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最近の北部太平洋海域におけるサバ漁業および資源の動向

佐藤祐二


 昭和47年秋の八戸沖漁場にはソ連船団の異例な長期滞留が続いた。
 約1ケ月にわたり距岸4〜5浬に50隻以上の大船団が蝿据し、サバを対象にしたまき網漁業や 沿岸での底曳漁業を営み、まさに国際漁場の観を呈したほどである。
 サンマ・サバを対象にしたソ連船団が、わが国沿岸とくに北部太平洋海域に進出の声を 聞いて久しい。この間東北水研関係者によって得られた同船団に関する情報も多く、 小達技官他による貴重な乗船体験記も得られている。
 本号の写真は45年夏に筆者が色丹島近海で遭遇した母船およびまき網船の操業状況である。
 従来から太平洋系群のサバに対するわが国漁業による漁獲努力の過剰投入が喧伝され、 この立場から当然ソ連側の漁獲の実体も問題になるが、いまのところ詳細な漁況の資料を 入手していない。
 一説には漁撈技縮と関連してそう大きな脅威ではないともいうのだが−。
 いずれにせよ太平洋のサバ資源の利用はいよいよ国際化しつつある。
 ここでは以上のような現状を踏まえて最近のサバ資源調査の概略を述べ大方の現状認識の 参考に供したいと思う。
 まず近年の漁業(当海域ではすべてまき綱漁業)の特長として、労働力不足を主な背景と した1そうまき(110t型)の急増をあげることができる。
 47年の着業船名から拾うと、およそ1そうまき70ケ統、2そうまさ45ケ統の比率となり、 5年前試験的に2ケ統が着業した当時からみると正に隔世の感がある。等しくまき網漁業で あっても近年の変貌は著しいし、1そうまき建造ブームの過熱傾向もうかがわれるであろう。
 問題はこれらの漁獲性能で、筆者の初歩的な計算では、サバ対象の場合110t1そうまきは 40〜60t型2そうまきの約1.5倍ということになる。
 年々の魚群探索技術・漁撈機材の進歩もまた著しい。
 それ故、総体の着業統数の頭打ちにも拘らず投入漁獲努力量は年々増大しているのが 実状である。
 スケトウダラに次ぐ魚種別漁獲量第2位(46年1,264,000t)の地位もこのような当海域の 漁獲努力量の増大に負うところが大きい。
 次に資源動向に関連して、第1図では近年の資源量指数の変動を 示した。
 この図によると来遊資源量は上昇傾向を保持しているとみられるが、一方で漁獲物の年令 構成の著しい変動を見逃し得ない。
第2図は38年以降の年令組成の変化であるが、40年代初期までのV 年魚主体から次第にU年魚・T年魚の若令主体に移行し、経年的な年令別漁獲尾数を示した 第3図でみても最近における漁獲の若令偏重はすさまじい。
 たとえば、45年うまれのサバの0・T年魚時代の総漁獲尾数は39年うまれのものの0〜Z年 魚通算の漁獲尾数を優に凌駕する計算になる。
 ところで関東近海の産卵場における総産卵量はここ1〜2年急激に減少し、資源の再生産に 充分な数の産卵親魚が確保し難くなっているとの知見がある。
 このことと上述の0・T年魚の夥しい漁獲との因果関係の解明が当面の重点的な研究課題で ある。
 産卵量の減少を補う椎・幼魚生残率の上昇傾向が生じつつあると思われ、またいわゆる Recruitの研究が卵・稚仔分布量の調査のみで完結しないことを端附に示すものであろう。
 ともあれ資源の恒常的な利用を計る立場が正しければ、現況は必ずしも妥当な姿とは いえない。
 冒頭のソ連船団による利用状況の把握も含めて早急な対応が必要である。
Yuji Satou

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