<<海況の経過(1998年1〜7月)>>
 省略
(*)は人工衛星情報による.
(参考)近海=146゚E以西,沖合=146゚E以東,黒潮流軸=200m14℃,
    黒潮系暖水=100m10℃以上,親潮水=100m5℃以下.

《海況の経過の要約》
本年は親潮の勢力が強く,近海で水温が低い.
逆に146゚E付近では,黒潮系暖水の張出しが強く水温が高い.7月には,高水 
温域の先端が釧路沿岸にまで達した.

黒潮域
・房総沖での黒潮離接・・・・接岸〜平年並
・近海の黒潮の北限・・・・・4月の不明,5月の平年並以外はやや南偏.

混合域
・黒潮系暖水
  (1)近海の北限・・・2〜3月は平年より北寄り,4〜7月平年並だが,張出しの中
                      心位置は沖寄り.
  (2)沖合の北限・・・6月まで平年並,7月はやや強め.146゚E付近の張出しが強い.
・暖水塊
  (1)1月に釧路沖にあった暖水塊・・・1〜3月西進,4月以降北東方向へ移動し,
                   択捉島沖に達した*.1993年2月から確認.
  (2)1月に三陸沖にあった暖水塊・・・2月に暖水域に変化し,3月に消失.
  (3)2月に認められた常磐沖暖水塊・・4月に2つに分離し,一方は常磐近海で暖水
                   域に,他方は請戸沖で持続
  (4)三陸沖暖水塊・・・・・・・・・・7月に黒崎沖146゚Eで確認
・その他
  (1)暖水域・・・7月に釧路沖に形成.
  (2)暖水舌・・・6〜7月に鹿島灘沖にあった.

親潮域
・親潮第1分枝
  先端緯度は概ね平年値より南寄りで,6〜7月はかなり南寄り.
・親潮第2分枝
  先端緯度はほぼ平年並.
  第2分枝出現水域での冷水の南端緯度は5月から極めて南寄り.

津軽暖流域
・下北半島東方での張り出し・・・1月強勢(*),2月以降は概ね平年並.
・100m深最高水温・・・・・・低め〜やや高め.



《現況(1998年7月下旬〜8月上旬)》
黒潮域
・房総沖での黒潮離接・・・やや接岸*.
・近海の黒潮の北限・・・・南偏

混合域
・黒潮系暖水
  (1)近海の北限・・・平年並だが,張出しの中心は沖寄り
  (2)沖合の北限・・・やや張出しが強い.特に146゚E付近の張出しが強い
・暖水塊
  (1)択捉島沖の暖水塊・・北東へ移動*
  (2)色丹島沖の暖水塊・・現況で確認
  (2)三陸沖暖水塊・・・・7月から大きく移動していない
  (3)常磐沖暖水塊・・・・西へ移動.
・その他
  (1)暖水域・・・釧路沖,鹿島灘沖にある.

親潮域
・親潮第1分枝の先端緯度・・・・平年値よりかなり南寄り.
・親潮第2分枝の先端緯度・・・・平年並.

津軽暖流域
・下北半島東方での張り出し・・・平年並.



<<今後の見通し(1998年9〜11月)>>                                         
(1) 近海の黒潮の北限は36゚N〜37゚Nで推移する.                              
(2) 黒潮系暖水の北への張出しは,146゚E付近を中心に,平年並〜やや           
  強めに推移する.                                                      
 近海(146゚E以西)では,11月までに41゚N付近まで張り出す.                 
 沖合では146゚E及び150゚E付近で40゚30'Nを越えて張り出す.                   
(3) 択捉島沖の暖水塊及び色丹島沖の暖水塊は北東へ移動する.三陸沖          
  暖水塊は北西に移動する.常磐沖暖水塊は北西に移動する.                
(4) 親潮第1分枝は平年より強めながらも三陸南部から北退し,11月に          
   は三陸北部(40゚N以北)まで退く.親潮第2分枝の張出しは39゚N付          
    近までである.                                                        
(5) 津軽暖流の下北半島東方への張出しは,平年並(143゚E付近)である


《海況の見通しの背景》
 現在までの本年の海況の経過に加えて,以下の知見・情報を参考にした.

東北海区の水温場
 (1)長期傾向(0m)・・・・・・・1995年以降,平年並〜やや低温
 (2)本年の経過(0m)・・・・・・東北沖合では平年並〜やや低温
 (3)本年の暖・冷水の勢力(100m)・・・・近海では冷水が強く,沖合では暖水の勢力が
                    強い.総じてみると平年並.
 (4)水温場と海況との関係・・・・・東北海域100m深水温が正(負)偏差時に黒潮
                   及び親潮第1分枝は北(南)偏する
   (1)〜(3)→本年の東北海区の表面水温は,平年並〜やや低温の時期.
   (4)  →黒潮,黒潮系暖水の北上,親潮の南下は平年並〜やや南偏の見込み.

近海の黒潮北限位置
 (1)長期傾向・・・・1992年以降は南偏傾向で,近年はやや南偏〜平年並.
  (2)日本南岸の黒潮の予報(中央水研)・・・B型からC型を経て,N型へと推移する.
  → C型に移行する際に一時的に北偏するが,その後平年並〜やや南偏に戻る.
  → 36゚〜37゚N基調

暖水塊の動向
 (1)千島列島沿いの暖水塊の移動傾向・・・北東方向に移動する.
 (2)東北近海域の暖水塊の移動傾向・・夏以降に北上し秋以降は北上傾向が強まる.
                  沖合の暖水塊は西進する.
   (1)→ 択捉島沖の暖水塊及び色丹島沖の暖水塊は北東へ移動.
   (2)→ 三陸・常磐沖の暖水塊は北西に移動.秋以降に三陸海域に達する可能性
       もある.

黒潮系暖水の勢力
・近海
 (1)本年の経過・・・・・・・4月以降平年並だが,張出しの中心は沖寄り.
 (2)近海の暖水塊の動向・・・複数の暖水塊や暖水域が帯状に分布.
 (3)季節変動傾向・・・・・・夏〜秋に徐々に張り出しを強める.
   (2)→ 暖水の断続的な北上がある見込み.
   (1)〜(3)→ 総観的な勢力は平年並で,11月に41゚N付近に北上.ただし,張出
        しの中心は沖寄り
・沖合
 (1)本年の経過・・・・・・・平年並〜北寄り.
              帯状に分布した暖水塊沿いに暖水の断続的な補給.
 (2)季節変動傾向・・・・・・夏〜秋に徐々に張出しを強める.
   → 今後も平年並〜北寄りで推移し,11月には40゚30'Nを越えて張り出す.

親潮の勢力
・親潮第1分枝
 (1)本年の経過・・・・・2月以降南寄りで推移.6月から極めて南寄り(図5,6).
 (2)季節変動傾向・・・・夏から秋にかけて北退する
 (3)大気との関係・・・・夏秋季に親潮の勢力が一時的に強まる可能性あり
   → 親潮第1分枝は強勢を保ちながら三陸北部まで北退する(強め)
・親潮第2分枝
 (1)最近の経過・・・・・平年並.
 (2)過去の事例・・・・・三陸沖暖水塊の東側を張出す.
 (3)季節変動傾向・・・・秋に北に退く.
   → 今後は北退し,最も南下しても39゚N付近までである.

・津軽暖流
 (1)最近の下北半島東方での張り出し・・・ほぼ平年並.
 (2)対馬暖流流勢の経過(青森水試)・・・・6〜8月の流勢はやや強め〜やや弱め.
 (3)対馬暖流と津軽暖流の関係・・・・・・位相差2〜3か月程度.
   → 今後津軽暖流の勢力は,平年並で推移.
   → 10月までに下北半島東方へ143゚E付近まで張り出す.

気象庁関係の予報
 (1)気象庁海面水温予想(7〜9月)・・日本近海では全般に平年並の見込み.
 (2)気象庁の3か月予報・・・・・・東北地方7〜8月の気温は平年並.9月の気温は
                  高め.8〜10月の降水量は平年並.8月の降水
                  量は多い.