1.Introduction
 アワビ養殖の特徴:家畜飼養および木材生産業との比較,世界のアワビ養殖生産の現況
2.アワビ生産体系
 1)成熟親貝の育成:水温環境条件と成熟(成熟有効積算温度),漁業と産卵時期の漁獲制限,飼育条件,世界のアワビの成熟期比較
 2)産卵誘発と授精:産卵誘発刺激条件,干出刺激,水温変化,光周期条件,紫外線照射海水,過酸化水素,アワビ卵の構造と有効精子濃度
 3)幼生飼育:余剰精子の除去と洗卵処置,飼育密度,発生速度と海水交換処置,形態の発達と必要な処置,抗生物質使用の功罪
 4)採苗技術:着底・変態開始時期,行動と形態の特徴,着底・変態誘起物質の調整,着定基質の準備方法,匍匐粘液とGABAの作用,着底密度
 5)珪藻飼育:飼育板表面の管理,珪藻の繁殖調節,施肥の方法,光量の調節,濾過と海水の水質,汚損生物の混入,飼育密度管理
 6)養殖飼育:飼育水槽の種類と特徴,飼育密度調節
3.生産設備,装置:海水給排水系統,ポンプ,濾過器
4.適地選定条件:水温条件と生育速度,海抜高度と過飽和気体の影響
5.餌料材料:海藻の種類と餌料性,摂食刺激化学物質,アワビの種類と海藻の嗜好性,人工餌料開発の現状と将来予測
6.感染症等:日本のクロアワビ,カリフォルニアのクロアワビにおけるVirus感染の嫌疑と斃死現象,寄生性多毛虫(Sabellid)の脅威,防除対策
7.遺伝学的観点:ヨーロッパヒラガキでの近親交配の事例と遺伝資源多様性の重要性
8.養殖生産管理:生育過程における体重の増加と餌料要求量,年級群別適正飼育密度調節の事例と考え方,殻長別飼育水槽配分例と分配作業量,水槽別投与餌料配分量の決定と年間必要量
9.資源増殖:日本におけるアワビ資源添加技術の現状,人工種苗移殖による増殖の生態学的側面
10.先端研究紹介:匍匐粘液とジブロモメタンによる着底・変態機構,アメリカ合衆国カリフォルニア州モントレーで開催された第3回国際アワビシンポジウム(1997年10月26日〜30日)で発表した内容の紹介

 講義は,始めにスライドを用いて実際の養殖生産体系を紹介し,次いで個別技術について黒板に図示しながら解説する方法で行った.英語による講義としたが,スペイン語圏からの参加者の多くが理解していないと感じたので,できるだけ黒板に図示し,用語も英単語をいちいち黒板に書いて説明した.
 チリ国側からの要望により,第三国研修の講義科目はアワビの養殖生産技術の向上に関連する内容としたが,参加者の国情や地理的条件からすればアワビが適切な種類であったか疑問がある.ノルテ大学は,第三国研修以上に,養殖産業への実用的応用のための技術改善に主なねらいがあったものと思われる.すなわち,サケの養殖産業に次ぐ種目としてアワビを位置づけ,独立採算性を達成できる技術を確立することに重点を置いていたと考えられる.付加価値の最も高いエゾアワビを日本へ輸出することを前提として,産業的養殖生産を目標としていることからすれば,エゾアワビの飼育技術向上につながるいかなる知見をも入手したかったのであろう.


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