科学技術振興調整費による総合研究
「北太平洋亜寒帯循環と気候変動に関する国際共同研究」
平成9年度第2回研究推進委員会 議事録
【日 時】 平成10年3月16日(月)13時30分〜17時
【場 所】 科学技術庁第4会議室(通産別館9階)
【出席者】
委 員 長:杉ノ原
委 員:淡路,石井,遠藤,小池,佐々木,永田,菱田,深澤,安田
オブザーバー:高芝(水路部),寄高(水路部),吉田(気象庁)
事 務 局:堤(科技庁),矢吹(科技庁)
【議 事】
(1)事務局からの連絡
資料の確認
(2)研究推進委員長あいさつ
このプロジェクトは計画を事前によくねったうえでスタートした。あとは実行するだけである。
推進委員会では,目標達成に向けてのアイデア等話し合っていきたい。すでに結果の出始めているところもあるようで,報告を楽しみにしている。
(3)議事(司会:杉ノ原)
3−1)平成9年度第1回推進委員会議事録の確認3−2)平成9年度研究状況,10年度の予定の報告(各分科会主査)「亜寒帯観測研究分科会(WG1)」(深澤)「循環系相互作用分科会(WG2)」(安田)「二酸化炭素の挙動分科会(WG3)」(佐々木)「モデル化及びデータ管理分科会(WG4)」(遠藤)3−3)その他
3−1)平成9年度第1回推進委員会議事録の確認
各委員に事前配布された議事録案が,異議無く承認された。
3−2)平成9年度研究状況,10年度の予定の報告(各分科会主査)
「亜寒帯観測研究分科会(WG1)」(深澤)
WG1に属する各項目は,WG2ほどプロセスオリエンテッドではないが,主として観測を行う課題の集まりである。詳細は資料4にあるとおり。おおむね当初の予定通り進んでいるが,
- XBT観測の船の数が2隻
- P-ALACEフロートがまだ生産中で運用は来年度となる
といった点で予定通りでないものがある。あとは特に遅れているというものはない。今年度トピック的におもしろい成果は,
- 表面ブイが全部で6個漂流継続中でデータが取れ続けている
- 海面高度から得られた変動の卓越スケールなど,モデルとの比較を行ううえで有効なものである。
- 北緯47度で測点間隔は粗いが高精度の観測を行っており,1985年米国に よるP1ワンタイム時と比較して,3000m以深で水温塩分が有意に上昇しているという興味深い結果を得ている
などである。
この分科会の中にWHPワンタイムの再観測に備えた化学分科会を開いていた。ワンタイム再観測については,P1(北緯47度),P16N(西経150度),P13(東経165度)が候補である。このうち,P1とP16Nを船の配置も含めて具体的に検討し始めている。
なお,資料の最後に今年度の成果を別紙でまとめた。
<以下,主な質疑>
- ワンタイムの再観測については,前回推進委員会の最後に深澤さんに中心となってやって欲しいとお願いしたとおりだ。本日最後の議題としたい(杉ノ原)
- P-ALACEは毎年5台づつ投入できるのか?(遠藤)
- 予算にもよるが大丈夫だと思う(深澤)
「循環系相互作用分科会(WG2)」(安田)
資料5と補足OHPにより説明。分科会では若土教授(北大低温研)を加えて議論。
- JAMSTECでは,1998年7月に,若土さんのグループ,ロシア極東水文気象研究所(観測船クロモフ)と共同でオホーツク海の観測を行う計画がある。
- 北水研では,千島列島周辺の海洋観測を継続して実施している。データ解析ではスベルドラップ輸送量と観測流量の比較を行った。
- 東北水研では本州東方における観測結果をもとに,オホーツク起源と見られる(?)低渦位水の存在が示された。
- 中央水研は低塩分水が黒潮続流の下に貫入している様子を観測した。
- 安田は水温極大の深度などについて調べている。
- 気象庁では東経152度,165度の観測を行い,165度では密度-塩分断面で水がきれいに分離できるという結果を得ている。
- 多くの観測が行われており,第I期の最後を目標に,これらを集約して成果としたいと考えている。
<以下,主な質疑>
- 東経165度の結果については川辺さん(海洋研)がまとめたものがJGRに掲載されるので参考にするとよい。この分科会の成果としては,亜寒帯と亜熱帯の交換どどの程度か,誤差の小さい見積ができると期待している(杉ノ原)
- 少なくともWGの中で全データを集めてマッピングを行いたいと考えている(安田)
「二酸化炭素の挙動分科会(WG3)」(佐々木)
資料6により説明。資料は分科会会合で各担当が使ったものの集約である。
- 中央水研では東経144度の観測を実施した。二酸化炭素分圧データについては結果が出ている。全炭酸,栄養塩等のデータはまだ。
- 気象庁では今年度高風丸の装置の整備。観測は来年度から。データの標準化とCO2データベースの作成も行う。
- 水路部は北緯47度を継続したかったが,平成10年度は難しい。
- 東海大学では交換係数についての調査を進めた。
- 遠洋水研では生物ポンプのプロセスを調べている。東経165度と180度の観測を行った。
分科会ではデータ管理と流通についても話し合った。データリストや成果をホームページ
(HP) に掲載していくという点では了解が得られた。
現場pCO2については現場の水温(船底の水温)の精度をきちんと確認しておかないと数値としての議論が出来ないので,現在航走用水温計で測定している値の検証をきちんと行ったうえで,公表されるべきである。現在気象庁を中心に値あわせの作業中。
データポリシーについて,炭酸系データは「亜寒帯」のなかで中央水研のみが扱っており,自分の所だけデータを出すのはつまらないという意見がある。また,生物データ等,フォーマットが決まっていないものについては,どういうふうに出して良いかわからない。
<以下,主な質疑>
- データフォーマットについては,こういうフォーマットが必要という意見を出して欲しい(永田)
- pCO2と水温の話に関しては,走りながら測るのでいわゆる海洋観測データは使えない。航走用水温計にも精度が要求されるということである。きちんと測れているところもあるので,そういったところとのインターキャリブレーションが当面の解決法としてベストである(佐々木)
- 既に観測が始まっているので,早期に解決してほしい(永田)
- プランクトンデータの書式は既存のものがJODCにあるので利用を検討してはどうか(遠藤)
「モデル化及びデータ管理分科会(WG4)」(遠藤)
この分科会は,モデルを中心にした研究課題とデータの取扱の課題からなる。このプロジェクトで計画している成果のデータリストなどの情報が,誰にでも利用できるように環境を整備した。また,ファイナルアーカイブデータについてのデータポリシー(案)を作成して,各分科会で検討してもらった。
<各課題の報告を資料5により説明>
- HPによる情報交換を始めたが,これは一般にも公開していくことで分科会は了承した。研究者間での中間データの交換については,公開/非公開は各自の判断で行うしかないと思う(遠藤)
- HPに掲載する情報等のフローデータの交換につては,取り決めを作ってというのは困難。なにを掲載するかは研究担当者の判断に任せるしかない。中間データの事前交換については,交換のための環境を用意するので,それを各研究担当者が自由に活用していくのがよい(吉田)
- データポリシー(JODC原案の観測データの最終アーカイブに関するもの)については,公的な資金による観測であるから提出は当然とする考えもある(遠藤)
- WG2で議論したが,半年,1年,2年という段階的な期限はそれぞれ早すぎるのではないかという意見があった。最終的な数値を出すには2年くらいはかかる。このプロジェクト内で十分な成果を出してから一般に公開すべきであり,プロジェクトの終了前に公開するのはどんなものか。また,航海まるごとこのプロジェクトの資金によると言えない場合もあり,切り分けが単純でない場合もある。データの公開に厳格になるために同じ航海のデータが切り分けたりするとかえってマイナス(安田)
- ポリシーを決めてもデータが出てこないのは世の常であり,努力目標としては早いぐらいでないと意味がない。余裕を見ていると,データが出てくる頃にはプロジェクトが終わっているということになる(永田)
- 継続審議してほしいが,いずれにしても急いでまとめてもらいたい。分科会では「推進委員会への案」をまとめてもらいたい(杉ノ原)
3−3)その他
「WHPワンタイム的観測の分科会」(杉ノ原)
前回の推進委員会で,WHPワンタイム的観測のワーキンググループということで,とりまとめを深澤さんにお願いした。その後の進み具合は?
- 前回の推進委員会以降化学分析関係者の集まりはない。現在は,シップタイムの予定をにらんで具体的に考える段階にある。P1はみらい+望星丸,P16Nは望星丸,で可能性を検討中。P13は凌風丸で行えると考えている。みらいの平成11年の利用に向けて公募の準備中。渡辺,深澤で公募の雛形を作成中。平成10年は間に合わない。平成11年は第I期の最終年度であり,第I期の目玉のひとつとして実施したい(深澤)
- みらいは共同利用で一般公募を行っているわけだが,中身が良ければ採用される。望星丸と組み合わせた計画を示せれば良いのではないか(菱田)
- 元々P1は水路部でということであったが,諸般の事情で水路部では困難となった。そこで望星丸がKNOTに協力し,それにみらいを組み合わせてP1を実施しようとしていると理解している(杉ノ原)
「推進委員の追加」(事務局)
遠藤委員が海洋科学技術センターに異動予定ということで,気象庁関係の推進委員がいなくなる。4月に気象研究所の部長となる予定の宇治豪さんに推進委員となってもらいたいと考えている。また,平成9年開始の戦略的基礎研究,及びJAMSTECの課題とも関係の深い北大低温研究所の若土先生を推進委員としたい。
「WG4の委員の追加」(遠藤)
WG4の特にデータ管理の分野で手が足りないので,本プロジェクトの立ち上げにも加わった水路部の道田さんにWG4の委員として参加してもらいたいと考えている。
- 来年度も推進委員会は二度開催する予定。来年度第一回目は9月頃になる見込みである(事務局)
- 2年目にはいるので成果を出していくようにしてもらいたい(杉ノ原)
(4)閉会