平成9年度第2回亜寒帯「二酸化炭素の挙動」分科会報告

1998年2月27日13:30〜15:30、中央水産研究所

参加者:

東海大学:秋山正寿、気象庁:緑川貴、海上保安庁水路部:井本泰司、

遠洋水研:長澤和也、中央水研:佐々木克之・小埜恒夫

(北水研:斉藤宏明氏は欠席)

 

1. 平成9年度の成果と平成10年度の計画

1) 中央水研:5月の144°N線の表層pCO2の分布と他の環境要因との関連が報告された。

黒潮域では270〜290ppmで、水温や塩分との相関が見られず、混合域から親潮域について

は比較的よい相関が見られた。とくに親潮第二分枝から第一分枝の間の混合域では良い相

関が見られた。また、親潮域ではpCO2が160ppmまで減少していて、春季ブルームがpCO2減

少に大きく寄与していることが示された。

 平成10年度は4月と3月に調査を実施するとともに、9年度に得られた全炭酸などの炭酸系

物質の分布の特徴を明らかにしていく。

2) 気象庁:今年度は高風丸に搭載する二酸化炭素測定装置の作成と調査準備について

報告され、また二酸化炭素データベース作成の準備と考え方についての説明がなされた。

さらに、長年測定してきたPH線のデータとりまとめの中から、どこにポイントを置いて調

査を実施するのか検討を加えた。討論の中でデータベース作成については、それぞれの研

究機関で同一の標準ガスを使用するとともに、船底の水温のcalibrationをよく行うこと

が重要であるとの指摘が出された。平成10年度は41.5°NのPH線を中心に四季にわたって

CO2測定が予定されている。

3) 保安庁水路部:47°Nの160°〜180°Eについての夏季の大気および表層のpCO2デー

タの報告がなされた。160°EではpCO2が約290ppmであるが徐々に増加して165°Eでは約

350ppmに増加して、その後は180°Eまでほとんど変化しないという結果となった。平成10

年度は運航計画の関係で160°Eより西側のラインで調査を実施する予定である。

4) 東海大学:大気・海洋間の炭酸ガス交換係数についてはTansとLissのmodelがあり、

かなり異なっている。ここでは様々なデータを収集してこの係数についてホワイトキャッ

プを考慮してより真の値を求めることをめざす。様々な物理過程を取り込んでモデルを作

成するとともに、駿河湾で大気、海水中の二酸化炭素を風などのデータとともに取って、

モデルの検証、作成を行ったが、まだ結果は検討中である。

5) 北海道水研・遠洋水研:北太平洋の165°Eおよび180°Eで夏季に亜熱帯域から混合

域を経て亜寒帯域まで動植物プランクトンの調査を実施した。CHLaは相対的に亜熱帯域と

亜寒帯域で高く、混合域で低く、一方動物プランクトンは逆で、さらに魚類はまたその逆

であった。これらの結果から植物プランクトン濃度はトップダウンで決められている可能

性があることを指摘した。珪藻類の指標であるバイオジェニックシリカは50°N以北にし

か存在せず、また円石藻は180°Eには存在したが165°Eには見られなかった。平成10年度

は同じ調査を実施するとともに、北海道近くの定線でセヂメントトラップを入れて珪素と

カルシウムの沈降について明らかにする予定である。

 

2. データ管理について

気象庁吉田さん提案のSAGEデータリスト作成については参加していくこととした。pCO2デ

ータについては、標準ガスの問題およびinsituと実際の測定の時の温度の違いをどのよう

にして補正しているのかについて記載する必要性が述べられた。

 

3. その他

 水産研究所の機構改革で、遠洋水研担当研究室が消滅することについては、その時点で

対応策を検討することとなった。