朝日田 卓
*ハイブリダイゼーション法 |
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原理:二本鎖DNAの変性とアニーリングの性質を利用して人為的にハイブリッドを作らせ(図3)、遺伝子の解析を行う方法をハイブリダイゼーション法という。異なる種のDNAでも相同性領域であればハイブリッドが出来ることを利用した解析法である。一本鎖DNAはニトロセルロースやナイロンなどと強い結合力を持つので、変性させた一本鎖DNAをこれらで出来たメンブレンへ吸着させ、固定しておく。一方で、調べようとするDNAと相補性を持つ特定のDNA(これをプローブprobeという)に、予め放射性同位元素(RI:radio isotope)や非放射性の化学物質などによって標識をつけておく。このプローブDNAも変性させて一本鎖とし、さきのメンブレン上に固定された一本鎖DNAとハイブリダイゼーションを行うと相補的な塩基配列部分で二本鎖形成が行われる。ハイブリッドの形成された部分でプローブに標識された物質によって、特定のシグナルが検出される。この、電気泳動したゲルからうつしたメンブレン上で特定の塩基配列の存在を調べる方法をサザンハイブリダイゼーション(Southern, 1975)といい、分子生物学の研究において最も重要な手法の一つとなっている。尚、本研究ではRIを用いない非放射性の化学物質によってプローブを標識する手法を用いている。 |
北米ではある水産系の会議において、天然の遺伝資源を乱したり予測のつかない影響を及ぼす恐れがあると言う理由で、人工種苗の放流は出来るだけしないようにしようという決議が採択されたと聞く。また、FAOは生物種の多様性の保護保全の問題に本格的に取り組み始めた。生態系を乱さずに、自然の生産力を最大限に生かせるような増殖事業の展開を真剣に考える時期が来たように思えるが、最後に書いたような会話が交わされる日が来るのは夢物語であろうか。