科学技術振興調整費「北太平洋亜寒帯循環と気候変動に関する国際共同研究」
平成
10年度第1回亜寒帯観測研究分科会 議事録
日時
平成10年9月18日 15.00〜18.15場所
気象庁気候・海洋気象部会議室出席者
主査 深澤 理郎(東海大学海洋学部)委員
渡邊 朝生(水産庁遠洋水産研究所低緯度域海洋研究室)寄高
博行(海上保安庁水路部企画課海洋研究室)信国
正勝(海上保安庁水路部海洋調査課)四竈
信行(気象庁気象研究所海洋研究部第二研究室)倉賀野
連(気象庁気象研究所海洋研究部第二研究室)渡辺
豊 (工業技術院資源環境技術総合研究所海洋環境研究室)安藤
正 (気象庁気候・海洋気象部海洋課)オブザーバー
矢吹 哲一朗(科学技術庁研究開発局海洋地球課)事務局
吉岡 典哉(気象庁気候・海洋気象部海洋課)市成
隆 (気象庁気候・海洋気象部海洋課)杉本
悟史(気象庁気候・海洋気象部海洋課)議事
1.主査挨拶2.
各研究担当者からの報告 1) 安藤・杉本 2) 渡邊 3) 信國 4) 寄高 5) 四竈 6) 倉賀野 7) 渡辺 8) 深澤 3.データポリシーWOCE
は第1回のCD-ROMが配布されるなど、データの利用が始まっている。次の目標として、WOCEのデータを使って成果を出して行く時期にさしかかっている。気候変動において亜寒帯が注目を浴びている時期でもあり、SAGEできちんとした観測・研究成果を出すことが重要である。省庁再編が間近に迫っているが、幸い(?)SAGEはその前に終わるので、省庁再編までに大きな成果が上がることを願っている。2.
各研究担当者からの報告深澤:T期の目標を簡単に説明してから、今年度何をする予定か、産物として何ができるのか、あるいはできないのか、これまでの進捗状況、今後の進め方について手短に説明せよ。
安藤:(資料にもとづき、目標、観測の進捗状況、今後の予定等を説明)
杉本:(資料
/OHPにより、研究成果を報告)寄高:
EOFの寄与率は?杉本:順に
20%、10%、第3モード以下は5%程度。深澤:成果として要は海域分けを変更したということか。
杉本:しかり。今後、
WOA94を使って気候値の季節変化を明らかにし、プロジェクトで得られたデータを使って検証することを考えている。…深澤:
inter-decadalについてはやらないのか。安藤:科振費「海洋大循環」で
90年頃に北太平洋の表層で冷→暖のジャンプが起こった可能性を示唆した。その後のデータも蓄積されたことから、このジャンプを検証することを行いたい。深澤:確かに
90年のレジムシフトが確かめられる時期になった。レジムシフトの解析にはEOFでは「つらい」かもしれない。季節変化もdecadalもどちらも大事だが、季節変動はWOA94などで誰がやっても分かるようになったとも言える。個人的な希望であるがレジムシフトの確認は是非やってほしい。渡邊:(資料にもとづき説明)過去データの整理と水産調査船による
XBT/XCTDネットワークの構築が2つの柱。さけ・ます調査による夏季の水温観測から100 m付近の水温極小層の水温がdecadalに変動することが分かった。これは冬季の大気の影響を海洋が保持していると考えられる。深澤:こうした解析結果を他人が引用できる形で発表しておくことが重要。東海大学の紀要はレフェリーつきできちんと扱う。利用してほしい。他人が使える形にして初めて「成果」と言える。
深澤:
11年度以降の観測網の展開が白紙となっているが、どうにもならないのか。渡邊:難しい。
深澤:気象庁と遠洋水研の棲み分けはどうなっているか。
安藤:課題の上では季節変動と経年変動で別れている。しかし気象庁も経年変動まで扱うつもり。強いて言えば気象庁は現業的に最新までの解析を行っており、その結果を反映させたものとしたい。
渡邊:遠洋水研では海域を限定して高密度の観測・解析を行いたい。
深澤:たてまえとして「棲み分け」ができていればよい。
信國:(資料
/OHPにより説明)10年度はシップタイムが取れず、観測は縮小したものになった。11年度は「みらい」の利用を検討している。中型船の利用もありうるが、その場合はCTDが使えず、XCTDのみ。寄高:成果として
47Nの1985年の観測との比較が出せる。深澤:栄養塩その他についてはどうか。
寄高:栄養塩については及川が整理済。
CO2seaは使える。リファレンスが問題。ADCPは参考程度。深澤:図の形で出して皆が引用できるようにせよ。
ARGOに参加するかどうかは別にして、水路部としてPALACEの投入は考えていないか。寄高:全く考えていなかった。
深澤:
PALACEの重要性は、オイラー的な中層の流れが得られることと、プロファイルデータが取得できること。TRANSPACのXBT観測の代替にもなりえ、船がないところのデータもとれる。寄高:(資料をもとに説明)昨年度のブイの結果は
11月に東向きの流速ピーク、1月に極小で2月にまた流速が大きくなった。今年度のブイは順調に流れている。SCRIPPSでNillerと改良型のドリフターの打合せを行った。深澤:データの解析とかはどうするか。
寄高:
2×5度程度にマッピングして、基礎資料としてもらうことなどを考えている。吉岡:年末から年始にかけて全てのブイの速度が小さくなっているのは何故か。
寄高:分からない。表層循環自体がこのように変動しているのでは。
深澤:水温データも得ているのか。
寄高:得ている。現在のブイでは日射の影響でブイ本体の温度が上昇し
1℃程度高い水温を観測しているようだ。安藤:改良型のブイの普及は?
寄高:水路部がこれまで投入したものは全て旧タイプ。今年から新タイプを購入予定。
深澤:解析の方法を検討せよ。他の機関の漂流ブイデータとのデータ交換も考慮しては。
深澤:南東に動いたフロートのプロファイルにはモード水らしい構造が見られる。黒潮を横切ったのではないか。
四竈:
T/Pの解析で見る限りまだ流軸より北側。黒潮を横切るような動きをしてくれればいいのだが … 。深澤:データの整理の方法を検討せよ。
倉賀野:(資料
/OHPにより説明)軌道データに対してフィルターをかけて、大スケールとメソスケールに分けた。順圧成分の変動は大スケールに含まれる。得られた各スケールの時空間相関スケールを用いてT、Sの解析精度を向上させ、高度計データを用いたT、Sの推定法の確立を目指す。深澤:構造関数に季節変動がはいっていないか。
倉賀野:はいっているかもしれない。
深澤:春から秋と、秋から春の
2つにわけて、関数の形が有意に異なっていなければ大丈夫だろう。深澤:大スケールとメソの振幅の違いは。
倉賀野:高度でみると、大スケールは
3cm位。メソは場所によって異なり、西のほうではずっと大きい。深澤:
200 kmで大スケールとメソスケールを分けたのに根拠はあるか。倉賀野:軌道データのスペクトルを取ると
200 km に谷があった。深澤:海面で大気と平衡状態になるまでの期間は?
渡辺:フロンで
1か月、SF6はもっと早い。C14は1年ぐらいかかる。深澤:平衡になるまでの時間が短ければ問題ないんだが。
渡辺:平衡時間の異なるいくつかのトレーサーを組み合わせることにより、確からしい年代測定が可能になる。
(分科会としての取りまとめ)
深澤:深澤が本日の資料をもとに取りまとめを行い、
10/27の推進委員会に提出する。その前に注釈を付けて各委員にメールで送るのでコメント、修正願いたい。
矢吹(科学技術庁):
(渡邊委員に)開洋丸に学生を乗せる場合どう扱うか水産庁として検討してほしい。科振費の外国旅費は別枠のため、事前に対処しておく必要がある。(
事前提出資料をもとに、深澤、渡辺、四竈、安藤が説明)
寄高:
JODC案は海地費「黒潮」のポリシーそのもの。推進委員会等での、各官庁は協力し合って研究を推進せよという要請への回答という側面がある。深澤:なるべく早く公開することが望ましい。努力目標として掲げるのはよいが、それにより出さない
(出せない)研究者が非難されるのは困る。渡邊:(みらいの例を挙げて)強制ではなく、参加する個人ないし組織に自分で努力目標を宣言させる、というのはどうか。
深澤:当分科会としては統一の見解を提示することはせずに、各委員の意見をそのまま推進委員会に出したい。無記名で提出するので本日意見のない委員も意見を出していただきたい。
4.
まとめと提言5.
その他(特になし)
以上