秋に

阿部眞雄



 私が東北水研へ転勤することになったとき周囲の人は寒いところで大変ですねえと声をかけて くれました。私は懐さえふくらんでいれば寒さなんてと冗談をとばして応えてきました。誰だって そうでしょうけれど、転勤に伴う生活環境の変化と懐具合は一番気にかかるところです。しかし、 寒暖の差など今更心配しても始まりません。研究所の運営費にしても既に予算額が決定されています。 問題は人間関係と云われますがこれだって一朝一夕にどうなるものでもありません。まあ、すべてを 天に任せての心境で赴任ということになります。
 着任して10月、11月の2カ月余りが過ぎました。僅かな期間ですから速断はできませんが、 東北水研の雰囲気は極めておだやかで私の不安を一掃してくれました。勿論、所内予算の配分も 終わった時期、そして刻は素晴らしい東北の秋です。云うならば一年で一番平穏な季節ではある 筈です。しかし、この平穏無事が年末近くになりますと気にかかり始めたのは職務柄の業とでも 云うのでしょうか。
 昭和55年度以来、配分予算額の伸びは停まっています。反対に公共料金など共通的経費は 毎年確実に増嵩しています。当然のことながら共通的経費と反比例の関係にある人当研究費は年々 削減の傾向にあります。共通的経費の問題については各水研とも苦悩しているようで、休み時間中の 電源を切ることに始まって、電話、ゼロックスの使用規制、果ては各研究室にメーターを設置する ことまで真剣に論ぜられているところもあると聞きました。猟師山を見ずになってはなりませんが、 大方の危機感はそこまできているという見方をすべきだと思います。
 東北水研の場合も昭和56年度予算配分に当たっては喧ごうの議論が闘わされたと察し ますが、年度半ばを過ぎた今がもう一度振返ってみるいい時期ではないかと思われます。
 政府は公債依存体質からの早期脱却が緊急課題だとして、歳出面では優先順位の厳しい選択を 行いその規模を極力圧縮することとしています。東北水研においても昭和57年度は別枠研究の 終了に伴い約1,800万円の研究費が減額されますので、更に厳しい現実を迫られることは 確実です。他に財源を求める術がないとすれば配布された予算の運用に最大の工夫をこらす 以外には方法はありません。云うまでもないことですが痛さ、苦しさを平等に分ち合う気持が 一層必要になってきます。皆さんのご協力をお願いする次第です。
前 東海区水産研究所総務部会計課会計課長補佐  庶務課長

Masao Abe

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