北西太平洋サンマ長期漁況海況予報(漁期後半の見通し)

予測期間 2001(平成13)年10月〜12月
予測海域 道東〜三陸〜常磐海域
予測漁業 さんま棒受網漁業


1.予測
(1)来遊量
 前年を上回る.
(2)漁期・漁場
 三陸沿岸で安定した漁場が形成される.常磐への南下は遅れる.
(3)魚体
 当初は大型魚・中型魚が多いが,急速に小型魚の割合が高まる.
2.説明
(1) 漁況予測の方法
ア 来遊量予測
 9月末までの水揚げ状況,漁船のCPUE(1操業当たり漁獲重量(ton)),及び漁船のCPUEを基礎に計算した資源量指数を過去の同期の実績と比較し,来遊量の豊度について判断した.また,漁期前及び漁期中に各機関により行なわれた沖合域の資源調査結果(別表1)を参考にした.
イ 漁場の予測
 漁船のCPUEの分布を旬別に整理して,漁場の季節的な移動を把握した上で,海況予報を参考にして今後の漁場の移動について検討した.この時,東北区水産研究所に蓄積されている過去のサンマ漁場移動の記録も参考にした.
ウ 魚体の予測
 水揚げ港におけるサンマの買取による魚体測定結果及び調査船の漁獲試験で漁獲されたサンマの測定結果から,漁場の内外に来遊しているサンマの体長組成について検討し,今後,来遊するサンマの体長に関する予測を行なった.
エ その他
 関係者の参考とするために,13年度漁期当初からの漁況の経過についてとりまとめて末尾に報告した.
(2) 予測の結果
ア 来遊量予測について
 9月末までの累積漁獲量は約13万7千トンで,これを過去4年の同期と比較すると(図1),資源水準の低かった1998・1999年を大きく上回り,資源水準が中程度であった2000年漁期も上回って,近年では資源水準が高かった1997年とほぼ同水準となっていた.また,CPUEも漁期当初から過去3年間(1998−2000年)を大きく上回って1997年とほぼ同水準で推移している(図2).また,漁場内に来遊している資源量の豊度の指標となる*来遊資源量指数(9月末現在,暫定値)は,202.6で,前年比96%,前々年比272%であった.
 来遊資源量指数は,概ね2000年並となったが,6−7月に行なわれた漁期前調査では沖合に大量の魚群の分布が認められていること,及び漁期前半における調査船の試験漁獲結果が比較的良好なことから,漁場外にもかなりの資源が存在すると考えられた.従って,2000年漁期を上回る来遊量があると判断した.
 (*来遊資源量指数:緯度経度30 分桝目における旬別平均CPUE の全桝目の和)
イ 漁場の予測について
 漁期前半の漁場は概ね沿岸域に形成された(図3).8月中旬・下旬には色丹島沿岸に漁場が形成され,9月上旬には道東沿岸域にも漁場が形成された.9月下旬の漁場は道東から襟裳岬南方沖合にかけて形成された.津軽海峡の東側には津軽暖流の張り出しがあるが,この先端に小型の暖水塊(鮫角沖暖水塊)があり,津軽暖流の張り出しと暖水塊が接合して鮫角の沖合に広い暖水域を作っていた(「海況の現況」を参照).襟裳岬南方まで南下してきたサンマはこの暖水域に一時的に南下を阻まれているものと見られる.
 しかしながら,この暖水域はしだいに解消されると予想されているので(「海況の予想」を参照),サンマは,例年と同様に三陸近海の冷水域に南下するものと判断される.黒潮系暖水は例年より三陸南部に広く張り出すと予想されていることから,三陸沿岸には東西に顕著な潮境が形成され,安定した漁場が形成される可能性が高いと判断した.また,常磐海域は黒潮系暖水で占められることから,この海域へのサンマの南下は遅れるものと考えられた.
ウ 魚体の予測
 漁場域における民間漁船及び調査船漁獲物の各旬における体長組成を示した(図4).これによれば,8月中旬までは25−27cm台の中型魚の占める比率が高かったが,大型船の操業が解禁された8月下旬の漁獲物は31-33cm台の大型魚の比率が高くなっていた.その後,大型魚の比率はしだいに低下しつつある.漁期前調査の結果によれば,大型魚・中型魚の次に南下すると考えられる小型魚の資源量が大きいことが分かっており,現在のところ,これを強く否定するような情報は得られていない.したがって,今後は小型魚の比率が高くなっていくものと判断された.小型魚が現時点(10月上旬頃)で分布すると見られている北方海域(千島列島の太平洋側沿岸域)での分布調査は行なわれていないが,8月下旬に沖合域で宮城県庁所属の調査船新宮城丸が漁獲試験を行なっており,ここで漁獲されたサンマは小型が主体であった(図5).
(3) その他
 関係者の漁況判断の参考とするため以下に今漁期前半の漁況をまとめた.
(平成13年度サンマ漁期前半の経過)
 2001年のサンマ漁業は,7月8日10トン未満船による流し網漁業から始まった.7月19日からは知事許可の棒受網漁船(5トン未満,5トン以上10トン未満漁船は7月26日から開始)による操業が開始され,大臣承認棒受網漁業は,小型船(10〜20トン)が8月10日,中型船(20〜40トン)が8月15日,大型船(40トン以上)が8月20日から出漁した.
8月上旬: 10トン未満棒受網船がロシア200海里内に入域したが,魚群が見つからず道東沖(釧路〜落石沖,水温11〜15℃)で操業した.魚群は薄く,灯付きも悪かった.流し網船は,棒受網船の沖側で操業した.
8月中旬: 漁場は道東沖(大黒島〜落石沖,水温12〜14℃)に形成された.漁況はやや上向き,濃群が見え始め,灯付きもやや良くなった.流し網船も一部残っており,好漁であった.魚体は中型が主体であった.
8月下旬: 大型棒受網船が出漁し,漁場は,色丹島沖と落石沖に形成された.漁場水温は12〜16℃.この旬は台風11号の通過,シケ等で出漁できない日があった.体長31-33cmの大型魚の割合が高く,昨年より太っており,32cm台以上では200gを超えていた.
9月上旬: 上旬前半までエトロフ島及び色丹島沖に漁場が形成されたが,その後は道東近海が主漁場となった.漁場はやや南下し,釧路〜落石沖に漁場が形成され,漁場水温は13〜15℃であった.漁況は好調で,大型魚が多く,9月3日以降は日計5千〜6千トンの水揚げがあった.
9月中旬: 魚群が南下し,漁場は釧路〜落石沖の他,襟裳岬の南東沖にも形成された.漁場水温は13〜16℃.魚体は8月下旬に比べやや痩せたが,依然として大型魚の割合が多かった.
9月下旬: 漁場は依然として道東沖合から襟裳岬南東沖合で,漁場水温は,13-15℃.津軽海峡から張り出す暖水がサンマの南下を阻んでいるため三陸海域には漁場は形成されていない.魚体は大型魚の割合が減少し,中型・小型魚の割合が増加してきた.