クィックアセスメント実測調査に参加して

谷野保夫



 昭和56年度のクィックアセスメント実測調査は7月から始まり,筆者は北海道大学水産学部佐野典達助教授と共に,調査船第81吉丸(水産庁用船,349トン)の第4次航海(10月8日〜10月21日)に乗船する機会を得た。本船には国産2号機に当たるFQ30型科学魚探が設置されていた。
 科学魚探については筆者は若干縁があって,かなり以前にノルウェーのシムラド社の製品について聞いていて,5年程前に前勤務先の海洋水産資源開発センターで購入しようとしたことがあったが,当時,同社の日本代理店が我々の質問に対し,十分な解答が出来ず見送ったことがあった。その後,昭和54年12月に同開発センター会議室で,水産海洋研究会主催の科学魚探に関する研究座談会があり,前東海区水研の土井長之氏(1980,水産海洋研究会報第36号)等の話を聞く機会があった。また,同センターで外国との共同調査を計画した際,科学魚探の有無を尋ねられたことも,そして,FAOが資源量調査の手段として認知していることでもあり,筆者が東北水研へ転勤直前ニュージーランドとの共同調査を行う調査船に取付けたが,残念にも機器に触れることが出来なかった。
 本調査で使用したFQ30型科学魚探は,音波の減衰を補正するTVG機能を持つ魚群探知部,インテグレーター部,較正部,ドットプリンターとデーター収録用のデーターレコーダーから構成されている。
 調査実施前にこれら機器の作動について演習が行われたが,魚探の専門家でない筆者にとっては,科学魚探とは,(1)魚が上にいても下にいても同じ形に映る,(2)その中の魚の数に比例した映像信号が分かる,(3)映像信号を積分して魚の数がいくらかを絶対値で知ることができる,という土井氏の話を思い浮べたが,先ず機械の内部、外部の沢山のスイッチ類に驚かされ,ただ,数時間の作動演習で,本当に使いこなせるのかと疑問を持った次第である。
 第1次〜3次航海では,発振部の取付けが悪く途中断線したり,積分曲線や水深が出なかったり,ログと連動しなかったりのトラブルが相次いだが,第4次航海ではサンマ調査用のパラメーターのほか,イワシ調査で設定したパラメーター,その他種々のテストを行ったが,魚探の専門家の佐野助教授と前半古野電気kkの藤田成樹氏が乗船したためか,殆どトラブルがなく僅かに航走中に単純平均のスイッチが身体が触れてONになっていたのに気付かなかったケースだけであった。
 第4次航海はサンマ狙いで行われたが,サンマ漁船の密集していた海域から外れていたためか,全般的に魚群(魚種不明)らしい反応は沿岸寄りで若干見受けられたが沖合では殆ど見られなかった。しかし,10月13日に38゜32′N,146゜36′Eで行った流網試験では,33mm目9反にサンマが215尾,10月17日に38゜45′N,142゜36′Eで同じく33mm目9反に266尾羅網したことから,かなりのサンマが分布していたことが推測された。なお,夜間航走中に浮上したサンマ群を時々目視したが,発振部以深には魚群らしい反応はなかった。
 また,10月17日の流網試験では,72mm目4反にアカイカが291尾も羅網し,その他の目合の網にはサバ,トビウオ,カツオ,シマガツオ,ヨシキリザメ等が羅網し,この時期のこの海域では,仮に魚群の反応があっても,サンマかどうかの確認は現在の採集漁具では極めて困難と思われる。昭和57年度に再度科学魚探による調査が予定されているが,サンマ研究グループとしては,サンマ漁船が集中している海域及びサンマが来遊していそうな海域を重点的に可能な限り細かく調査して見ようと考えている。
 この科学魚探は前述の通り,従来の魚探とは性能及び記録面で大きく異なり,例えば,サンマ漁況予測で大きなウェイトを占めているプランクトンの分布等は資料1,2に示したように時々刻々その変化を捕えることができる。現在,プランクトン調査で採集の一方法として150mからの垂直曳きが行われている。付属資料は10月12日4時22分から5時20分までの間,積分周期0.2マイル(船速約10マイル,1分間強間隔)で画がき出したものである。当初DSLは表面付近から50mまで厚く分布していたが,時間の経過と共に表層に分布するものと下層へ移動するものとに分かれ,4時38分には下限が75mに,4時49分には100mmに,そして5時20分には200m以深に移動していた。この間,5時4分に下限が150mに,5分後の5時9分には上限が150mに見られた。この僅か5分の違いで,150mから曳きあげられたプランクトンは質も量も変るであろうことが実によく示されている。
 いずれにしろ,科学魚探は初めて手にした訳で,本機そのものにまだまだ改良の余地はあろうが,一般魚探と比較し,優れている点の多い本機の持つ性能を十分理解して,今後の調査に役立たせる必要があろう。
(資源部第1研究室長)

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