表紙写真の説明

山下 洋


 エビジャコ(Crangon affinis)がヒラメの稚魚を食べているところをホルマリン固定して写真を撮った。貪食なエビジャコはホルマリン固定されてもヒラメをはなさなかった。エビジャコは我が国沿岸域の砂底及び砂泥底に多数分布する肉食性の甲殻類である。飼育実験によると全長20mm未満のヒラメ仔稚魚を捕食する能力があり、最高で全長15mmのヒラメを1日に15個体捕食した。エビジャコのアタックから辛くも逃れた稚魚の鰭にも、襲われた痕跡が残されていた。エビジャコは水深10m前後の水域に生息するが、夏季に水温が高くなると深所に移動するため東北沿岸ではヒラメの着底期に分布域のずれが生じ、着底期仔稚魚に対する食害は大きくないと考えられる。ヒラメの着底が春季に行われる暖水域の沿岸では重要かもしれない。仙台湾ではむしろ冬季にヒラメの200倍も高密度にイシガレイが着底し、しかも着底場周辺にはエビジャコも大量に分布している。ここで、食うため・食われないためのどのような闘いが繰り広げられているのか、バイオコスモスの私達の課題「異体類の着底場選択における行動様式の解明」の中の重要なテーマのひとつになりそうである。

(資源増殖部 魚介類増殖研究室)

You Yamashita

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