科学技術振興調整費「北太平洋亜寒帯循環と気候変動に関す国際共同研究」

平成9年度第2回亜寒帯観測研究分科会 資料

  1. 日時 平成10年2月26日(木)15時

  2. 場所 気象庁気候・海洋気象部会議室

  3. 各研究担当者からの報告
         1)安藤2)水野3)寄高4)倉賀野
         5)四竈6)木下7)渡辺8)深澤

1)安藤(気象庁)

研究項目:北太平洋亜寒帯表層水温の季節変動に関する研究

大項目:亜寒帯循環の構造とその時間変化に関する観測研究
中項目:表層水温に関する研究
小項目:北太平洋亜寒帯表層水温の季節変動に関する研究
担当機関:気象庁気候・海洋気象部
担当者:安藤 正、吉田 隆

第I期(3年間)の目標:

 米国海洋大気庁(NOAA)と共同して、日本と北米西岸の間を航行する商船に表層水 温観測を委託し、定期航路における反復観測を実施する。これは、NOAAが中心となっ て1970年代から実施されてきたTRANSPAC計画と呼ばれる表層水温観測計画の継続・拡 充となるものである。

 本研究の観測により取得されたデータ及び他の機関による観測データをもとに、北 太平洋亜寒帯の表層水温の実況把握を行い、その季節変動を明らかにする。さらに当 該海域の過去のデータも併せて解析し、数年〜数十年の時間スケールの表層水温の変 動を解明する。

平成9年度の研究実績、成果:

(共同観測に関するNOAAとの合意事項と観測の開始)

 NOAAの担当者(W. Woodward, OAR/AOML/NOAA)と共同観測の方法について協議し、 次の原則にもとづいて実施することで合意した(1998年1月)。

  1. 気象庁は、年間20往復程度の観測に十分なXBTプローブを提供する。
  2. NOAAは、少なくとも2隻の篤志観測船に観測を委託し、船舶搭載機器の提供、機器 に必要な物品の供給及び訪船指導を行う。
  3. 得られたデータは双方で共有する。NOAAは観測したデータをすべて即時的にGTSに 入力するとともに、当該篤志観測船及び他のすべてのTRANSPAC海域の篤志観測船の詳 細なプロファイルデータを利用可能になり次第、気象庁に送付する。

 1998年1月には観測を実施する商船(SEA-LAND EXPRESS、SEA-LAND DEVELOPER、と もに米国船籍)が決定し、同年2月9日にはSEA-LAND EXPRESSに横浜でプローブの積み 込みを行い、共同観測が開始された。他の商船についても近々に観測を開始する予定。

(北太平洋中緯度域の表層水温の変動の解析)

 北太平洋の30N-50Nの中緯度域を、西部(140E-170E)、中部(170E-150W)、東部 (150W-120W)に区分し、それぞれの領域平均の100, 200, 300, 400m水温の時系列デ ータをもとに、その季節・経年変動を調べた(1986年3月〜1997年9月)。西部・中部 では全ての深さで季節変動が明瞭であり、その振幅は西部で最も大きく、100mで3〜4 ℃、400mで1〜2℃である。西部・中部とも100mの高水温のピークが11〜12月に見られ るのに対し、200m以深ではピークは1〜2月に見られる。東部では水温変動の振幅が小 さく、100mでも季節変動が認められない。

 季節変動を差し引いた経年変動の振幅は、西部・中部の100mで約2℃、東部の100m で約1.5℃である。西部・中部では1987年に低温のピークがあった後、1991年に高温 のピークがあり、その後は高めに推移している。東部では低温のピークが1989年にあ り、その後昇温し、1993〜1994年は高温傾向が続いた。

 1995年以降中部及び東部では、解析値が決定できた格子数が減少しているが、これ はTRANSPAC海域の観測の減少によるものと考えられる。本研究によるTRANSPAC海域に おける観測の充実が期待される。

平成10年度の研究計画

 引き続きNOAAとの共同観測を実施し、数年〜数十年の時間スケールの表層水温変動 の解明に資するデータの蓄積を図る。本研究で取得したデータ及び過去/現在の他の 機関によるデータも併せて解析し、北太平洋亜寒帯域の表層水温の実況の把握及び季 節・経年変動の解析を実施する。

国際共同研究に関する海外との協力、協議等の状況、予定

 NOAAとの共同観測を公式化(formalize)するために、NOAA及び科学技術庁と調整 を行った。その結果、共同観測はUJNR(天然資源の開発利用に関する日米会議)のも とに1993年5月に設置された「太平洋総合観測研究イニシアティブ」パネル(1996年3 月に第1回会合開催)の中のテーマ「表層水温の長期的モニタリング」の一環として 位置づけることで合意を得た。同パネルの第 2回会合(1997年12月、於シアトル)では出席したNOAAのWoodwardから本共同研究に ついて報告が行われた。

 実施にあたっての具体的な取り決め事項は、日米双方の共同研究担当者(NOAA: Wo odward、気象庁:安藤)間で文書の交換を行うこととなり、1998年1月、両者がサイ ンした合意事項の文書を交換した。

(分科会資料)
成果の発表(学会発表、論文、著作等)


2)水野(遠洋水研)

研究項目:北太平洋亜寒帯循環表層水温の経年変動に関する研究

大項目:亜寒帯循環の構造に関する観測研究 中項目:表層循環の実態解明に関する観測研究 大項目:北太平洋亜寒帯循環表層水温の経年変動に関する研究 担当機関:水産庁 遠洋水産研究所 海洋・南大洋部 低緯度域海洋研究室 研究者名:水野恵介・渡邊朝生・岡崎誠

第1期(3年間)の目標

 亜寒帯海域の水温・塩分データベースを整備し、前線位置の変動・水塊の特性等の 経年変動を解析 し亜寒帯海域の海洋構造の経年変動の実態を把握する。また、亜熱帯海域における表 層水温変動と 亜寒帯海域の変動との関連を調べる。水産資源調査船を利用したXBT・XCTD観 測網を構築し、定線 上の海洋構造の変動を詳細に調べる。これまでに遠洋水産研究所に蓄積される亜寒帯 海域のCTD, XBT,ADCP、表層水温・塩分連続観測データ等のデータに対して十分な品質管 理を実施し、データ ベースとして整理する。

平成9年度の研究実績、成果

[資料解析]
遠洋水産研究所が中心となって継続してきた北太平洋亜寒帯海域における夏季のさけ ・ます資源調査 によって得られた表層水温観測データセット(海面から250mまでの基準層デー タ)の解析を行なった。 西部亜寒帯循環域の格子点データセットを作成し、1960年代後半から1980年 代にかけての期間に ついて時系列解析を実施し、同海域においてdecadal−interdecadalの時間スケール の変動が卓越する こと、西部亜寒帯循環の中央部で水温極小層がdecadalに大きく変動していることが わかった(1997年 度海洋学会秋季大会で発表)。

[観測網の展開]
上記さけ・ます資源調査の一環として実施されている日付変更線(若竹丸、6−7 月、38°30‘N〜 58°30’N)と東経165度線上(北光丸、7月、40°N〜51°N)の南北定線にお いて緯度1度毎の 資源調査定点(CTD観測実施)の中間点でのXBT観測を依頼し、表層水温の高密 度観測を実施した。 98年2月に水産庁漁業調査船「開洋丸」を用いたさけ・ます越冬期調査に参加し、 北緯40度以北 の東経165度線と日付変更線上で緯度30分毎のXCTD観測、その中間点でのX BT観測を実施し、 冬季の亜寒帯循環の表層構造を詳細に把握するデータを得た。

[XCTD性能試験]
XCTD(鶴見精機製)の観測性能を調査するため、日本海(若竹丸、5月)、野島 崎沖太平洋(開洋丸、 8月)等でCTDとの比較試験を行なった。現在用いている落下式が良い近似式に なっていることが わかった。水温・塩分観測値ともに所定の精度を満たしていると思われるが、塩分観 測値に深さに 依存するバイアスが含まれることに注意する必要がある。 98年2月の開洋丸調査においてもCTDとも比較試験を実施しており、今後これも 含めて解析を 行なう(1998年度海洋学会春季大会で発表予定)。

平成10年度の研究計画

[資料解析]
1991年以降実施されている日付変更線と東経165度線の定線観測結果のとりま とめを行ない、 これまでの蓄積データと合わせて、亜寒帯境界、亜寒帯フロントの年々の変動機構に ついて解析 を進める。

[観測網の展開]
夏季のさけ・ます定線観測にXCTDを導入し、表層水温・塩分の高密度観測を維持 し、98年冬季と 比較可能なデータセットを得る。1999年1月〜3月に予定されているベーリング 海スケトウダラ調査 (開洋丸)で航行する千島列島沖航路上でXCTD観測を実施し、冬季亜寒帯循環西 縁の表層構造を 把握する。

国際共同研究に関する海外との協力、協議等の状況、予定

特になし


3)寄高(水路部)
4)倉賀野(気象研)

研究項目:衛星電波高度計による海面高度の把握とその時間的変化の把握

大項目:亜寒帯循環の構造に関する観測研究
中項目:表層・中層の循環像に関する研究
小項目:衛星電波高度計による海面高度の把握とその時間的変化の把握
担当機関:気象研究所海洋研究部
担当者:倉賀野 連

第1期(3年間)の目標

 統計的手法や同化モデルなどを用い、TOPEX/POSEIDON海面高度計データや 観測船データを解析し、北太平洋亜寒帯域における海面高度と表層や中層の 水温・塩分・流速を抽出する。そのために、高度計データから得られる海面 高度については、季節変動、経年変動、それより短い時間スケールの変動等 に分離し、また順圧変動と傾圧変動に分離しそれぞれの、時空間スケールな どの変動特性を調べる。季節変動外力によるモデルの応答実験の結果につい ても同様の調査を行う。船舶観測データを用い、それぞれの時間スケールで の傾圧的な高度変動と海洋内部の水温・塩分構造の対応を調査する。また海 上風と順圧的な高度変動との対応についても調査する。得られた統計量を用 いて、海面高度の平均場及び変動場や中層・表層の構造を推定する。また変 動の時空間スケールの解析結果を用いて、推定した中・表層の物理量を中・ 高緯度海洋データ同化モデルへ同化し、海面高度変動や海洋内部の水温・塩 分・流速場の変動を解析する。

平成9年度の研究実績、成果

 1993年〜1997年7月までのTOPEX/POSEIDON高度計データから、海面高度変動 の時間スケールを分離しないで時空間スケールを算出した。北太平洋亜寒帯 海域では経度方向に1200km、緯度方向に550kmのe-foldingスケールを持ち。 これらは季節変動と見られ、中規模渦の変動よりも卓越した振幅を持つこと が分かった。またTOPEX/POSEIDONによる海面高度の観測誤差は5cm以上で、低 緯度と比べて観測誤差が大きく見積もられた。(図1)

 得られたスケールを基にして、5日毎1度×1度格子の海面高度偏差データ を作成した。このとき海面気圧に対する高度補正については、全球海面での 補正値の総和を0とする新しい補正法を適用した。格子化した海面高度偏差 データから、4年平均を取り季節変動を算出し、季節変動の時空間スケール の解析を行った。しかし、4年平均では完全に季節変動のみを抽出すること は難しく、日本近海では中規模渦程度の現象が多く残っているようである。 季節変動を抽出するには何らかの工夫が必要である。(図2、図3)

 中・高緯度海洋データ同化モデルの季節変動外力に対する応答実験を行い、 5日毎の季節変動データを作成した。現在時空間スケールを解析中である。

 WOA1994に格納されている船舶観測データを用いて、海面力学高度(0/1500db) と海洋内部の水温・塩分の関係を調査した。得られた統計量と、高度計デー タを用いて内部の水温塩分を推定したところ、高度計データには順圧変動が 含まれることが推定され、この方法を適用するには、順圧変動を分離する必 要があることが分かった。(図4)

平成10年度の研究計画

 平成9年度で始めた統計調査を引き続き行う。高度計データから得られる 海面高度について、海上風応力との対応の調査、海洋中層・表層の密度構造 との対応の調査などを通して、それを順圧変動と傾圧変動に分離する。これ らの調査の結果を用いて、高度計による海面高度データおよび他の衛星によ る海面水温データから海洋中層・表層の水温・塩分・流速場を推定する方法 を開発する。開発した方法で得られる海洋中層・表層の水温・塩分・流速場 を北太平洋領域モデルに同化する方法を開発し、それをもとに同化実験を行 う。

国際共同研究に関する海外との協力、協議などの状況、予定

 GODAEに参加し、海洋データのモデルへの同化手法について国際的な協議を 行う。TOPEX/POSEIDON科学検討チーム会議に参加し、TOPEX/POSEIDON高度計 の運用状況、データの利用に関する情報の交換を行う。

分科会資料

関連情報

 10月に仏国で開催されたTOPEX/POSEIDON科学検討チーム会議に出席し、次 のような情報を得た。TOPEX/POSEIDONは2000年までは運用が可能である。次 期衛星JASON-1は2000年5月に打ち上げられ、TOPEX/POSEIDONと全く同じ軌道 で観測する。しばらくの間同時観測が見込まれ、その間様々なキャリブレー ションが行う予定である。より精度高いデータの配布を目指す。

成果の発表

  1. 口頭発表