東北海区近海の海況

武藤清一郎



 黒潮域 近海の黒潮は7月以降9月頃まで南偏傾向を示し,その北限は36°N前後であった。10月に至り,沖合の145°〜146゜E間で大きく北向きに蛇行し37.8゜Nに達した。その後,11月・12月ともに近海では36゜N前後を東流し,144゜E以東では38゜N付近までの蛇行が続いている。


 混合域 6月に金華山沖で黒潮から切離した暖水塊は,三陸沖を徐々に北北西に移動し,9月には40゜N付近に至り,11月には八戸沖に達してその北縁は襟裳近海におよび,津軽暖流に接近した。
 沖合の黒潮北上分派は147゜E以東を北に張り出し,8月には40゜Nに,9月には42゜Nに達した。10月に至り41゜N,147゜E付近を中心とする暖水塊(Tl00l0゜C)および40゜N以北,150゜E以東に暖水塊(Tl0012゜C)を切離した。三陸沖から八戸沖にかけて移動した暖水塊の南側には,三陸から常磐近海にかけて冷水が各所に分布した。


 親潮域  親潮第1分枝は三陸沖の暖水塊の北縁に接していたが,この暖水塊の北北西への移動に伴い襟裳近海に退いた。その先端の冷水の一部は津軽暖流と暖水塊に挟まれながら黒埼近海まで分布した。親潮第2分枝は三陸沖の暖水塊の沖側沿いに南に張り出し40゜N以南に達していたが11月以降は明らかでない。
 道東近海では,7月以降に暖水塊が各所に分布して広く暖水域を形成し,更に沖合の149゜E以東にも暖水塊が持続して,その影響は9月頃までおよんでいた。


 津軽暖流域 尻屋埼沖の張り出しは,7月以降143゜E付近までで平年並であった。10月には41゜N線上で143.6゜E付近まで広く東に張り出し,時計回りの環流を形成したが,11月以降は暖水塊の接近と津軽暖流の三陸沿岸への分布に伴い,尻屋埼沖の張り出しは142゜E付近にとどまった。
 今期の特徴は次の通りである。近海の黒潮はいぜんとして南偏傾向を示したが,沖合では10月以降蛇行が北偏した。
 黒潮北上分派が沖寄りに北に張り出し,暖水塊を次つぎと形成した。
 三陸沖から八戸沖への暖水塊(6月切離)の移動と相まって,沖合からの親潮の張り出しに連なる形で各暖水塊の南側に冷水が分布した。
 道東近海では夏季に暖水塊が各所に分布して広く暖水域を形成し,沿岸〜近海へのサンマ魚群の来遊が阻まれ,例年と異なり主漁場が沖合寄りに形成された。

参考:東北海区近海漁況図(100m水温・流れ)
1982年8月
1982年11月
(海洋第二研究室長)

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