科学技術振興功績者


 この受賞は、本年3月31日付けをもって定年退職された、菊地省吾元資源増殖部魚介類増殖研究室長の「アワビ大型種苗生産技術の開発育成」による科学技術振興功績者としての表彰であった。
 アワビを放流して増殖するため種苗を大量に人工的に生産するには、アワビ母貝の成熟誘導、産卵誘発、稚貝種苗、稚貝育成管理等の要素技術が必要である。
 菊地元室長は、これらの要素技術を全て開発するとともに、効果的な生産に必要な装置を多数考案し、それらをシステム化してアワビ種苗の大量生産技術を完成させた。さらに、生産コスト軽減のための装置を開発し、従来2年以上の育成が必要であった大型種苗を1年間で生産する技術を開発し、岩手県の漁業協同組合の協力を得て事業化を成功させ、成長が速く生存率の高い種苗の大量生産技術を確立した。これらの技術は基幹技術として全国の殆ど全てのアワビ生産施設で活用されており、わが国のアワビ増養殖の発展に大きく貢献してきた。また、アワビ種苗生産技術開発の研究は種苗生産の先駆的業績と位置づけられており、水産生物の種苗生産技術の手本として、多くの魚種の種苗生産技術の開発の原動力となり、種苗放流を基盤とする「つくり育てる漁業」の振興に大きく貢献した。
 菊地元室長は、これらの研究・技術開発の功績により昭和49年に農林大臣賞、昭和59年に水産学会技術賞を授与された。さらに、アワビ種苗生産技術の開発・改良と指導・普及が200海里体制の定着により深刻な打撃を受けている沿岸漁家の生活を守る上で果たす役割は誠に計り知れないものがあることから、科学技術振興功績者に相応しいものとして、今回の受賞となった。


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