新しい研究課題


(1)別枠研究「浅海域における増養殖漁場の開発に関する総合研究」の進渉状況
1)アワビ、二枚貝、ヒラメ・カレイ班
 研究の発展段階に忠実であることを基本姿勢として討議に参加していた吾々が実際にこの研究が予算化された時は二大実験漁場のひとつを受持つことになり、地域推進会議も終って表題の研究もやっと動きはじめた。
 仙台湾周辺漁場ではアワビ、二枚貝、ヒラメ・カレイ類を対象として研究を行うことになっているが、これが仙台湾を実験漁場として行なわれるものの、仙台湾という地域性に力点があるのではなく、全国的な視野でこれら魚種の増養殖漁場開発を考えるものである点が現実には参加者全員の身につかないことや、環境の影響が常時同様に各種生物に働いているというような感覚が環境研究者や水産土木の方々に潜在的にあって、之が生物研究者との間に一種の違和感を与えていることなど、チーム作りの過程ではそれぞれのチームで悩みを経験したが、ひとつの段階をこえようとしている。
 アワビのチームは、本年度は女川沖江の島を舞台にアワビ飼料海藻の人工造林の実験を行うことになっているが、実験漁場の予備調査を終え、東北・北海道からコンブの種苗も入手して、品種の比較もかねて養殖施設の検討をするため、筏やブロックの設計と購入の段階に入っている。江の島は陸路をとれば相当時間がかかるが、800万円の新鋭船海耕号を購入したので晴天の日を選んで海路直行し、その日のうちに潜水作業ができる体制ができた。
 二枚貝のチームは、本年度はチーム作りを目標に、北海道や茨城・東京に数度の打合せを重ね、作戦計画がようやく明らかになってきた。有視界作業によって種貝採集、選別と害敵駆除を行なう漁場工作船と作業機もデスクプランではあるがにつまってきており、来年度からは戦線に参加する体制になった。
 ヒラメ・カレイ類は将来の目標は大きいがそれまでに通らなければならぬ関門が多く、どの種を開発対象にするかを決めることも大問題である。当面漁場類型化や稚魚の生態、放流効果確認のための標識技術の研究を各人分担で行ないながら更に討議を続けることにしている。11月にも再度集まって論議をする計画である。
 水産土木との討議も9月に二枚貝の関連で討議が持たれ具体的に計画が立てられた。また海洋部の海洋観測や観測塔建設もそれぞれ予定通り進行している模様である。
 全体を通じてこの種の協同研究は本研究を始める前に予備年をおく性質のものと思われるし、その点は予備と出発を兼ねた本年度はむしろ先を急がぬ方が本筋と考えているので現状は略々予想道りと言いたい。研究はやっとすべりはじめたところである。これからも皆さんの御意見・御協力をお願いする。
(佐藤重勝記)
2)海洋班
 この研究に関して海洋班の果たすべき役割のうち当水研海洋部は45年〜47年について、次のような調査を受持つこととした。即ち実験対象漁場をとりまく海洋環境の実体及びその変動様式(特に外洋の海況変動との関係)を把握するためのメソスケールの調査研究である。具体的には、調査水域は江ノ島実験漁場を含む気仙沼沖距岸20海里〜松川浦沖距岸50海里以内の水域に焦点をしぼり、親潮・黒潮・津軽暖流系水及び沿岸水の配置、物理・科学的諸要素の鉛直構造及びその長・短期的変動の調査を行う。調査は当水研わかたか丸(143トン)を使用し、年4回程度実施する。観測項目は、気象、採水(塩分・栄養塩)、測温、表面水温・塩分の航路上連続(自記)観測、流れ、濁度、溶存酸素、PH、水色、透明度等である。45年度の調査については既に第1回(7月9日〜15日),第2回(8月23日〜27日)、第3回(9月14日〜18日)を実施した。

(2)北方亜寒帯海域(本邦東方極前線海域)に関する総合研究(昭和45年度科学技術庁特調費)
 北太平洋亜寒帯海域のうち、とくに千島・北海道東方海域から三陸・常磐に至る本邦東方極前線海域は、親潮・黒潮・津軽暖流系水が複雑に交錯し、季節によりまた年により激しい変動を繰り返している。そしてその流動・混合状態の変化は海霧の発生、低気圧の異常発達、冷湿な北東風の卓越、海氷の消長などわが国の異常気象に密接な関係を持ち、諸現象の解明は気象予報上また航海安全上極めて重要且つ緊急の問題となっている。さらにこの海域は古くから世界三大漁場の一つに数えられ、カツオ・マグロ・サンマ・サケ・マス・サバ・スルメイカ等沿岸・沖合の回遊性多獲魚の主要漁場となっており、暖寒両水系の潮境や、これから派生する暖・冷水塊群の動態は直接これから魚群の分布、回遊、漁場形成及び資源量変動に大きな影響を与えている。このため、この海域の海洋構造の実体を把握し、その詳細な変動機構を解明することが海況予測・漁況予報上極めて重要である。従来から各関係機関によってそれぞれの業務の必要性に基づいて、調査研究が実施されてきたことが、大規模かつ総合的な調査が行われていないこと、観測技術上の困難さ等のため、充分な成果が得られたとはいいがたい。しかし、最近では著しい観測技術の発展によってSTD・ART・XBTや放流ブイなどの利用が可能となりつつあり、さらに気象衛星などによる観測技術も開発されている。そこで本研究のねらいとするところは、これからの新技術を積極的にとり入れ、関係機関の船・航空機を集結し、今まで出来なかった総観的協同調査研究を実施することにより、この海域の海洋構造と変動機構の実体を飛躍的に明らかにして、海洋開発の基礎となる海象・気象予報並びに漁海況予報の向上に役立てようとするものである。(参加機関は気象庁・海上保安庁・水産庁)、(水産庁...東北区水研・東海区水研・北海道区水研)。
 本年度の東北水研における研究計画及びその実施状況は以下の通りである。本年度は予備調査とし、当水研海洋部が担当して主として釧路沖暖水塊の実体調査に主眼を置いた。
 調査船わかたか丸(143トン)による調査は7月20日〜31日及び9月6日〜12日の2回実施した。その調査項目は気象、採水(塩分・栄養塩)、測温(500m迄)、BT、GEK、ならびにT.S.-STによる表面水温・塩分と高感度サーミスタ温度計による表面水温の夫々航路上連続(自記)観測、その他水色・透明度等。また生物調査としては(ち)網による稚魚採集、(特)網による動物プランクトン採集も実施した。航空機による調査は水産航空機株式会社(東京)のセスナ機をチャーターして、9月14日〜20日の間に当該水域の海洋観測を予定している。調査項目は気象、表面水温(ARTによる)、海面状態及び潮目の性状等、更に魚群・クジラ・鳥群及び流れ藻等の分布状態等の記録・スケッチ・写真撮影等である。次年度は三官庁の合同調査となる予定。

kiren@myg.affrc.go.jp

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