表紙写真の説明


 今日の資源研究では、研究対象となる生物を飼育することによってその種の生物学的特性を実証的に明らかにすることが特に重要となっている。サンマは1968年に徳島水試においてふ化から約2ケ月間飼育された経験があるが、残念ながらレポートとして報告されていない。この写真は1988年6月下旬に三陸沿岸で採集された受精卵を室内水槽でふ化させ、シオミズツボワムシ、ブラインシュリンプ、稚魚用配合飼料などを餌として飼育されたサンマの受精卵、ふ化直前の胚体、ふ化直後の仔魚(約7mm)、及びふ化後1ヶ月の稚魚(約35mm)である。
 今回の飼育は耳石の輪紋が1日に1本の割合で形成される日輪であることを証明するために計画された。ふ化直前から1ヶ月間に得られた標本によって日輪であることが確認され当初の目的は達成されたが、飼育はその後の順調に進み、9月27日現在ふ化後86日目で体長約100mmにまで成長している。この間仔稚魚は1日に1.0〜1.5mmの成長速度を示し、サンマの成長がかなり速いことが分かってきた。また、成長に伴う遊泳行動の変化も観察され、詳しい飼育実験からさらに多くの知見が得られることが期待される。
(浮魚資源第1研究室 渡辺良朗)

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