けて、海深100,200,300,500,1000m(道東沖は100,200,300,500,2000m)地点においてノルパックネットによる0-150m鉛直曳き及び新稚魚ネットによる夜間の0-150m(海深300m以浅は0-近底層)傾斜曳きによる採集を行った。各標本からツノナシオキアミを選別し、体長、雌雄、交尾の有無等を調べた。
3.結果の概要
(1) 産卵は道東沿岸では10月、三陸・金華山と常磐沿岸では2〜6月を中心に行われた。ファーシリア幼生や未成体への加入は道東沿岸では10月に限られ、三陸・金華山と常磐沿岸でほぼ周年行われた。孵化後1年以内と思われる小型成体(体長10〜15mm)は全域においてほぼ周年出現していた。大型成体(体長15mm以上)は親潮の後退する8月から12月にかけて南の海域から順次消失した(図1)。
(2) 100m深水温帯毎の年間平均分布密度をみると、孵化後ファ−シリア幼生にかけて分布重心を高水温の方向に移動させた。未成体と小型成体は広い範囲に出現したが、後者は分布重心を低水温帯に置き、大型成体は低水温帯にその出現が限られた(図2)。
(3) 全海域における体長組成をみると、体長10mm以上は12月を除いて単峰型か2峰型を示した。また体長モ−ドから成長曲線を推定すると、2〜6月に成長が認められた。
(4) 生産量(P)を成長生産量(Pg)、脱皮生産量(Pe)及び卵生産量(Pr)の3つに分け、それぞれ

Pg=Σ((Wi+1-Wi)/Di×Ni)、Pe=Σ((Wi×Ni×0.1)/D'i)、

Pr=Σ((Ni×Si×Fi×0.0033)/D'i)として求めた。なお、iは体長階級、Wは乾重量、Dは滞留期間、D'は脱皮間隔、Nは密度、Sは交尾雌の割合、Fは産卵数、0.1は脱皮殻の 体重に対する割合:10%、0.0033は卵1個の乾重量を示す。

その結果P/B比は道東、三陸・金華山及び常磐沿岸で7.9、10.0及び10.9、またPg/B比は4.7、5.7及び5.7と算出された。道東沿岸でこれらが小さかった要因は、主に成長の早い幼生の出現が高水温期の10月に限られたことによる()。

道東三陸・金華山常磐
近い将来産卵される予定の卵
カリプトピス
ファーリシア
未成体
成体(<15mm)
成体(>15.1mm)
0-300m平均水温(℃)
図1 発育段階別分布密度(Ind./m^2)の季節変化

近い将来産卵される予定の卵
カリプトピス
ファーリシア
未成体
成体(<15mm)
成体(>15.1mm)
図2 100m深水温帯2℃毎における発育段階別年間平均分布量
縦軸:Ind./m^2 横軸:100m深水温

 3海域における年間生産量(乾重量)とP/B比

Production(wt/m^2・year)% of totalP/B ratiosBiomass(wt/m^2)

Doto
Pg4034.9±6005.259.84.69859.9±608.4
Pe61.2±133.70.90.07
Pr2651.5±3372.139.33.08
P6747.6100.07.85
Sanriku & Kinkazan
Pg4918.4±1220.957.15.68865.4±769.9
Pe30.8±59.50.40.04
Pr3658.0±1804.742.54.23
P8607.2100.09.95
Joban
Pg3642.5±1730.252.75.73635.2±427.3
Pe21.8±25.50.30.03
Pr3252.8±1305.947.05.12
P6917.0100.010.89


Kenji Taki