安楽守哉


 私が高校を卒業した当時は大変な就職難。幸いにして水研のアルバイト、常勤労務者、正職員とすすみ「職業選択の自由」を行使することなく定年退職を迎えました。周知のとおりの「不良職員」でしたが、あたたかく助けていただいた各位に文字どおり深く感謝しております。
 4月1日から塩釜市内のある団体で嘱託のような身分で、週刊地域新聞の編集や地域経済分析の仕事についております。生まれてはじめてカメラをいじり、その写真を紙面にのせる強心ぶりを発揮する始末です。先日は”学校給食を考える会”の勉強会で話をして、意外と喜ばれてまんざらでもない気分になりました。
 40年も水研でメシをくったのですから水産業のことは頭から離れません。塩釜市内の法人市民税額のランキングをみてみたら、いつの間にか酒の安売り店が第1位、造り酒屋が第2位、水産関係はずっと下位につけていました。かつて「東洋一の魚市場」を誇った塩釜は「酒のまち」で有名になりそうです。魚市場は広く要らないから用地を半分に縮めてホテルを建てようという計画がでているぐらいです。こんな実情に接すると暗い気持ちにもなろうというものです。
 水研のみなさんは相変らずご多忙の様子ですが、関連産業がおとろえるなかで、水産に関する学問・研究は進歩するのだろうかと余計な心配をします。学問はそれ自体一つの体系をもっており、それに携わる人の頭脳や意欲、研究員などの条件に規定されるので短絡して考えるわけにはいきません。しかし、「農学盛えて農業亡びる」という言葉は本当の意味では真理ではなく、「水産業おとろえて水産学も停滞する」というのが歴史の発展法則ではないでしょうか。そうでないとしたら、水産学は日陰の花となるおそれがあります。私の言い分にはきっと異論があるでしょうから、機会があればかみあった論争をしたいものです。
 退職してから3ヶ月が経ちましたが、社会通念である挨拶状もだしておりません。曲げてお許しください。あわただしい毎日(週6日)で休日はただボーとしており、唯一の趣味であるザル碁も囲めません。ただ飲酒の方はつづけております。想像していただけるでしょう。
 これから各位にはいろいろ教示願うことがあると思います。突然に電話をかけたりするかもしれませんので、よろしくお願いいたします。欲を失わないようにつとめますので、少しイジワルに見守っていてください。

(前 資源管理部主任研究官)

Moriya Anraku

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