資源評価実践研修会に参加して
後藤友明

 広範囲に分布する水産資源の調査は、単独では困難なことから、浮魚類ではすでにスルメイカ、サンマ、イワシなどで県水試等と水研による一斉調査が確立しているものの、底魚類ではこの様な調査は行われていない。一方、東北地方各県では着底トロールを装備した調査船が整備されてきており、底魚類を対象とする複数の機関による一斉調査が可能となってきた。そこで、この様な調査を実現するためには、各機関が統一した手法をとる必要があることから、その手法を取得すべく、本年度、平成11年度資源評価体制確立推進事業の一環として、資源評価実践研修会(10/1-13,10/15-27の2回)が開催された。私もその一員として前半に参加させていただいたので、少々出しゃばりとは思うが、その概要と参加した感想などを紹介させていただく。
 本研修会で学んで帰ることは、東北水研管内では、「面積−密度法を用いた底魚類の現存量推定を学ぶ」ことを目的として、調査船若鷹丸に乗り込み、トロール調査に関するノウハウを身につけるとともに、新作ソフトウェア「底魚類資源量計算システム」(東北水研八戸支所)を使いこなせるようにする、という内容であった。その企画に賛同する管内水試から、自県の底魚資源管理に燃える有志4名が加わり、隊員として役に立ったかどうかは別として、水研・北大・東北大・九大から来たその道のプロたちとともに、漁獲物の選別から魚種同定・測定・耳石採集等の作業を行うこととなった。さらに我々水試職員は、これらの作業に加え、船上で実際にデータ入力を行うことによりプログラムの使い方の学習も行うという、実際にこれから利用するであろう我々のみならず、水研で日夜データ入力に携わっている方にとって大変有り難い任務も負うこととなった。
 さて、実際の研修会はというと、非常に快適で良いことばかりであったというのが率直な感想である。まず、日頃小さく汚い(ではない県もある)県の調査船に乗り慣れている我々水試職員にとって、若鷹丸があたかも豪華客船並に感じたのは私だけではないと思う。次に、船員の調査内容に対する理解度が極めて高いことが、スムーズな調査運営を可能としていることも好印象の一因として挙げられる。さらに、私は、宮城県以北の北部海域での調査に参加させていただいたが、塩釜出港から入港まで約2週間、出港翌日を除いて悪天候に見舞われることなく、比較的船に弱い(自県船では2回に1回は船酔いしている)私にとっても、毎日の食事が旨く(実際旨い)、毎日そそぎ込まれるビールとともに、ひたすら体内に脂肪として蓄積されたことからもそれが裏付けられる。
 調査が始まると、最初のうちはなかなか要領が飲み込めなかったものの、普段マダラ、スケトウダラ、キチジ等をさばきなれていることもあって、2日目くらいになると、選別・査定・測定の作業も何とかこなせるようになったが、魚種査定でつい考え込んでしまい、作業が中断することもしばしばであった。次第に作業の手順が理解でき、効率が上がってくると、合間に魚の写真を撮ったり、食用として魚をさばいて干したり、と余裕も出てくるようになった。一方、深い海域で大量の泥をすくってしまったときなど、泥の中から泥の色と同化したイラコアナゴやバイスケに入りきらないほどの巨大なムネダラを探し出すこともたびたびで、そんな中から出てくるキチジやベニズワイガニ等見るからに旨そうな魚たち、時折顔を見せるアカチョッキクジラウオやチョウチンアンコウ類等のマニアックな魚が姿を現すたびに一喜一憂し、全身泥まみれになるのも忘れて泥の山をあさっていたりした。また、南下するごとに種数が増し種構成も変わっていくハダカイワシ類等、次々と目新しい種が出てくるたびに図鑑類(八戸支所で作成された“東北底魚フィールド図鑑”が非常に役立った)とにらめっこを繰り返すうち、下船近くになるとすっかり魚の顔を見ればすぐに種名が分かる“にわか目利き”となってしまった。
 その他、夜間の観測の時等、海面近くまで現れるアカイカを我を忘れて釣ったりと、日頃電話や書類に追われる下界での仕事をすっかり忘れて船内生活をenjoyしてしまった。さらに忘れられないのは毎晩繰り返される会合で、これのおかげで約2週間という短い乗船期間でも船員の方々との交流を深めることができ、また、本船ならではの話も伺うことができたことは大きい。
 以上、本研修に参加した感想を思いつくまま羅列してきたが、何分稚拙きわまりない文章なため、他の水試から乗船された方々には神経の行き届かない身勝手な内容となってしまったことをお詫びする。
 最後に、本研修の機会を与えてくださった、東北区水産研究所乾靖夫所長、並びに研修期間足手まといとなる私どもを懇切丁寧に指導してくださった八戸支所資源評価研究室の北川大二室長及び服部努主任研究官、混合域海洋環境部の加藤修室長及び清水勇吾研究員に感謝申し上げる。そして、我々を快く迎えていただき、乗船期間を通して乗船時におけるあらゆる事柄に御配慮いただいた、若鷹丸佐々木洋治船長をはじめとする船員の方々に厚く御礼申し上げる。
(岩手県水産技術センター、資源評価実践研修会 10/1-13)

写真1 塩釜港出航前の若鷹丸
写真2 漁獲物選別風景
写真3 北部海域調査
Tomoaki Goto

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