マリアナ西部海域のカツオ幼魚調査

永沼 璋



 2年目をむかえた南方海域におけるカツオ幼魚生態調査は,11月11日〜12月18日までの38日間,水産庁調査船照洋丸(1,381トン)で実施された。
 11月10日の晴海埠頭出港当日は秋晴れの快晴にめぐまれ,夕食時には食堂の船窓から駿河湾にクッキリ浮かぶ富士山を眺めながら,豪華な船旅気分を1人で満喫していたのも束の間,大村船長が「富士がきれいに見える日の翌日は時化になる」との一言で,先程までの気分も一変,とたんに食欲不振となる。
 翌日からは,予想通り時化の連続となり,St.1への到着が1日遅れてしまった。それでも17日のSt.1の操業時には連日の時化もややおさまり,カツオ幼魚の漁獲と調査の成功を祈ってお神酒で乾杯,本格的な調査を開始した。しかし,この凪も長続きせず調査4日目には再び荒天となり操業不能,このまま予定コースを進めば前半の調査は全く不可能と判断されたため,図のようにコースを大幅に変更せざるを得なくなってしまった。
 当初,この調査は昨年の経験から,パプア・ニューギニア毎域での調査を目標に,水産庁研究部資源課をはじめ,種種のルートを通じて折衝が行われたが,出港時まで入域許可が得られず,やむなくマリアナ西部海域の公海上で実施することになり,しかも,調査時期も北西の季節風の卓越期に入る11〜12月となったために,同海域での調査は時化との戦いとなることが予想されていたとは言え,船長はじめ乗組員のかたがたには大変な御苦労をおかけする結果となってしまった。
 調査の内容は,昨年と同様に,目合の異なる(目合33〜180mm)流し刺網100反による漁獲調査を主体に,表層・中層曳きの稚魚ネット,高速ネット,プランクトンネットによる幼魚および仔稚魚の採集,STD,DBTによる海洋観測などの生物・非生物環境調査を行った。
 漁獲調査による目合別の主な魚種別漁獲尾数は表に示す通りである。また,採集標本については現在精密測定と資料の整理中であるが,目的とするカツオの幼魚は,曳縄で漁獲したシイラの胃袋から体長15cm前後のカツオを4尾採集したのみであり,漁獲調査ではマグロ類の幼魚1尾を漁獲したにとどまり,期待された成果をあげることが出来なかったのが残念である。しかし,この調査は,知見のとぼしい幼魚期におけるカツオの分布生態や生長過程,発生時期の解明など,カツオ資源研究上きわめて重要な課題であり,今後も重点課題として取り組んでいく必要があると考えられる。
 最後に,本調査の実施にあたり,多大なる尽力をいただいた水産庁船舶管理室,資源課,照洋丸乗組員の各位に厚く御礼申しあげます。
(資源部・資源第2研究室)

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