1998年度VENFISH成果1122



1.目的

 

混合水域における植物・動物プランクトンの分布に影響する物理的要因を分類し,その要因の大きさを混合水域を対象とした海洋モデルを用いて求め,マッピングを行い,それに伴う植物・動物プランクトンの増殖量を推定する.  本年度は,複雑な混合水域を再現できる海洋物理モデルの開発,観測船を用いた栄養塩,植物・動物プランクトンの直接観測による各種生物パラメータの把握と,歴史データの解析による混合域での植物プランクトン変動の把握を目指した.

2.方法

(1)NCEPの1959〜97年の客観解析データの風速場によって駆動した海洋物理モデルの流速場を用いて,27.5−34.5N,129.5−142.5Eで囲まれる海域からサンマ仔魚を仮想した粒子を各年の1/1−31の間移流させることによって,冬季サンマ仔魚の輸送過程の経年変動を調べた.  
(2)同様の流速場を用いて,三陸〜道東沿岸の40.5−43.5N,142.5−145.5Eで囲まれる海域から粒子を時間的に逆方向に移流させることによって,植物プランクトンブルームを引き起こす水塊のsourceの経年的な変動を調べた.移流期間は3/31-3/1に設定した.  
(3)1988〜98年の函館気象台海洋速報の144E線のクロロフィル現存量データを用いて,混合域のクロロフィル変動特性を調べた.方法としては主成分分析を用いた.  
(4)1998年5〜7月及び10月に調査船若鷹丸及び北光丸にて,温度,塩分,酸素,栄養塩,植物プランクトン観測を行った.  
(5)サンマ春季北上群調査の海表面クロロフィル現存量と物理データを用いて,混合域のクロロフィルの変動と海洋構造の関係を考察した.

3.結果の概要

 

(1)冬季サンマ仔魚の輸送実験から,1975〜87年は北に輸送される仔魚が少ないのに対し,1988年以降は多いという長期変動傾向が確かめられた(図1).この変動はサンマ来遊資源量指数の変動とも対応し,冬季サンマ仔魚の輸送過程の変動が,1988年以降の資源の高水準に貢献している可能性が示唆された.  
(2)三陸〜道東沿岸の植物プランクトンのsource解析から,1979〜89年に親潮源流部からの移流が大きく,それ以降は移流効果が小さいという長期変動をしていることが示された(図2).sourceの変動に伴い,植物プランクトンの春季ブルームも長期変動していることが推察されるが,植物プランクトンの時系列が1989年以降しか入手できず実データとの対比はできなかった。  
(3)144Eのクロロフィル現存量の変動を共分散行列を用いて主成分分析した結果から,春季は41゚N以北の変動が主体であり(67%),1991〜92年に非常に高い現存量を持つことがわかった(図3a,図3b).1991〜92年は,親潮が北海道沿岸に張り付いており,親潮域の温度,塩分が低いという特徴をもっていることがcomposit解析から明らかになった.   
(4)若鷹丸の調査結果によって,170E以東の海域でもフロントに伴うクロロフィル極大域が観測された.   
(5)海洋構造の変動から1988年と1998年付近にレジームシフトを伴う長期変動が確認されたが,それに対応して表層のクロロフィルも1998年付近に大きく変動した可能性が示唆された.ただし,この結果に関しては季節変動による影響を再考する必要がある.  


図1.冬季サンマ仔魚の輸送実験において35゚N以北まで輸送された粒子の数の変動(5年移動平均).1975〜87年は北に輸送される仔魚が少ないのに対し,1988年以降は多いという長期変動傾向が見られる.この傾向はサンマ来遊資源量の変動とも対応する.
図2.三陸〜道東沿岸の植物プランクトンのsource解析で求めた,sourceの平均的な緯度の変動.1979〜89年のsourceの平均緯度が高く,親潮源流部からの移流が大きいことがわかる.
図3a.函館海洋気象台の144゚Eの春季のクロロフィル現存量を共分散行列を用いて主成分分析した結果得られた第1主成分(寄与率67%).振幅の大きな領域が41゚N以北に限定されている.
図3b.図3aの主成分のスコア.1991〜92年に非常に高い値を示す.

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