「北太平洋亜寒帯循環と気候変動に関する国際共同研究」
平成10年度第2回研究推進委員会資料
項 目 名 |
大項目:亜寒帯循環の構造とその時間変化に関する観測研究 中項目:表層水温変動に関する研究 小項目:北太平洋亜寒帯循環表層水温の季節変動に関する研究 |
担当機関 |
気象庁気候C洋気象部 |
担当者 |
安藤 正、杉本 悟史 |
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第1期( 3年間)の目標
米国海洋大気庁(NOAA)と共同して、日本と北米西岸の間を航行する商船に表層水温観測を委託し、定期航路における反復観測を実施する。これは、NOAAが中心となって1970年代から実施されてきたTRANSPAC計画と呼ばれる表層水温観測計画の継続・拡充となるものである。 本研究の観測により取得されたデータ及び他の機関による観測データをもとに、北太平洋亜寒帯の表層水温の実況把握を行い、その季節変動を明らかにする。さらに当該海域の過去のデータも併せて解析し、数年~数十年の時間スケールの表層水温の変動を解明する。 |
(北太平洋中緯度域の表層水温の変動の解析) 北太平洋亜寒帯域の表層水温を中心とした解析を行った。1989年前後を境に、海面で約1℃、100m深で約2℃の水温上昇が起こっていること、海洋表層の深さによって水温変化の空間分布が異なることなどが示された。また、本州東方の親潮系の冷水の面積や黒潮続流域の表層水温、オホーツク海南部の海氷面積の変動も調査した。さらに、最新までの実況解析から、北太平洋亜寒帯域中部において、表層水温(100m深)が1998年以降低下傾向にあることが示唆された。季節変動については、月毎の平均値をもとに、代表点における表層水温の変化を調べ、海域による季節変動の違いを示した。
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これまでの主な成果
(平成9年度) (共同観測に関する NOAAとの合意事項と観測の開始)NOAA の担当者(W. Woodward, OAR/AOML/NOAA)と共同観測の方法について協議し、気象庁がXBTプローブを提供し、NOAAが篤志観測船の委託、船舶搭載機器及び機器に必要な物品の供給、訪船指導を実施すること、得られたデータは双方で共有すること、で合意した。1998年1月には観測を実施する商船(SEALAND EXPRESS, SEALAND DEVELOPER、ともに米国船籍)が決定し、同年2月から観測を開始した。(北太平洋中緯度域の表層水温の変動の解析) 北太平洋の30N-50Nの中緯度域を、西部(140E-170E)、中部(170E-150W)、東部(150W-120W)に区分し、各領域の表層水温の時系列データをもとに、季節o年変動を調べた(1986年3月〜1997年9月)。西部・中部と東部では変動のパターンが異なることや、季節変動に関して、深さごとに高水温のピーク時期(月)が異なることが示された。
(平成 10年度)( NOAAとのXBT共同観測)2 隻の商船によるXBT観測を継続した。観測データはBATHY報によりリアルタイムに通報されるほか、NOAAからこの2隻のデータに加えてTRANSPAC海域で観測を行う他の商船のデータも併せてftpにより詳細なプロファイルデータを随時受取っている。また、1998年11、12月の「みらい」の航海において本研究のXBTプローブを提供し、北太平洋亜寒帯域において詳細な表層水温観測を行った。 |
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平成 11年度の主な予定
引き続きNOAAとの共同観測を実施し、数年〜数十年の時間スケールの表層水温変動の解明に資するデータの蓄積を図る。また、「みらい」による北太平洋亜寒帯域での表層水温観測も計画している。本研究で取得した海洋データ及び過去/現在の他の機関による海洋データに加えて、大気データも使用し、北太平洋亜寒帯域の季節・経年変動の解析を実施する。また、1998年以降の表層水温の低下傾向を注視して実況把握を継続する。 |
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国際共同研究に関わる海外機関との協力状況
NOAA との共同観測はUJNR(天然資源の開発利用に関する日米会議)のもとに1993年5月に設置された「太平洋総合観測研究イニシアティブ」パネル(1996年3月に第1回会合開催)の中のテーマ「表層水温の長期的モニタリング」の一環として位置づけられた。同パネルの第2回会合(1997年12月、於シアトル)及び第3回会合(1998年12月、於東京)において、本共同研究について報告された。実施にあたっての具体的な取り決め事項は、1998年1月、日米双方の共同研究担当者間で合意事項の文書を交換した。その後NOAAとは共同観測の実施、データの交換について随時連絡を取り合っている。 1998 年10月に開催されたIGOSSのSOOPIP(篤志観測船実施パネル)第2回会合(於ヌメア)に安藤が出席し、本研究について報告を行った。 |
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「北太平洋亜寒帯循環と気候変動に関する国際共同研究」 平成
10年度第2回推進委員会資料
項 目 名 |
<大項目>亜寒帯循環の構造とその時間変化に関する研究 <中項目>水塊分布に関する研究 <小項目>北太平洋東部およびアラスカ湾における観測研究 |
担当機関 |
東海大学海洋学部 |
担 当 者 |
深澤 理郎、鈴木 款 静岡大学教授(研究協力) |
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第1期(3年間)の目標
北太平洋亜寒帯域における十年以上の時間スケールを持つ変動を抽出する。そのために WOCEで既に観測された測線を同程度の精度と観測密度で再観測する必要がある。本課題では、北太平洋東部およびアラスカ湾にかかるP16Nの一およびP1を高精度、高密度で再観測する事を可能ならしめるために、特に観測項目の内、炭酸系に属する全炭酸、アルカリニティ、pHについての精度向上と分析の簡易化を図る。具体的には、新たな自動分析装置を導入、改良し、現業官庁等の観測においても炭酸系のデータ取得を可能とする。なお、当該海域における観測の内、P16Nあるいはアラスカ湾内での観測については、人員、船舶の運行状況から第2期に実施予定とせざるを得ない。
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上述の改良は、同装置の操作の簡略化を対象としており、改良後導入された装置でも全く同様の結果が得られるはずである。 P1再観測については、平成11年度に、水産庁開洋丸、海洋科学技術象整みらいによって西経145度までの実施が決まり、乗船人員担当振分け等がWHP再観測実施委員会(仮称)で決定された。また当該観測航海にはこれまでに本課題研究で導入された装置を使用し試水分析を行うと同時に炭素同位体については米国のKey博士との共同研究とする事となった。なお、西経145度以東はカナダのFleeland博士が同年度中に実施する予定となっている。 |
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平成 11年度の主な予定
5月29日から6月21日にかけて、水産庁開洋丸上で、西経170度まで、また9月には海洋科学技術象整みらい上で、西経170度から西経145度までのP1再観測が実施される予定である。本課題は、この観測航海に主体的に参加し、データの収集、分析を行う。特に全炭酸・アルカリニティ・pHの分析については、水産庁の協力のもと、また炭素同位体分析については、米国との協力のもと、それぞれ担当する。現時点(3月17日)では、米国との協力関係は整いつつあるものの、カナダとの協力関係については未定の部分が多く残されており、早急に 詳細なつめを行いたい。 |
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これまでの主な成果
(平成9年度) pH の計測を自動・高精度化するために、GEOMETER社の自動pH測定装置を導入、それをベースとして動揺しかつ温度制御が行いにくい船舶上で使用可能な pH分析装置を完成させた。この装置を実際に稼動させたところ(東大海洋研KH97-3航海)、RMSで0.1%の繰返し測定精度を得ることができた。また、 P1の再観測実施に向けて、その観測人員体制の確定とシップタイムの確保を目的としたWHP再観測実施委員会(仮称)を組織し活動を始めた。
(平成 10年度)西部亜寒帯海域の北緯 44度東経144度に「戦略的基礎研究」によるKNOT定点が設定されている。この定点で東海大学望星丸の航海が実施された。本課題でもこの航海に参加し以下のような成果をあげた。前年度作成し稼動させた pH分析装置をさらに改良し、より耐動揺性を強化すると同時に資料の大気からの隔絶を実現させ、上記航海で特に分析の訓練を受けていない補助学生が同装置を使用し、十分に信頼性のある資料を得ることが可能であった(表1および図3)。また紀本電子(株)が製造した全炭酸・悦禁特葡uは、すでに上記「戦略的基礎研究」で稼動しているが、同装置を上記航海で試用し、さらに操作を簡略化し改良した装置を作製させ、導入した。改良以前の装置で測定した結果は、表1および図1、2に、また繰返し精度については表2に示した。なお、 |
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国際共同研究に関わる海外機関との協力状況
P1再観測については、米国のKey博士(現プリンストン大学)と協力し、炭素同位体の分析、資料解析を行う予定であり、data sharing policyについてはすでに本課題と合意がなされるに至っている。また、P1再観測および1985年に観測されたデータを使用しての長期変動解析については、同じく米国のRoemmich博士との共同研究が予定されている。なお、カナダ(Fleerand博士、Whiteny博士)との協力関係については、data sharing policyについては、まだ三国間での調整が行われていないが、SAGEのP1再観測に同期して、西経145度からシアトルまでの間にWHP基準を満たす観測線を設定し11年度に実施する事となっている。 |
「北太平洋亜寒帯循環と気候変動に関する国際共同研究」
平成10年度第2回研究推進委員会資料
項 目 名 |
大項目:亜寒帯循環の構造とその時間変化に関する観測研究 中項目:表層・中層の循環像に関する研究 小項目:北太平洋亜寒帯の表面海流循環に関する研究 |
担当機関 |
海上保安庁水路部 |
担当者 |
寄高 博行、林王 弘道 |
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第1期( 3年間)の目標
北太平洋亜寒帯域は、 WOCE(世界海洋循環実験)において漂流ブイ観測の空白域となっており、これを補完するために米国スクリップス海洋研究所と共同で、特に北緯40度以北の海域で漂流ブイを放流する。放流ブイを追跡することによって、北太平洋亜寒帯循環における表層循環の実態の一端を明らかにするとともに、データを蓄積してその季節変動を把握する。
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(平成 10年度)平成10年8月に行われた北太平洋亜寒帯循環西端域での観測航海時に6個の漂流ブイを放流し、追跡を行っている。 10月までは前年度と同様100〜200km程度の高・低気圧性循環の表層流を示していたが、11月中旬から20cm/s程度の速度で東〜東南東方向に漂流している。改良された漂流ブイを亜熱帯海域に放流し、テストデータを採取している。表面水温はサンプリング数減少の影響も考慮する必要があるが、匡体の影響は小さくなっていると見られる。
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平成 11年度の主な予定
47N東側の観測航海に併せて漂流ブイを展開し、表層循環マップの拡大を図る。
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これまでの主な成果
(平成 9年度)平成9年8月に実施した北緯 47度線に沿った観測航海において7個の表層漂流ブイを放流し、追跡を行った。釧路沖の親潮域に放流した漂流ブイと北緯47度線西端の東経160度で放流した漂流ブイを除く5個の漂流ブイが設定した平成10年8月まで漂流・発信を続け、なお3個のブイが平成11年1月末時点で漂流・発信を続けている。ドローグセンサーの記録からは、平成10年7月までに全ての漂流ブイのドローグが脱落していることが推定される。ドローグの半減寿命は288日を記録し、米国製に近い結果が出ている。平成9年8月に放流された漂流ブイは、 10月までは100〜200km程度の循環にトラップされていたものもあったが、11月にはいって全てのブイが10〜30cm/sの速度で東南東方向に漂流した。東向きの漂流速度は11月、2月の2回ピークを取る形となっていた。
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国際共同研究に関わる海外機関との協力状況
漂流ブイの改良については、スクリップス海洋研究所との共同で実施している。
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「北太平洋亜寒帯循環と気候変動に関する国際共同研究」
平成10年度第2回研究推進委員会資料
項 目 名 |
大項目:亜寒帯循環の構造とその時間変化に関する観測研究 中項目:水塊分布に関する研究 小項目:化学トレ−サ−を用いた北太平洋亜寒帯循環の実態解明 に関する研究 |
担当機関 |
通産省・資源環境技術総合研究所・環境影響予測部 |
担当者 |
渡辺 豊、原田 晃 |
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第1期( 3年間)の目標
時間軸をもつ化学トレーサー (フロンガス、トリチウム、放射性炭素、SF6,など)の分布およびその時間変動の把握は、本プロジェクトにおける北太平洋亜寒帯循環の実態を明らかにするうえで、水塊の形成年代、形成量、行方などの非常に有用な情報を提供してくれる。そこで、第1期では、化学トレーサーの機器開発を行い、北太平洋亜寒帯域でこれらの観測を実施しその空間分布を把握するとともに、これまでに行なわれた観測線において再度化学トレーサー観測する。 |
(平成 10年度)海水中のフロンガス (CFC-11, CFC-12, CFC-113)測定のための測定器の開発改良を行った。また、この測定器とともに昨年度開発した六フッ化硫黄測定器を船上に持ち込み、フロンガスと六フッ化硫黄の同時測定を行った(Fig.1)。この際、数測点におけるこれらの化学トレーサーの断面(140E, 147E線上の43° 10N, 24測点)を得る予定で、これらをもとに水塊形成年代等を求めた(Fig.2)。 |
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平成 11年度の主な予定
平成 11年度5月?9月初旬にかけて、水産庁開洋丸とJAMSTECみらいの2船を利用してWHP-P01-47線のrevisit観測を行う予定。この際、化学トレーサー、炭酸系物質、栄養塩等の密な観測を行う予定。 |
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これまでの主な成果
(平成9年度) 海水中の六フッ化硫黄は、水塊のトレーサーとして有効であるが、その測定前処理が煩雑であり、船上での迅速かつ高精度な測定の開発が望まれていた。そこで、自動化を図ることにより前処理を簡素化することを試み、船上での迅速かつ高精度な六フッ化硫黄の分析を可能にする前処理装置の開発を行った。平成 9年11月にこれを船上に持ち込み、海水中の六フッ化硫黄濃度測定の試験を行い、この際、数測点における六フッ化硫黄の断面を得た。 |
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国際共同研究に関わる海外機関との協力状況
HP-P01-47線のrevisit観測において、CANADA/IOSとUSA/Princeton Univ.とdata交換等の協力を行う予定。また、化学トレーサー、炭酸系物質、栄養塩等のdataの確度を維持するため、WHP-P01-47線のrevisit観測線とWHP-P13, 14, 15, 16, 17測線の交差する観測点においてUSA/NOAA/PMELとCANADA/IOSで相互検定を行う予定でいる。 |
「北太平洋亜寒帯循環と気候変動に関する国際共同研究」
平成10年度第2回研究推進委員会資料
項 目 名 |
大項目:亜寒帯循環の構造とその時間変化に関する観測研究 中項目:表層・中層の循環像に関する研究 小項目:中層循環の実態解明に関する観測研究 |
担当機関 |
気象庁気象研究所 |
担当者 |
四竈 信行、金子 郁雄 |
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第1期( 3年間)の目標
北太平洋西部亜寒帯域において形成された北太平洋中層水が南方、東方へ広がっていくと思われる実態を中層フロートを用いて観測し、観測船によるCTDデータと組合わせて中層循環の流量評価を行う。またインバース法による流量の推定も行う。 中層フロートとしては、性能が安定しており音源を必要としない P-ALACE(アラス)を20台程度投入し追跡する。P-ALACEは一度投入すると2〜3年間にわたって中層を流れ続け定期的に浮上してはデータを衛星経由で送信してくるので、可能な限り第1期の早い時点(初年度または第2年度)に集中的に投入したい。CTDの観測データは主として、高風丸の東経144度線、凌風丸の東経165線におけるものを用いるが、本課題で東経180度線の観測も行われる場合にはそのデータも用いる。できる限り観測ラインが閉じるようにし、インバース法を用いた流量計算にP-ALACEのデータをも取り込めるようにする。
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15 日毎に海面に浮上して位置決め、データ送信が行われる。平成11年3月現在21回の浮上を行い、正常にデータを送信してきている。4台は水温の鉛直プロファイルを測定し、1台は水温に加えて塩分の鉛直プロファイルも測定している。このプロファイルによれば、水温の極小に塩分の極小が対応しているが、密度では極小が解消している。従ってセンサーは良好に作動しているものと思われる。11月の高風丸の航海において、平成10年度予算で購入した5台のP-ALACEを親潮・黒潮混合域に投入した。投入は144E定線上、35〜39Nの範囲である。内2台(500mと600m層に設定)を黒潮の北縁の同一地点に同時に投入したが、15日後の最初の浮上点は、互いに約8km離れており、いずれも黒潮の南側に位置していた。フロートが測定した水温プロファイルからみても、これらの2台のフロートは、黒潮を北から南へ横断したようである。 凌風丸と高風丸の共同観測ではインバース法を適用できるように CTDの閉じた観測ラインを設定した。観測により得られたCTDデータにインバース法を適用し、日本東方の中層水の流動を定量化した。その結果、親潮下層を南下した中層水が黒潮下層に合流し、黒潮が房総沖で離岸した後の最初の蛇行による南下部分で、およそ6×106m3/sが黒潮より南の亜熱帯循環域に流入していることが示された。
( データの公開について)データの流通を図るために、本課題で投入した中層フロート 10台のデータをGTSに入力することとし、気象庁気候・海洋気象部海洋課を通じて所定の手続きを行った。平成11年2月にWMOより国際ブイ番号の割り当てを受けたので、今後できる限り迅速なデータの配信に努める。
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これまでの主な成果
( 平成9年度)(1) 本研究で用いるためのインバース法のソフトウエア開発を行った。(2) 親潮・黒潮混合水域に投入するためのP-ALACE5台の基本仕様を決め、米国ウエッブ社にて製作中。納入後、NOAA衛星による受信テストを行った。(3) 本研究では、水温の鉛直プロファイルを測定できるP-ALACEを国内で初めて多数使用する。その性能を予備的に調べるために、海地費「黒潮の開発利用調査研究」の中で、平成9年4月に琉球列島東方に投入した1台のP-ALACEの水温プロファイルと付近のCTDによる水温プロファイルを比較したところ良好な結果を得た。(4)WOCE 、「黒潮の開発利用調査研究」等で投入したALACEのデータ解析を行い、北太平洋中層水の末端域とも言うべき北太平洋西部亜熱帯域における中層循環の実態を明らかにした。
( 平成10年度)4〜5月に親潮・黒潮混合域で凌風丸と高風丸が共同観測を行った際に、9年度予算で製作・購入した5台のP-ALACEを投入した。投入は152/FONT>E線上の2点(37/FONT>0’N、3731’N)および147E線上の3点(37N、38N、39N)で行った。 |
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平成 11年度の主な予定
P-ALACE を新たに数台投入し追跡する。今までに投入したすべてのP-ALACEの軌跡、水温プロファイル、塩分プロファイル等の解析を行う。インバース法の結果を含めたまとめを行う。 |
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国際共同研究に関わる海外機関との協力状況
現在の所なし |
「北太平洋亜寒帯循環と気候変動に関する国際共同研究」
平成10年度第2回研究推進委員会資料
項 目 名 |
大項目:亜寒帯循環の構造とその時間変化に関する観測研究 中項目:水塊分布に関する研究 小項目:北太平洋西部における観測解析研究−北緯 47度線に沿った東西断面観測− |
担当機関 |
海上保安庁水路部 |
担当者 |
信国 正勝、寄高 博行 |
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第1期( 3年間)の目標
北緯47度線に沿った海洋観測を実施し、北太平洋亜寒帯循環の東西断面における水温、塩分、溶存酸素、化学成分を把握することにより、表層から深層に至る水平循環構造を把握するとともに、海洋による熱・物質の南北輸送を評価する。 また、1985年に米国によって同線上で実施された太平洋横断観測結果との比較を行い、長期変動を検出する。
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(平成 10年度)8月3日から8日にかけ西部亜寒帯循環域において、XCTD、CTD及びADCPによる観測を実施した。また、釧路沖から東経153度にかけては前年度実施した観測線と同じライン及び観測点とした。 今回の観測には、主としてXCTDを用いたことから数測点においてCTDとの比較を行なったところ、バイアスについて一定の値を示すことはなかった。 CTD観測による前年の値とXCTD観測による今年の値を単純に比較はできないものの、西側測線の根室南東線では、前年見られなかった緯度41度付近に表層から中層付近に達する高水温域が、また、中層から表層にかけての高塩分層が見られた。これは、1998年1月から根室沖に存在していた暖水塊と思料される。 前年度の観測と比較していないが、東側測線の経度149度及び150.3度付近には、表層から200m付近に達する比較的高い水温がみられ、塩分にも同様に高塩分層が見られた。
1997 年8月に実施した47N沿いの観測結果を、1985年に実施されたR/V Thomas Thompsonによる観測結果の一部(160E〜180E)と比較している。2000db以深の等圧面における比較では、165E以東における昇温傾向、165E以西における降温・高塩分化傾向が見られる。また、等密度面比較では天皇海山以西における低酸素化・高リン酸塩化という傾向が見られる。
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これまでの主な成果
(平成9年度) 亜寒帯循環系の東西海洋構造の把握及び10年程度以上の長期変化の検出を目的として釧路沖から日付変更線に至る北緯47度線に沿った観測線において、CTD・採水観測、ADCP、XBT、XCTD等による精密海洋観測を実施し、水温、塩分、溶存酸素、栄養塩等の化学成分の詳細断面を描き、当該海域の海洋構造の把握を行った。 昨年度の観測によって得られたCTDによる水温断面と、1985年の米国による観測結果を比較すると47度線に沿った断面では、天皇海山列以東で表層から深層にわたり、水温の上昇傾向が認められた。塩分濃度についての同様な比較によれば、約2000m以深で、観測線全域で最大で約1/100PSU程度の塩分濃度の上昇傾向が見られた。 また、CTDによる塩分観測精度向上のために、採水による塩分測定に使用する採水瓶を褐色瓶ゴム栓付き(約130t)から透明瓶中蓋付き(250t)に変更した結果、長期間保存しても測定値に大きな変化が見られず精度の向上が図られた。
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平成 11年度の主な予定
平成11年度における観測は、海洋科学技術センターの海洋地球研究船「みらい」を用いた47N東側測線を計画中である。
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国際共同研究に関わる海外機関との協力状況
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「北太平洋亜寒帯循環と気候変動に関する国際共同研究」
平成10年度第2回研究推進委員会資料
項 目 名 |
大項目:亜寒帯循環の構造とその時間変化に関する観測研究 中項目:表層・中層の循環像に関する研究 小項目:衛星電波高度計による海面高度の把握とその時間的変化 の把握 |
担当機関 |
気象研究所海洋研究部 |
担当者 |
倉賀野 連、蒲地 政文 |
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第1期( 3年間)の目標
統計的手法や同化モデルなどを用い、 TOPEX/POSEIDON海面高度計データや観測船データを解析し、北太平洋亜寒帯域における海面高度と表層や中層の水温・塩分・流速を抽出する。そのために、高度計データから得られる海面高度については、季節変動、経年変動、それより短い時間スケールの変動等に分離し、また順圧変動と傾圧変動に分離しそれぞれの、時空間スケールなどの変動特性を調べる。季節変動外力によるモデルの応答実験の結果についても同様の調査を行う。船舶観測データを用い、それぞれの時間スケールでの傾圧的な高度変動と海洋内部の水温・塩分構造の対応を調査する。また海上風と順圧的な高度変動との対応についても調査する。得られた統計量を用いて、海面高度の平均場及び変動場や中層・表層の構造を推定する。また変動の時空間スケールの解析結果を用いて、推定した中・表層の物理量を中・高緯度海洋データ同化モデルへ同化し、海面高度変動や海洋内部の水温・塩分・流速場の変動を解析する。
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(平成 10年度)軌道沿いのデータに対しスペクトルを計算したところ、波長 800kmより短波長にピークがみられ、傾圧変動に対応していると考えられる。そこで、200kmのカットオフフィルターをかけメソスケールとラージスケールの変動に分離し、それぞれの統計的時空間スケールの解析を行った。亜寒帯では、分離しないときには解析できなかったメソスケールの海面高度変動はRMS3cmで、ラージスケールの高度変動よりも小さく、位相速度は0.5cm/sec程度であった。 得られた時空間スケールをもとに、ラージスケールおよびメソスケールの海面高度偏差データを作成した。得られた時空間スケールを利用し、 1961〜1990年の30年間の船舶観測データから、ラージスケールの変動に伴う表層水温、表層塩分の客観解析を行った。この結果を用い、表層水温・塩分の平均場や変動特性、それぞれのスケールでの海面高度と表層構造との相関などの解析を行った。得られた平均場では、亜寒帯循環はLevitus(1994)よりも弱めに、黒潮続流は強めになった。またメソスケールの変動は、ラージスケールの変動より深い構造を持つことが分かった。モデルによる季節変動外力応答実験から計算した渦エネルギーは、西側強流帯を中心に大きく、実際のメソスケールの海面高度変動量も同様の分布を示す。しかし、北緯 45度帯付近で、モデルによる渦エネルギーがやや大きく計算されているのに対し、実際のメソスケールの高度変動は大きくない。高度計データから推定した水温・塩分を同化することによって、改善されることが分かった。 |
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これまでの主な成果
(平成9年度) 1993年〜1997年7月までのTOPEX/POSEIDON高度計データから、海面高度変動の時間スケールを分離しないで時空間スケールを算出した。北太平洋亜寒帯海域では経度方向に1200km、緯度方向に550kmのe-foldingスケールを持つ。これらは季節変動と見られ、中規模渦の変動よりも卓越した振幅を持つことが分かった。 得られたスケールを基にして、5日毎緯経度1度格子の海面高度偏差データを作成した。このとき海面気圧に対する高度補正については、全球海面での補正値の総和を0とする新しい補正法を適用した。格子化した海面高度偏差データから、4年平均を取り季節変動を算出し、季節変動の時空間スケールの解析を行った。しかし、得られた4年平均値には、日本近海では中規模渦程度の現象が多く残っており、季節変動を抽出するには、さらに工夫が必要であることが分かった。 WOA1994に格納されている船舶観測データを用いて、海面力学高度(0/1500db)と海洋内部の水温・塩分の関係を調査した。得られた統計量と、高度計データを用いて内部の水温塩分を推定したところ、高度計データには順圧変動が含まれることが推定され、この方法を適用するには、順圧変動を分離する必要があることが分かった。 |
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平成 11年度の主な予定
海面水温データと海面高度計データを利用した表層水温・塩分の推定法を確立し、推定値のデータセットを作成する。推定したデータを用いた同化実験を行い、その結果と各種現場観測データとの比較を行う。同化結果を用いた、平均場・変動場の解析を行う。 |
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国際共同研究に関わる海外機関との協力状況
GODAEに参加し、海洋データのモデルへの同化手法について国際的な協議を行っている。本年10月に米国で開催されるTOPEX/POSEIDON・Jason-1合同科学検討チーム会議に出席し、高度計衛星の運用状況、データの利用に関する情報の交換を行った。 |
「北太平洋亜寒帯循環と気候変動に関する国際共同研究」
平成10年度第2回研究推進委員会資料
項 目 名 |
大項目:亜寒帯循環の構造とその時間変化に関する観測研究 中項目:表層水温変動に関する研究 小項目:北太平洋亜寒帯循環表層水温の経年変動に関する研究 |
担当機関 |
水産庁 遠洋水産研究所 海洋・南大洋部 低緯度域海洋研究室 |
担当者 |
渡邊 朝生・岡崎 誠・稲掛 伝三 |
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第1期( 3年間)の目標
亜寒帯海域の水温・塩分データベースを整備し、前線位置の変動・水塊の特性等の経年変動を解析し亜寒帯海域における海洋構造の経年変動の実態を把握する。また、亜熱帯海域における表層水温変動と亜寒帯海域の変動との関連を調べる。水産資源調査船を利用したXBT・XCTD観測網を構築し、定線上の海洋構造の変動を詳細に調べる。これまでに遠洋水産研究所に蓄積されている亜寒帯海域のCTD, XBT, ADCP、表層水温・塩分連続観測データ等に対して十分な品質管理を実施し、データベースとして整理する。
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(平成 10年度)[資料解析] 1991年以降実施されているさけます調査定線観測結果の解析に着手し、 92年から98年までの7年間の北緯40度線に沿った6月の表層水温の経年変動を解析した。表層混合層の水温は92年と94年に高く、それぞれ他の年の平均よりも1℃程度高かった。この変動は東経165〜170に存在する二次黒潮前線の南北変移とも密接な関係を持つと推測される。[観測網の展開] 夏季のさけ・ます定線観測(東経165度線、日付変更線)にXCTDを導入し、緯度30分毎の水温・塩分の高密度観測を実施した。8月から11月にかけて照洋丸・開洋丸の北太平洋亜寒帯海域の調査航海に乗船し、東経175度30分、ハワイ北方の西経150度線と西経160度線で亜熱帯前線から亜寒帯海域にかけての緯度30分間隔でのCTD/XCTD観測を実施した(図1)。これらの観測により、北太平洋亜寒帯循環域の東と西の構造の差を把握した。また99年3月にベーリング海から北海道東方沖までの千島列島沖でXCTD観測を実施し、亜寒帯循環西縁の冬季の表層構造を把握した(図2)。
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これまでの主な成果
(平成9年度) [資料解析] 遠洋水産研究所が中心となって継続してきた北太平洋亜寒帯海域における夏季のさけ・ます資源調査 によって得られた表層水温観測データセット(海面から250mまでの基準層データ)の解析を行い、西部亜寒帯循環域においてdecadal−interdecadalの時間スケールの変動が卓越すること、また西部亜寒帯循環中央部に形成される水温極小構造がdecadalの時間スケールで大きく変動していることを明らかにした。[観測網の展開] 日付変更線(若竹丸、6−7月、 38°30'N〜 58°30'N)と東経165度線上(北光丸、7月、40°N〜51°N)のさけます調査南北定線において緯度1度毎の 資源調査定点(CTD観測実施)の中間点でのXBT観測を依頼し、表層水温の高密度観測を実施した。また、98年2月の水産庁漁業調査船「開洋丸」によるさけ・ます越冬期調査では、北緯40度以北の東経165度線と日付変更線上で緯度30分毎のXCTD観測、その中間点でのXBT観測を実施し、 冬季の亜寒帯循環の表層構造を詳細に把握するデータを得た。 日本海(若竹丸、5月)、野島崎沖太平洋(開洋丸、8月)等でのXCTDとCTDとの比較試験から、現在の落下式が良い近似式になっていること、塩分観測値に依然としてバイアスが含まれていることがわかった。なお、98年2月の開洋丸調査でのXCTD観測データから着水時のe-holding深度はおおよそ10〜20mであることがわかった。
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平成 11年度の主な予定
・西部亜寒帯循環系の経年変動についてのとりまとめを実施する。 ・北海道区水産研究所のさけます研究グループに依頼し、さけます調査の夏季調査定線でのXCTD観測および海洋観測データを取得する。また、遠洋水産研究所の鯨類管理研究室が計画中のオホーツク海での鯨類目視調査に XBTまたはXCTD観測を依頼する。・平成11年5月21日から6月17日の間、水産庁漁業調査船「開洋丸」を用いて、WOCE−P1ラインの再観測に参加し、北海道沖から西経170度までの間の観測を実施する。
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国際共同研究に関わる海外機関との協力状況
特になし。 |