森 英夫

故郷は遠くにありて思うもの



 東北水研を離れて3カ月が過ぎました。東北には、3度目の転勤で、昭和59年4月から平成元年3月までの5年間の長い間大変お世話になり有難うございました。
 私の住んでいる養殖研の南勢宿舎は、五ヶ所湾に面した、自然に恵まれた環境にあり、部屋の窓から、朝夕きれいな海を眺めることができます。研究所の窓からも湾内が見渡せ、松島湾と、その景観を対比しております。宿舎から研究所までは、距離にして僅か2kmですが、通勤には起伏の激しい山道を越えることになります。途中、小さな蟹が道路を横断しています。不運にも車に轢かれた者は哀れ蟹煎餅となり果てています。時折雉子や狐も見かけることがあります。朝、宿舎で鶯のさえずりと、漁に出ていく小舟のエンジンの音で目がさめ、やおら朝食とは乙なものでしょう。ただし、天気の良いときのことで、梅雨のときは、雨量も多く、また海辺の天候は変わり易く、晴れ間を見て町まで買い物に行ったつもりがドシャブリ雨となり、ずぶ濡れで帰ったこともあります。静かな小さな町に住んでいると景色が美しいだけに、センチメンタルになりやすいような気がします。
 遠く離れて故郷のことを思うのも、長い人生の中で1頁ぐらいあっても良いのではないでしょうか。
 東北での5年の庶務課長勤務は、皆様の援助もいただきどうにか勤めることが出来ました。力不足で何かと問題も残して去りましたが、今後の東北水研の発展を東北水研出身者として期待し見守りたいと思います。再会出来る日を楽しみに。遙か遠い故郷をしのびながら。
養殖研究所庶務課長

Hideo Mori

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