昭和44年度第1回東北,北海道海区スルメイカ,サバ
漁海況長期予報会議


日時:6月26・27日
対象海域:東北,北海道太平洋沿岸及び日本海沿岸海城
対象期間:7月〜9月

A 海況の部
 先ず対象海城について海況の現状分析を行ない,それに基づいて下記の予測を立てた。

1 太平洋側
(a) 黒潮域
 常磐近海では黒潮の蛇行がゆるやかで,比較的安定した状態を示しており,夏季前半頃までは余り大きな変化はないものとみられる。しかし熊野灘沖の冷水塊の発達に伴ない,今年3月以降本州南方での黒潮の蛇行が激しく変化が著るしいので,今後この影響がどのように三陸沖にあらわれるか注意を貸する。
(b) 混合域
 本年も混合水域の範囲は広く、特に146°E以東で暖水域がかなり北方に伸長するものとみられる。又41°N,146°E附近からNWにのびる暖水は釧路SE近海に接近する可能性がある。
(c) 親潮域
 親潮前線はほぼ41゜N以北にあって例年より北偏し,親潮域の面積も狭いものと考えられる。三陸以南では宮古沖暖水塊の接岸にともない今後も第2分枝が強勢となろう。
(d) 津軽暖流城
 東方への張出しは143°E附近にあって平年並みに経過するであろう。水温は現在は低目であるが,次第に回復し,平年並になるものと考えられる。

2 日本海側
 6月までの経過から見て,対馬暖流は例年より弱目に推移し,沖合冷水の接岸傾向は現在の状態が持続するものと考えられる。水温は,全般に低目に推移するだろう。

B 漁況の部
 漁況についてはスルメイカとサバグループに分かれ,漁況の経過につき各水研,水試より報告,問題点等を討議し,現況の分析,集約を行なうと共に,これと先に行なった海況の現況と予想に基づいて予報を作成した。
I スルメイカ
(a) 東北日本海側
 今後水温の上昇にともなって,佐渡近海からの魚群の回遊は活発になることが予想されるので,漁況は上向き,今夏は平年並か,ややそれを上回る漁況が期待されそうである。
平年漁獲量(昭和41〜43年平均):青森県5,888トン
山形県3,500トン
(b) 北海道日本海側
 今夏はほぼ平年並みの漁況が予想される。
平年漁獲量(昭和39年〜43年平均):檜山16,000トン
後志5,000トン
宗谷1,500トン
(c) 津軽海峡と道南太平洋側
 現在迄の状況と佐渡近海の漁況の推移から綜合して考えると,今夏の漁況は平年並か,ややそれを上回ることが予想される。
平年漁獲量(昭和39〜43年平均):渡島25,000トン
大畑7,800トン
(d) 道東太平洋側
 今夏の漁期は例年より遅れ,漁況はほぼ平年並か,それを上回ることが予想される。
平年漁獲量(昭和39〜43年平均):釧路27,000トン
十勝4,000トン
根室47,000トン
(e) 東北太平洋側
 今夏の小型イカは早く北上し,北部沿岸近海に多く分布しているが,釣漁の対象となる群は北上がおくれ,魚体も例年より小さい。しかし本年の沖合暖水の北上の程度はかなり進んでおり,次第に漁況は快復し,平年並の漁況が予想される。
平年漁獲量(昭和39〜43年平均):青森県太平洋側26,532トン
岩手県主要5港16,000トン

U サバ
予測対象の漁業 まき網(道東・三陸),定置網,その他
予測対象の漁期 7〜9月
予測対象の漁場 道東・三陸海域

予測
〔来遊資源量〕 太平洋系群全体の資源量は高水準が維持されていると考えられる。しかし今期道東・三陸海域において漁獲の主体となると思われる昭和41年生まれ(3年魚)の動向が今冬来不明であり,また伊豆諸島海域で多獲された4・5年魚も自然死亡を考慮すると,この海域への来遊量は相対的に減少しよう。従って各地の漁期前情報の少ない現段階では全体の来遊量(成魚主体)も豊漁であった昨年ほどに達しないと判断される。末成魚については近年水準で比較して42年生まれ(2年魚)はそう多くはないが,43年生まれ(1年魚)の数量は多いとみられる。

〔漁場〕 初漁期の道東まき網漁場は釧路沖暖水塊の西縁の42°00’N,146°30’E付近に形成されよう。
 三陸沖では宮古沖暖水塊の北縁部に相当量の魚群が分布している。これらは時期が進むにつれて北上し40°00’N線以北の道東沖合に達するが,その接岸程度は昨年ほどではないであろう。

〔漁獲物の年令組成〕 従来の例では平年的な道東・三陸海域の年令組成ほ3年魚主体であった(43年2年魚主体)。しかし先に述べた通り本年の3年魚の動向の予測は難かしく、平年的な年令組成が維持される見通しはたたない。
 現在までの漁獲物の組成をみても尾叉長35cm以上の大型魚と尾叉長30cm前後の中・小型魚主体になっていて3年魚は出現していない。
 大型魚の出現は初漁期の特長であって,次第に小型になるのが一般的傾向である。この傾向は本年もあらわれようが,3年魚の出現は少ないので漁期全体の年令組成は昨年につづいて若年魚主体(2年魚)と推定される。

〔漁獲量〕 漁場位置が昨年よりも遠いこと,来遊資源の年令組成が若年魚主体と推定されること等から道東まき網の漁獲量は昨年よりも下回ると考えられる(昨年152,000トン)。
 八戸沖まき網は未成魚主体の漁獲があろうが,今期は本格的な漁況にはならない。三陸海域の定置漁況は平年を若干上回る(岩手県置網主要5港昭和34〜42年平均3,600トン)。
注:本文中アラビア数字+”年魚”のアラビア数字は原文ではローマ数字です
kiren@myg.affrc.go.jp

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