クチバシカジカ,Rhamphocottus richardsoni

 1994年7月21日岩手県種市沖水深約35mから採取された。『海洋と生物』に掲載された青沼 (1994)の解説によると,本種は北アメリカ西海岸の沿岸域では普通種であるが,日本沿岸では希種とのことで,現在までに成魚の採集報告は4例(岩手県角浜,相模湾,松島湾,岩手県釜石市),仔稚魚の報告は1例14尾(茨城県久慈川河口)なされているらしい。このように,日本では非常に珍しい魚であるものの,採取した磯崎 司氏は以前にもクチバシカジカを採取して6ケ月ほど飼育しており,写真の個体とは別に1995年に採取されたクチバシカジカを8個体も自宅の水槽で飼育している。ダイビング技術の発達によりこれまで人の目が行き届かなかった水深の生物を観察する機会が増え,かつ,生物に対する興味を一般の方並びに漁業者の方が強く持つようになった結果,我々の調査では見落していた水深帯から貴重な情報が報告されるようになったのではないかと考えている。なお,写真のクチバシカジカは1995年7月現在も飼育されている。