平成10年度第二回「二酸化炭素の挙動」分科会報告

平成11年3月17日(水)13:30〜16:30、中央水研(担当:佐々木克之)

 

出席者

高谷(緑川 貴(気象庁)代理)、井本泰司(海上保安庁水路部)、長澤和也(遠洋水研

)、津田 敦(北海道水研)、秋山正寿(東海大)、佐々木克之・小埜恒夫(中央水研)

(遠洋水研・長澤和也:欠席)

 

1平成10年度の成果および11年度の計画

1)海面二酸化炭素分圧の時空間分布と二酸化炭素フラックスの把握(気象庁)

 高風丸により北緯41°30分を中心とした亜寒帯海域で季節を変えて表層二酸化炭素分圧

を測定して、親潮海域で春季に分圧が現象して、夏季から秋季にかけて徐々に増加し、冬

季に大きく増加することが示された。また、二酸化炭素分圧データ処理システム関連機器

を整備して、次年度のデータセット作成の準備を行った。

2) 炭酸系物質の時空間分布とその変動要因の把握(中央水研)

144°E線の1997年1、5および8月のデータを整理して季節変化を検討した。同一塩分を

同一水塊と考えて季節変化を見ると、親潮域では1月から5月にかけて硝酸塩と珪酸塩が減

少して、5月から8月にかけて硝酸塩が少しとアルカリ度が大きく減少した。全炭酸は1月

から5月と5月から8月にかけて同程度減少した。これらの結果から1月から5月にかけては

珪藻ブルームが卓越し、5月から8月にかけては炭酸カルシウム殻をもつプランクトンが卓

越したと推定された。同一sigmaθで同一塩分上の季節変化を調べてみると、26.4、26.6

および26.7で全炭酸は1月から5月もしくは5月から8月にかけて減少しているが、26.8では

季節変化が見られなかった。春季または夏季のデータから親潮・黒潮間の物質輸送の見積

もりをする場合に中層水上部については冬季のデータも検討する必要がある。

亜寒帯循環系における二酸化炭素分圧等の観測研究(海上保安庁水路部)

3) 今年度は8月2日〜11日に「拓洋」により47°N線を中心に観測を行った。海水

pCO2は40°N以北では260〜320ppmと低く、39°N以南では340〜370ppmと高い傾向が見ら

れた。

4)炭酸ガス交換係数のマッピングに関する研究(東海大学)

 Whitecapモデルによる炭酸ガス交換係数算出にあたって水温および塩分の効果を検討し

た結果、水温は10%程度の影響を与えるが、塩分はほとんど影響しないことがわかった。

既存のモデル(Tans。Liss & Merlivat)および改良型Whitecapモデルの比較検討を行っ

たところ、交換係数の大きさはTans、改良型Whitecap、Liss & Merlivatの順となった。

駿河湾で11月から12月にかけて炭酸ガス分圧と環境条件との関連を見たところ、生物活動

により大きく変化することが見られた。北太平洋について三つのモデルによる炭酸ガス交

換係数の月別マッピングを行った。

5)動植物プランクトンの空間分布とその時間変化の観測(遠洋水研・北水研)

本年度は180°E線および40°N線で観測を行った。クロロフィルa(chla)は昨年同様ベー

リング海で高く、その南側の混合水域で低かったが、ベーリング海で炭酸カルシウム殻プ

ランクトンが卓越し、混合水域では珪藻が卓越するという結果となった。40°N線では西

側でchlaが高かったが、珪藻も炭酸カルシウム殻プランクトンも多いという結果と6)平

11年度については、今までの計画に沿った調査研究を実施するが、動植物プランクトン

の課題(北水研)では時間分画式セディメントトラップによる珪藻と炭酸カルシウム殻プ

ランクトンの沈降量解析に焦点を移していく。なお、この課題を分担していた遠洋水研は

水産庁の機構改革に伴い平成11年度は課題を分担せず、本課題は北水研だけで対応する。

 

2データポリシー案について

1) 海洋データに提出について

 二酸化炭素分圧および関連データ(緯度、経度、水温、その他の情報)については

気象庁でデータ管理(暫定値、その後の修正値など)するので、データ提出のフォーマッ

トが示され、合意された。また、その際方法論およびクルーズ情報についてのフォーマッ

トも示された。実際に二酸化炭素分圧のデータが送られ管理されるのは平成11年度に入っ

てからである。化学・生物データについては観測終了後2年を目途とされているが、一部

の生物データについてはサンプル処理後2年間にしてもらいたいとの要望が出された。ち

なみに、昨年の分科会で出された意見を以下に再録する。

(1) 二酸化炭素分圧のQualityに大きく影響する船底水温精度については、各船で

観測時に船底水温とCTDデータの関係をチェックして、船底水温の精度を+/-0.1℃にする

よう務めるのが現実的対応であることが確認された。

(2) CTDその他のデータにつては、案の通りでよいが、CTDなどのデータからボト

ルデータ(栄養塩、クロロフィル、全炭酸その他)など各種のデータを一律にできないの

で、それぞれについて期限その他を決める必要がある。また、これらのボトルデータにつ

いてはQuality Checkができる情報も必要なのでそのためのフォーマットも必要である。

(3) 生物データ(動植物プランクトンデータなど)はフォーマットづくりが難しく

進展していない。マスフレックスにおいて各人がフォーマットに合わせるのではなく、自

分のデータセットをそのまま提出することにしたところ、データ提出もあり、ある程度

JODCでも提出されたものに対して手を加えたという経験が出されて、このことも参考にし

て、フォーマットづくりよりまず提出してもらい、それを手がかりに前進するようにして

はどうかという意見でまとまった。

 

2) 海洋調査報告

 Cruise Summary Report(CSR)について調べてみたところ、気象庁や水路部、海洋研など

からは提出されているが、水産庁関連では提出されていなかったので、今年度の航海から

担当水研(北水研と中央水研)は報告していくこととした。

 

 

3その他

 科学技術庁の矢吹さんから連絡されたU期へむけてのスケジュールなどの紹介を行った

。また、今年の秋の海洋学会(函館)で予定されているSAGEシンポジウムの発表などにつ

いて意見交換した。