東北区水産研究所設立50周年を迎えて

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浮 永久


 当所は、今年、平成11年(1999年)の5月に設立から丁度50年目を迎えた。そこで、これを機会に、これまでに先人が果たされた業績を回顧・継承して、今後の道標とするために50周年記念事業を行うこととした。記念事業は、「記念式典」の挙行、「研究所一般公開」の開催、「東北水研ニュース」特別号の刊行である。記念事業の企画・実施を進める母体として、昨年度に「50周年記念事業実行委員会」(委員長:企画連絡室長)が所内に組織された。記念事業は、三陸会(当所OB会)との共催とすることにし、実行委員会に三陸会(当所OB会)役員を迎えた(副委員長:小達 繁三陸会々長)。記念式典、研究所一般公開は成功裏に無事終了した。以下に、当所の沿革を振返り、併せて記念事業の概要を報告しておきたい。
1.東北区水産研究所の沿革
 昭和24年(1949年)6月1日付で農林省設置法が改正され、東京にあった農林省水産試験場が発展的に解消され、全国に8海区水産研究所が設立されることになった。その一つである東北区水産研究所は、塩釜市に設置され、陸上の所管範囲を青森・岩手・宮城・福島・茨城の5県とし、研究の対象水域としては、千葉県野島崎以北青森県竜飛崎に至る東北海区を担当する研究所として発足した。設立当初、塩釜市杉の入表にあった庁舎は、塩釜漁港の拡張・整理に伴い敷地が狭くなったため、昭和42年1月に現在地に新庁舎を建設して移転、その後、昭和45年12月に増殖研究施設を、さらに平成7年3月に生態系解析実験棟を増設した。八戸支所は、昭和22年4月に開所した農林省水産試験場宮古試験地が、昭和24年6月に当所の所管となり、昭和25年5月に八戸市鮫町に庁舎を新築し移転、昭和46年3月に改築された。
 沿岸及び沖合の水産生物資源及び海洋環境に関する調査・研究に従事してきた当所の漁業調査船には、「第一旭丸」(昭和23年建造、56トン)、初代「わかたか丸」(昭和35年建造、83トン)、次代「わかたか丸」(昭和44年建造、143トン、後に174トンに増トン)がある。3代目にあたる現在の「若鷹丸」(平成7年建造、692トン)は、我が国200海里水域のみならず、より広範囲の関連した水域における水産資源の合理的な利用及び管理体制の確立に資する水産資源及び海洋環境に関する先導的・基盤的な調査・研究を推進することを目的に建造され、最新の調査機器を搭載し大型化が図られている。
 設立当初の組織構成は、庶務課、海洋資源部、利用部、増殖部および八戸支所であったが、昭和37年4月、利用部業務が東京へ集中され、代わって海洋部が新設、庶務課、資源部、増殖部、八戸支所の組織構成となった。昭和52年4月には、試験研究の総合的な企画および国内外機関との連絡調整部門として企画連絡室が新設された。昭和52年2月の200海里漁業水域設定に伴う新しい海洋秩序の下で、わが国水産業を巡る社会経済的情勢の変化は著しく、わが国周辺水域の高度開発利用と資源の維持増大を目的とする資源管理型漁業の実現、“つくり育てる漁業”の推進が緊要となった。
 このため、その基盤を支え得る新しい研究体制を整えるため、水産庁研究所は昭和63年4月に機構改革を行い、当所は、資源管理部、海洋環境部、資源増殖部、八戸支所の組織構成に改められ、併せて焼津分室及び気仙沼分室が廃止された。平成4年4月には増殖漁場研究室が新設された。その後、平成8年の国連海洋法条約批准・発効による漁獲可能量(TAC)制度の導入等に対応し、将来にわたる水産業の発展を図る試験研究体制とするため、水産庁研究所は、平成10年10月に大幅な組織改正を行った。当所は、親潮と黒潮に挟まれた特異な混合域の海況特性を最大限に生かすことを目標に、TAC設定の基礎となる資源評価などに関する研究を重点化するため八戸支所を強化、また、生物生産力に関する統一的な研究強化に向けて混合域海洋環境部を新設、並びに“つくり育てる漁業"など海区水産業の基盤となる研究推進のために海区水産業研究部を新設するなどして研究体制を整備した。
 平成9年、行政改革会議は、国立試験研究機関を独立行政法人化する方向で答申し、平成10年6月「中央省庁等改革基本法」が成立、平成11年1月には中央省庁等改革推進本部において平成13年1月を目標に84の試験研究機関等を独立行政法人へ移行することを決定した。水産庁研究所は設立50周年を経て、21世紀には新たな組織体制のもと、国民のニーズに一層、的確に応えた水産研究を展開していくことになる。
2.研究史
 当所は、設立40周年を記念し、東北水研ニュース特集号を刊行している(平成元年12月、No.37)。そこでは、資源管理部、海洋環境部、資源増殖部、八戸支所の各研究分野毎に、研究史と今後の研究の推進方向がまとめられている。併せて、OBの寄稿文18点が掲載された。最近の研究動向については、この3月末に中央水研から刊行予定の「水産試験研究一世紀記念誌」に、当所の部長・支所長が以下のような記事にまとめ投稿している。これらのことから、今回、研究史は割愛したい。なお、当所の研究業績を付した論文は、現在500余点を数える。来年度に刊行する「東北水研研究報告第63号」には、研究業績リストを掲載する予定である。 


3.設立50周年記念事業について
(1)研究所一般公開
 「一般公開」は、テーマを「いのちは海から」とし、記念事業の一環として9月5日(日)の10:00-16:00に開催した。催事の内容は、例年実施している研究成果のパネル展示、ミニ講演会、近海魚介類の展示、タッチプール、海洋観測機材の展示、模擬運転状態にした若鷹丸の公開等に加え、今回は50周年記念として写真展を加えた。テーマの趣旨に添ったミニ講演会では、生物環境研 桑田 晃研究員が「海を支える小さな生き物たち」、資源培養研 斉藤憲治室長が「人は丘にあがった魚である」と題して講演し、それぞれの研究内容を判りやすく伝えていた。写真展は「三陸会」の発案によるもので、写真はOBの協力を得て収集、整理され、第3図書室のパネル10枚にわたり展示された。創立時に溯り各種会議やイベント、チリ地震津波の被災状況等、貴重な写真が展示され、市民や来所されたOBの目を引き留めていた。
 「一般公開」は、研究所250名、調査船(若鷹丸)290名、合計540名と昨年を上回る来所者(うち40名が当所OB)があった。主要新聞・広報誌等で行事の予告を行ったので、その効果と思われる。今夏、当所に対して実施された「科学技術行政監察」の担当官のお一人が夫妻で来所されたのは印象的であった。「一般公開」の様子は、朝日新聞、河北新報、日本水産経済新聞等に掲載され、NHK、塩釜ケーブルテレビ等で放映された。塩釜商工会議所には、「しおがま会議所ニュース」10月号に特別に紙面1ページを割いて、写真入りで紹介頂いた。各社に対してご協力に感謝申し上げる。なお、一般公開の様子は、当ニュースの次号で情報係長がビジュアルに紹介する予定である。
(2)50周年記念式典
 「一般公開」終了後の同日、場所を市内ホテルに移して「記念式典」を開催した。式典では、当所 乾所長が主催者として挨拶した後、川本省自水産庁資源生産推進部長より水産庁長官のメッセージを御披露頂いた。次いで、東北ブロック試験研究機関を代表して宮城県水産研究開発センター 佐藤陽一所長から祝辞を頂戴した。祝電披露の後、海洋環境、海区水産業、漁業資源の各分野における最新の研究トピックスを、中堅の室長が紹介した。演者とトピックスは次のとおり:加藤 修海洋動態研室長「東北沖における親潮水の新しい循環像」(資料作成:清水勇吾・伊藤進一両研究員)、山下 洋沿岸資源研室長「カレイ類の成育場としての干潟域の貢献度」、北川大二資源評価研室長「東北海域における底魚資源調査-TAC体制に対応して-」。
 研究トピックスとしては、このほか、生物環境研(松尾 豊室長)から「マイワシ仔稚魚の成育上への移動様式の解明」、海区水産業研究部(飯倉敏広部長)から「海区水産業研究部の最近の研究成果紹介」と題して、資料による紹介がなされた。式典には、来賓21名、OB56名、北水研・西水研・水工研の各所長、中央水研庶務課長を含む転出者10名、当所職員54名、合計143名が参会し盛会であった。(別記名簿参照)
 式典に続いて同会場において祝賀会を開催した。企画連絡室長の開会の辞の後、司会は小達和子氏にバトンタッチ。来賓として辻田時美元所長、佐藤重勝元所長、濱田義徳(社)日栽協専務理事の各位から祝辞を頂戴した。次いで、鏡割りに移り、岩崎寿男(社)漁業情報サービスセンター会長、阿部久壽塩釜商工会議所会頭、東北大学 大森迪夫教授、加藤清壽塩釜地区機船漁協組合長、佐野 蘊元所長の木槌で祝いの薦被りが開かれた。乾杯の音頭は中村保昭前所長にお執り頂いた。歓談に移り、安永義暢参事官、長谷川峯清船長のスピーチの後、林 繁一元所長の万歳三唱で閉会した。小達和子氏の名司会もあり、懐かしい顔ぶれの再会、OBと現役の交流等で、大いに盛り上がった。
 今年度、当所は、4月から7月の間、「科学技術行政監察」を受け、その対応に追われたこともあり、今回の記念事業は、「三陸会」の支援無しには実行不能であった。本事業を共催頂いた三陸会の役員諸氏ほかのお名前を記し、感謝申し上げる:小達 繁会長、浅野政宏副会長、森 英夫事務局長、鈴木富子さん、小達和子さん。今回の記念事業を通じて、私どもは、一般市民やOB各位と交流を深め、些かなりとも当所の研究業務を理解頂くことができたように思う。これを好機として捉え、一層、研究活動に邁進して行きたい。
(3)東北水研ニュース特別号の刊行
 本ニュース特別号の刊行にあたり、広く当所OB及び転出者の皆様から寄書きを募集することとした。寄書きは予想を上回る37編も寄せられ、本号の大部分を占めるに至った。読み進めると、東北水研を舞台に活躍された時代のあれこれが彷彿とされ、ひとつの研究史をも形成していて、私達が確かに生きてきたという証左がここに見事に残された。
 最後に、研究所一般公開の来所者、記念式典の参会者、記念事業を企画・立案遂行した研究所職員・OB各位等、当所50周年記念事業にかかわったすべてのみなさまにあつくお礼を申し上げて稿を終えたい。
(企画連絡室長)

Nagahisa Uki

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