長谷川峯清


 平成4年4月1日付けをもちまして、開洋丸次席一等航海士からわかたか丸船長に昇任を命ぜられ、水産庁所属船の一番若い、戦後生まれでは初めての船長として転船着任しました。
 私は、東京生まれの東京育ちで、地方で生活するのは今回が初めての経験です。子供達の学校の都合で単身赴任を余儀なくされましたが、生まれてこの方ずっと被扶養家族で自炊したことのない身にとって、ちょっと厳しい生活になりそうです。
 これまでの気楽な一等航海士から船長になるという、船乗りの夢がこんなに早く現実化するとは予想しておりませんでした。着任当初は、初めての船長職務について不安と希望が綯い交ぜになって複雑な心境で、地に足が付かず何か雲の上にでも乗っているような気持ちでしたが、4月7日に赴任してから既に5航海が終り、漸く本船にも慣れ、落ち着いてきました。
 東北区水産研究所に配属されるのは初めてですが、蒼鷹丸、照洋丸そして開洋丸に乗船していた際に調査を通じて研究者との交流もあり、またこれまでに何度かお伺いしたこともあり、今回の移動についてこの面での不安は全く有りませんでした。
 また、異動の打診を受けた際に、本船の代船建造が間近である旨についても伝えられました。定年までの30数年の在職中に、代船建造に携わる機会はそれほど多くは有りません。小生にとって、平成元年度から3ヵ年計画で実行された開洋丸の代船建造に初めから参加できたことは、望外の喜びでした。それがまた今回、本船の代船建造準備に加わることができるということは、全く以て幸運と言わざるを得ません。
 本船の代船建造については、開洋丸建造で得た貴重な経験を生かし、研究者諸氏にとって使い易く、国内はもとより国際的にも信頼され評価される調査データが得られ、また乗組員にとっても働き易く、是非この船に乗ってみたいと言う人が増えるような、魅力のある調査船が建造されると良いと考えております。
 東北区水産研究所は、多種多様の研究項目があることから数多くの調査機器、漁撈設備が求められているわけですが、調査船を建造する際には、先ずどのような調査観測を行なうか、そのためにはどのような船が必要か、を考える必要があると思います。代船は今後20年間は使用するものであり、当然その間に機器の新換えはあるでしょうが、船体や機関はそう簡単に換えられるものではありません。今後、研究課、漁船課、船舶管理室および造船所等の意見を聴きながら、わかたか丸代船が早急に立派に建造されるように、各課室および建造委員各位と共に積極的に行動したいと考えております。
 代船建造は最大の懸案事項ですが、現わかたか丸は船体も古く、その性能も他の調査船と比較してやや劣るものの、代船が完成するまでは研究者が要望する調査については乗組員一丸となってできる限りの努力をし、調査成果の向上と安全な航海を目標に頑張りたいと思います。
 以上、新任地の仕事は身に余る重責ですが、調査業務のみならず代船建造に向けて、心を新たに精一杯努力致す所存でございますので、今後とも一層の御指導御鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

(わかたか丸船長)

Minekiyo Hawagawa

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