表紙写真の説明


 宮城県本吉郡本吉町明神崎に広がるアラメ群落。アラメは本州中南部太平洋沿岸や九州西・北岸から山陰地方までの南部日本海沿岸にわたって広く分布する我が国近海特産の代表的暖海性コンブ類の一種で,一般に干潮線付近から深さ5mほどの外海の岩上に生育する。藻体は幼時には一枚の笹葉状で,生育するにつれ側葉を生じ,二年目以降は茎の先端部が二叉してその先に5〜15枚の葉片をつけ,ちょうど「はたき」のような形になる。藻体は大きいもので2mの高さに達する。アラメなどの大型褐藻が密生している海域を海中林と呼び,陸上の森林と同等,もしくはそれ以上の生産力を持ち,魚介類の生育場,産卵場のみならず,栄養塩や炭素の吸収による水質浄化等,沿岸生態系において重要な役割を果たしている。近年,地球温暖化や沿岸域の富栄養化などの環境問題が顕在化している中で,海中林の重要性が再認識されつつある。なお,アラメは本州中部・近畿地方や九州西部・山陰地方の一部には食用にする習慣があるが,東北地方では食べない。アルギン酸の原藻となり肥料としても利用される。
(海区水産業研究部資源培養研究室 村岡大祐)