平成13年合同分科会

 

研究項目

 

3.亜寒帯循環での二酸化炭素の挙動に関する観測研究

 

 (1) 表層二酸化炭素分圧の季節変動とフラックスの把握

  @海面二酸化炭素分圧の季節変動の解明

研究機関名

 

気象庁 気候・海洋気象部

気象庁 観測部

函館海洋気象台

研究参加者名

 

神谷ひとみ(気象庁気候・海洋気象部)

 

須田一人(気象庁観測部)

緑川貴(函館海洋気象台)

1.第U期の目標

亜寒帯循環域西部において親潮域を中心とした観測を密に行なって、この海域の二酸化炭素分圧の分布やフラックスの分布について、海域ごとに季節変動や年ごとの変動を調査し、これらの変動を引き起こす環境要因を明らかにする。

  データベースシステムは、第1期に引き続きこれを維持するとともに、観測データの検索機能および図示化機能を強化することにより、広範囲なユーザーに利用しやすくすることによって、本研究課題の計画全体としてデータベースシステムの活用の推進をはかる。

2.発表要旨

函館海洋気象台所属の海洋気象観測船高風丸に搭載された二酸化炭素観測装置により、定線観測等において、亜寒帯循環域西部で大気中及び表面海水中の二酸化炭素観測を年5回実施した。また、二酸化炭素観測にあわせて栄養塩や全炭酸等の生物関連物質の観測及び水温や塩分の連続観測を実施した。

解析には、高風丸により取得したデータ以外に、SAGE参加機関が取得した亜寒帯循環域西部の1997年からの二酸化炭素データも用い、この海域の二酸化炭素分圧の分布やフラックスの分布の海域特性、およびそれらの変動を引き起こす環境要因を海域別(親潮域、黒潮域、混合域、津軽暖流域)、季節(冬、春、夏、秋、初冬)毎に調査した。図1に季節毎の二酸化炭素データ観測点を示す。CO2フラックスの計算式は本研究に参加している秋山による交換係数を使用した。

図2に親潮域、図3黒潮域、図4に混合域、図5に津軽暖流域の表面海水中の二酸化炭素分圧(海水pCO2)、水温、CO2フラックスの時系列を示す。海水pCO2は、海域毎に異なった季節変動がみられた。特に低い海水pCO2が観測された春季の親潮域では局所的な変動も大きかった。

季節変動の主要な因子として、水温、生物活動、混合について海域毎にそれぞれ検討した。図6に親潮域、図7黒潮域、図8に混合域、図9に津軽暖流域の全炭酸、栄養塩(硝酸塩)、クロロフィルa、水温、塩分の採水観測結果の時系列を示す。水温についての検討は、前の季節の海水pCO2について水温の変化に伴う濃度を計算し、実測値との比較を行った(図10)。生物活動は全炭酸(図11)、クロロフィルa、栄養塩の変動から、混合は水温、塩分、全炭酸や栄養塩等の変動から検討した。

その結果、表面海水中の二酸化炭素分圧に影響を及ぼす環境要因が季節や場所によって異なることがわかった(12)。特に、4−5月の親潮域では、冬季の鉛直混合による放出域と春季の生物活動による吸収域が混在して、濃度変化が大きかった。CO2フラックスは、大気から海洋への方向であり、親潮域、混合域、及び津軽暖流域で異なる季節変動が見られ、親潮域の吸収量はほかの海域より大きいことが示された。