東北区水産研究所開所50周年によせて

クリックすると拡大します

佐藤陽一


 東北区水産研究所の開所50周年、誠におめでとうございます。戦後間もない昭和24年に、日本の食糧欠乏と水産業の凋落を試験研究面から支え、振興する志を持って、東北水研が設立されたことは、発足の当初より、水産の実学的研究を重心とした研究姿勢にも鮮明に現れていると思います。幾多の先輩諸兄が業蹟を積み重ねられ、地理的に重要な太平洋北区、三陸沿岸における漁業生産上重要な試験研究課題を手掛け、日本の中でも有数な水産研究の流れを創ってこられたことに畏敬の念を抱きます。同時に東北地域の各県試験研究機関のそれぞれの分野における指導的役割も果たして来られました。
 その一例として、三陸沖合の海況変動の解析と、沿岸〜沖合における漁場形成の要因の緻密な調査分析を重ね、生産性が高く、しかも変化の激しい三陸沖合漁場の変動を予測し、漁況予報の総合的情報発信を可能とする、基礎的・基盤的研究成果を上げ、私達各県の試験研究、生産指導の先導的役割を果たされたことなどが上げられます。さらに、三陸沖合を回遊する魚類資源の生態と変化の動態を把捉し、これを基にした予報による漁業界への実践的指導能力は高く評価されます。
 話は変わりますが、私が東北水研との関わりを持ったのは、昭和39年からですが、この頃には、既に貴水研の研究実績は高度に成熟したものとなっておりました。当時、松島湾内のカキの生産に関わる諸問題を宮城水試との共通課題として取り組んで頂いておりました。ここでも永年に亘る課題を精力的にかつ優秀なパートナーとして、解決に導いて頂いた記憶を鮮明に抱いております。
 サケ・マスに関する放流事業の推進についても、宮城県は多くの課題を抱えておりましたが、別枠研究の中で放流技術の開発・海中飼育技術の開発・沿岸離岸期の特性解明等の技術基盤の確立に、指導性を発揮されたことは記憶に明かなところです。
 また、現在進められている栽培漁業、特に磯根資源造成技術の開発に関してはアワビを中心とした種苗生産技術の研究と、その成果としてのマニュアルの完成及び各県栽培漁業センターへの技術の移転に関して多大の貢献をされています。この技術過程の次の段階はマリーンランチング計画に受け継がれ、磯根資源の海域における管理技術の研究が行われ、その成果は各県の磯根資源の造成管理に活用されております。
 その他、東北水研が栽培漁業に果たされた役割は多数にのぼりますが、ここでは養殖業について話させて頂きます。のり養殖の基盤技術の研究をされたのは、東北水研が日本の先駆けでした。養殖のりの品種分類・生態的特性・生活史・そして養殖技術への応用研究といった一連の成果が展開されました。その技術的応用によって、宮城ののり養殖が他県に先駆けて発展し、本県独自の技術体系を持ち、新しい展開を生む結果となりました。宮城ののり業界は、現在ののり養殖技術の発展の一翼を担っています。
 これらの意欲的・先導的な試験研究・産業基盤に直接関わる技術開発の業蹟は、東北太平洋沿岸、あるいはこれを越えた地域で、私たちに多大な影響と地域産業への貢献をされたと思います。
 過去50年を振り返り、これからの50年を考えますと、現在私たちの居る時間と空間では、環境の変化が少しずつ起きており、これに対する対応、あるいは人間が作り出した要因に対する対応が求められるのではないか、といった漠然とした不安を抱きます。これらに適切に対処できる研究の在り方が、人間に利益をもたらす水産研究の基本的な練磨と共に重要になって来ると思います。
 私たち各県の試験研究機関に在る者は、漁業・水産業の未来に希望と信頼を置くものですが、その未来を形作る試験研究を主体的に切り開き、リードしていく東北水研の今後の牽引力に、期待と信頼を寄せる次第です。
 今までの50年以上に、今後の50年を我々のチームリーダーとして活躍されることを御期待申し上げ、一言寄稿させて頂きました。
(宮城県水産研究開発センター所長)

Yoichi Sato

目次へ戻る

東北区水産研究所日本語ホームページへ