北へ

久米 漸


 高知の元南海区水産研究所を振り出しに、清水の遠洋水産研究所、東京の東海区、中央水産研究所を経て、この度さらに北へ向い3月16日付けで佐野前所長の後任として着任しました。これまで、主にまぐろ資源研究に従事し地球的規模のアプローチが求められましたが、東北水研に着任して3ヵ月余が経過し、日本周辺水域、とくに東北ブロックの海の豊さと水産業の多彩さ、また、我が国における重要な位置付けを実感として捉えられるようになってきました。
 昨今の水産業を取り巻く世界の趨勢は、ブラジル環境会議等に代表されるように環境関連問題に無関心では、従来の商業漁業の存続が厳しい局面を迎えております。一方、国内的にもマイワシ資源の低減傾向が明らかとなり、果たしてそれに替る魚種資源が出現するのか関心の深いところですし、増養殖業についても、貝毒の発生、漁場環境の劣化等緊急な問題が派生しております。このような情勢の下で、水産業が自然の海洋生態系と調和をとりながら、生態系活用型の産業としてその存続を図ることが重要であり、試験研究もこの点を取り入れたアプローチが従来に増して必要になっております。
 東北水研が国研として先導的、基盤的研究の充実を図ることはもとより、東北ブロックの地域としての特長を浮き彫りにして、水産業を活力および魅力ある産業としてアピールしながら、試験研究を推進することが必要です。そのためには、平成元年8月の長官通達により発足した東北ブロック水産業関係試験研究推進会議等を通じ、地域の水産業振興に寄与する試験研究の効率的推進について、水研と水試等との具体的な相互連携を強化し活性化することが重要であると考えております。
 東北水研は最近急速に若返りが進んでおりますが、これまでに先達が築いた研究資産と良き伝統を継承すると共に、時代に即し将来を見据えた水研の役割と試験研究の方向を求めて取り組んで行く所存です。また、所の最重要事項の1つとして、代船建造の時期を迎えたわかたか丸についても、生産の場である海とその生物生産と生態系の機構解明に相応しい新調査船の実現に向けて努力したいと考えております。

(所長)

(Susumu Kume)

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