科学技術振興調整費

「北太平洋亜寒帯循環と気候変動に関する国際共同研究」

平成10年度第2回亜寒帯観測研究分科会

議事録

 

日時 平成11年3月17日 14.00〜18.00

場所 気象庁気候・海洋気象部会議室

出席者 深澤(主査)、渡邊、寄高、信国、四竈、倉賀野、渡辺、安藤(以上委員)、

杉本、吉岡(事務局)

 

1. 主査挨拶

SAGEも3年目を迎える。今年度に実施した成果がほとんど中間評価の対象になると考えられたい。各担当者から説明していただくが、推進委員会で主査から説明するので、特に今年度の成果、計画していたができなかったこと、来年度の計画については、必ず説明していただきたい。

 

2. 各研究担当者からの報告

安藤(気象庁):(資料/OHPにより、目標、観測の進捗状況等を説明)

杉本(事務局):(資料/OHPにより、研究成果、来年度の計画を報告)

深澤(東海大学:主査)海域平均で水温の変化にタイムラグがあるように見える。各深度の水がどこから来るのかが興味深い。その場でできて沈むだけならばラグはほとんどないだろう。もっと細かく海域を分けて、ある海域のSSTと他の場所の表層水温の相関を取ってはどうか。どこの水が沈んでその場所に達したのかが分かるかもしれない。また、P1ではフロンの観測も行う。フロンの結果も併せて使えば興味深い。

渡邊(遠洋水産研究所):400mの1990年前後を境とした変化は風成循環のフロントの変化と解釈している。100mでの変化は冬季の混合層で決まっているように考える。

深澤:風系が変わって海洋循環が変わる、あるいは循環が風系を変える。これはニワトリと卵かもしれないが、90年代に入ってアリューシャン低気圧が弱まり、curlτも弱まっている。

フロントの変動は水温断面を取ってみれば分かる。

移動平均を取らずに、冬季だけの時系列を見れば冬季の混合層の変動を見ることができるのでは。

XBT観測については5、6月に開洋丸が、9月にみらいがP1(47N線)を実施するが、開洋丸では復路、みらいでは往路(170Wまで)でプローブを提供してもらえばXBT観測が可能だ。

安藤:検討する。

深澤:開洋丸は渡邊さん、みらいは寄高さんがコンタクトパーソン。

季節変動については、水温の偏差ではなく水温値の各年の最高・最低水温の変動、いわば包絡線の変動がどうなっているか見てみたい。

ポイントをまとめると、観測については、NOAAとの共同XBT観測は2月から開始し、現在他の商船による委託も検討していること、共同観測の船も含めてNOAAからは1998年末までの亜寒帯域の表層水温データを収集したこと、みらい等による観測も検討していること。解析の面では、亜寒帯域の海面/表層水温の最近までの変動を調べたこと、来年度は解析期間をさかのぼること、大気のデータの解析にも着手すること、など。

 

渡邊:(資料/OHPにもとづき説明)1991年からのさけ・ます調査で得られた観測結果の解析を行った。照洋丸・開洋丸で行った日付変更線付近と150W/160WのCTD/XCTD観測により亜寒帯域の東西での構造の違いを把握した。1999年5月から開洋丸で170WまでのP1ラインの観測を予定している。

深澤:180°の断面で塩分躍層の下に中冷構造があるのは初めて見た。

若竹丸の観測はいつからあるか、北光丸はいつからか。

渡邊:若竹丸は1991年から、北光丸は1992年から。照洋丸、開洋丸は定線ではない。

深澤:データはいつ頃提供できるか。

渡邊:生データであればすぐにも出せるが、きちんと(品質管理)したものを提供できるには時間がかかる。さけ・ます調査のPIは自分ではないが、担当者からはデータはオープンにしてよいと聞いている。

 

寄高(海上保安庁):(資料/OHPをもとに説明)9年度に流した7個の漂流ブイは6個が生き残った。西部亜寒帯域では渦にトラップされることもあったが、全てのブイは太平洋を横断して東南東に流れた。10年度は6個を放流した。

深澤:165E付近で収束しているように見える。Mizuno and Whiteのノーダルポイントがどこだったか確認しておくこと。

渡邊:ブイをトラップした渦は暖水渦が多いのか。

寄高:冷水渦の方が多い。西部では渦が多く移動速度の東西成分の変動が大きい。東部では安定して東へ流れる。

四竈:ドローグが切れると速くなると思っていたが。

寄高:そうでもないようだ。

四竈:アラスカ湾の中に入るような流れはないのか。

深澤:放流地点をもっと東にすればあるかもしれないが、あっても流れはごく弱いはずだ。

今後の解析の進め方はどうか。

寄高:流れのマッピングをした後、他のデータとの比較を行う。

深澤:データの公開についてはどう考えているか。

寄高:生データであれば出せる。

深澤:SAGEのデータポリシーではデータのレベルまでは議論していない。レベル1までは早く提供できるように希望する。

 

信国(海上保安庁):(資料により説明)根室沖の2本のラインを1997年と1998年に実施している。両年の比較は現在作業中であり、推進委員会には間に合わせたい。1998年8月の観測では主としてXCTDを使った。CTDとの比較も行った。

渡邊:XCTD/CTDの比較の方法は。

信国:停船したまま、CTD開始前または終了後にXCTDを投入した。

寄高:1997年はCTDを300mまで降ろしたところで投入した。

信国:XCTDは12ノットで1000mまで測定できるとのことだが、12ノットでは600m程度までしか測定できない(スプールのエナメル線が出尽くす)。実際には5ノットに減速して投下した。

安藤:鶴見精機によれば出荷前の検定の方法を改善して塩分バイアスの問題はほぼ解決したとのことであるが、実際のところはどうか。

信国:今回の観測は改善前のプローブを使った。

渡邊:大西洋で行ったテストではバイアスは0.01以下になったと聞いている。

深澤:塩分の誤差に効いているのは本当に伝導度か。伝導度のセンサ毎のばらつきは小さいはずだ。塩分換算の際の水温の寄与も大きいはずだ。CTDの水温とXCTDの伝導度を使って塩分を求めてみてはどうか。

遠洋水研のXCTDを使った塩分の解析も同程度の精度と考えてよいか。

渡邊:バイアスは除去した場合としない場合がある。深い層のCTDの塩分値から0.05程度のバイアス値を決めて補正した場合もある。CTDとXCTDを交互に使った場合、補正をしないといわゆるXCTD waveが現れる(XCTDの塩分が高い)。

寄高:47Nについて1985年のR/V Thomas Thompsonとの比較を行っている。等密度面での比較では天皇海山の東西で変化傾向の違いがあるようだ。

 

四竈(気象研究所):(資料/OHPをもとに説明)1998年5月に5台、11月に5台のPALACEを投入。15日の間隔で浮上しデータを送信。寄高さんの説明では、漂流ブイでは東向きの流れが卓越していたが、中層では南北の動きも大きい。11月に本州東方で投入したフロートは黒潮の下層を横切って黒潮の南で浮上し、その後再び黒潮の北側に現れるなど、興味深い動きを見せた。

深澤:黒潮のフロントは深さ方向に傾いているので躍層下部の等密度面に沿って南に動いたフロートがその場で浮上すれば海面付近では黒潮を横切った形になる。北に戻るルートは黒潮下流側の北西向きの本流に乗った可能性がある。

表層では流れの東西成分が大きいが、600m付近ではこの成分はほとんど消えて変動は等方的になる。本州東方では陸岸が南北方向なので南北成分が大きくなるのはうなづける。

四竈:衛星通信のためPALACEは浮上して15時間ほど海面に留まるため、再度沈んだときに水塊を乗り換える可能性がある。水塊追跡性が高いRAFOSを使った観測では、湾流が強く湾曲している付近で流れを横断する向きに振り子のような往復運動をした例がある。

深澤:異なる傾きの等密度面を仮定すると、等密度面に沿って水が動くと必然的に鉛直流が生じ、等密度面拡散が起こる。その意味で中層の振り子運動は重要。

PALACEが同じ水塊を追跡できないのであれば、これから投入するものはこれまで最も多くのPALACEが流れた深度に設定してはどうか。

四竈:とすると400mぐらいだ。600m付近に入れたのは黒潮を横切る流れを確認したかった意味もあった。

 

倉賀野(気象研究所):(資料/OHPにより説明)T/Pの軌道データに対して200kmのカットオフフィルターをかけて、大スケールとメソスケールに分けた。順圧成分の変動は大スケールに含まれる。得られた各スケールの時空間相関スケールを用いてT、Sの解析精度を向上させ、高度計データを用いたT、Sの推定法の確立を目指す。大スケールの時空間相関特性をもとにWOA1994の現場観測データを最適内挿法で解析した。この解析で得られた1961-1990年の気候値とLevitusの気候値を比較した。T/Pによる海面高度との相関からメソスケールの変動は大スケールよりも深い構造を持つことが示された。

深澤:Levitusとの違いは何が原因か。

倉賀野:Levitusは1900年代初めからの利用可能な全期間のデータを使っている。今回は1961-90年の30年間。

深澤:両者はよく似ているように思えるが。メソスケールの解析はしないのか。

倉賀野:最適内挿法の第1推定値にLevitusを使っている。メソスケールは空間相関が小さく解析できるほど観測データがない。

 

渡辺(資源環境研):(資料をもとに説明)海水中のフロンの測定機器の改良を行った。フロン及びSF6の実海域での観測を行い、断面における水塊形成年代を求めた。化学トレーサーの測定技術の確立が成果で、亜寒帯域での観測はこれからだ。11年度には開洋丸及びみらいによるP1の航海で化学トレーサー、炭酸系物質、栄養塩等の観測を行う。

深澤:年代断面図に等密度線図を重ねてはどうか。年代算出の際mixingは考慮しているか。

渡辺:advectionのみ考慮している。

深澤:mixingを入れると深い層はもっと新しくなる可能性がある。表層混合層を表現する数値モデルに既知の大気のフロン濃度を与えて観測結果を再現できるか、計算してみてはどうか。

カナダIOSとプリンストン大学との相互検定は全要素について行うのか。

渡辺:少なくとも炭酸系は行う。

 

深澤:(資料をもとに説明)「素人」でも高精度の観測が可能なpH計及び全炭酸・アルカリニティ分析装置が実用化した。現業機関における導入を検討してほしい。これら装置は11年度のP1で使用する。

渡辺:全炭酸、アルカリニティとも非常によい精度だ。「素人」が行う場合はスタンダードだけをきちんとしておけばよい。

 

(分科会としての取りまとめ)

深澤:深澤が本日の資料をもとに取りまとめを行い、3/26の推進委員会で説明する。各委員は3/24までに資料を事務局(杉本)まで提出すること。

 

3. 平成11年度に行われる中間評価について

外国出張のため不在の科学技術庁矢吹専門職に代って、安藤が資料を説明。平成11年度は、第一期の最終年度であり中間評価が行われる。スケジュール等は資料のとおり。中間評価にあたっては、

1)個々の研究の羅列になることなく「総合」研究であることを踏まえたまとめ方を考えること、

2)他の研究との連携や国際的な連携が見える形にすること、

3)第二期での研究の方向については積極的な提案をすること、

などに留意すること。

 

深澤:取りまとめを行う主査としてお願いする。成果をまとめるにあたっては、FSの報告書の記述を読み直し、それを念頭においてまとめていただきたい。この分科会の成果をまとめるにあたり、個々の研究をどう組み合わせて分科会としての総合的な成果とするか、検討したい。

「観測」分科会としてはとにかくデータが取得できたことはそれだけでも大きな成果だと主張したい。ただし、それを主張するには取得したデータをどう公開するのか、という問いに応えられなければならない。SAGEのホームページにデータ自体を置くなり、提供の方法を明示するなりする必要がある。リリースするかどうかはともかく、本年7月には提供方法については提示できるようにしたい。この問題は3/23のデータ管理分科会でも議論されるであろう。

第二期への移行に関しては何をやるかの提案にストレスを置いたまとめとされたい。評価委員は海洋のコミュニティの人とは限らないので、これまでの成果とこれからの提案がよく分かる形にまとめることが重要である。

秋の日本海洋学会でSAGEのシンポジウムを計画している。その成果は印刷物とする予定である。

 

以上