昭和56年7〜12月東北海区近海の海流

黒田隆哉


 本年7月から12月までの海況の推移は大略以下の通りであった。

黒潮域 黒潮は年初以来147゜E付近で南への蛇行が顕著であったが,この傾向は結局12月まで持続した。またこの北縁に沿って冷水が分布していた。房総半島の南で近海に冷水域があり,この沖側を迂回して東北海区に入る(黒潮蛇行のD型)場合が多かった。近海における北限の位置は2月の36.7゜Nを除いて10月まで南偏傾向を示し36゜N以南にあったが,11月からやや北に移り,12月には36.8゜Nに達していた。

混合域 4月に既に金華山沖に見られた暖水塊はその後次第に北に移り,秋には八戸沖に達したが,12月に入ってやや西に移動し三陸に接近した。2月から釧路南東近海にあった暖水塊も12月に入ってなお存続していた。さらに8月頃に塩屋埼近海に形成されたとみられる暖水塊は12月半ばまで持続が認められた。

親潮域 年初以来南への張り出しが著しかった親潮第1分枝は7・8月もなお金華山以南に及んでいたが、9月以降ようやく例年並に北に退いた。このため三陸沿岸水城は7・8月も例年と比べ低温に経過し、また常磐沿岸水域はほぼ周年にわたって低温化し,特に4〜8月は昭和39年以降の同期に比べ最低を示した。
 親潮第2分枝は8月以降南への張り出しを強め,一部は八戸沖の暖水塊の南側から三陸〜常磐沿岸に追っていた。

 津軽暖流域 津軽暖流の東方への張り出しが10月に例年よりやや広く(143.8゜E付近まで),また7・8月に流域の水温がやや高め(1〜2℃)であったほかはいずれもほぼ例年並に経過した。

 参考図は1981年8月及び11月の100m深水温分布図で,関係水産研究所・水産試験場・気象庁・海上保安庁・防衛庁その他の機関による観測資料に基づいて,当水産研究所が作成した東北海区漁場海況概報8月及び11月の図(151゜E以東省略)である。

(海洋部長)

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