科学技術振興調整費「北太平洋亜寒帯循環と気候変動に関する国際共同研究」

平成9年度第1回推進委員会 議事録

 

日時   平成9年10月28日(火)13時30分〜17時

場所  科学技術庁第9会議室(通産別館9階)

出席者

              委員長:杉ノ原

              委員:淡路,石井,遠藤,小池,佐々木,永田,菱田,深澤,安田

              (欠席:大谷,柏井)

              オブザーバー:高芝(水路部),寄高(水路部),吉田(気象庁)

              事務局:堤(科技庁),矢吹(科技庁)

【配布資料】

   資料 No.1:平成9年度実施計画

    資料 No.2:「亜寒帯観測研究分科会」資料

   資料 No.3:「循環系相互作用分科会」資料

   資料 No.4:「二酸化炭素の挙動分科会」資料

   資料 No.5:「モデル化及びデータ管理分科会」資料

   資料 No.6:分科会メンバーリスト(科技庁事務局まとめ)

議事

(1)開会(矢吹)

(2)主催者挨拶(堤)

  亜寒帯(SAGE)FSを経て今年度より本課題として実施される。今回はその最初の推進委員会である。通例I期3年II期2年で実施される。総合研究としての視点で取り組んでもらいたい。平成9年度の総予算は272百万円である。

(3)事務局からの連絡

  資料の確認

(4)推進委員長挨拶(杉ノ原)

   1990年から5年間WOCEを実施した。物足りない点もあったが多くの成果も出したし,まだまだこれから出つつある。そのときのメンバーが考えた次のプロジェクトがこの亜寒帯である。亜寒帯はWOCE, CLIVAR, JGOFS, GOOS等に関係するが,それら自体のプロジェクトではない。立ち上がりが遅れた感はあるが,その間にWOCEのデータにじっくり取り組むことができた。

(5)議事(司会:杉ノ原) 

 議事を始めるにあたり、補足説明として(事務局:矢吹)

   本総合研究は、今回が初めての研究推進委員会である。形式的には、まず推進委員会を開催してから、各分科会を開催して具体的な研究の打ち合わせにいくのが普通ですが、ここでは、通例とは異なり、既に、各分科会を設置し、実質的に活動をお願いした。理由は、既に昨年からFSが実施され各研究項目の内容が固まっており、分科会での討議を先に行って、研究推進委員会を実りおおい会議にするためです。実際、既に各分科会を開催して、各研究大項目ごとに研究担当者の間で討議をしていただいていますが、この点をご了解下さい。

 

5−1)平成9年度実施計画の説明(矢吹)

5−2)平成9年度研究計画と進捗状況(各分科会主査)

「亜寒帯観測研究分科会(WG1)」(深澤)

   資料2により説明。資料2P8にあるSAGE化学分科会は,WHPワンタイムの再観測を行うために,特に高精度の化学トレーサーの分析能力を持つ人と機械をどう配置するかを検討するために自発的に会合を開いている。今後,各省庁の人にも参加してもらう方向で考えている。また国内の他の研究(戦略基礎,NEDOなど)との連携も必要。特に野尻さん(環境研)の戦略基礎研究との間で,分析データの標準化,スタンダードの共有といったことが必要。以下,主な質疑。

・野尻さん(環境研)の戦略基礎研究とは?(小池)

JGOFS関連の研究プロジェクトで,日本の近くにtime series stationを設けようというもの。44N, 155Eに複数の船で高頻度の観測を行おうというもの。その中で,測器とスタンダードの共通性に力を入れている。北大の船,みらいも含めて考えているが,まだまだ未知数が大きい。

 

「循環系相互作用分科会(WG2)」(安田)

 資料3により説明。以下,主な質疑。

・かなりの観測資源が投入されているようだが,ラインの調整,データの交換が円滑に進むようにしてもらいたい(永田)

SAGEの枠内だけでなく,各機関の通常の観測も多く含まれているようだが,亜寒帯ではどのラインというのは把握しているか?SAGEをアピールするとき,このプロジェクトでどこが強化されているかが明らかにできるとわかりやすい(杉ノ原)

・データ交換についてはどうなっているか(深澤)

・分科会では詰めていない(安田)

WG1にもWHP的観測を目指す研究項目があるが,WG2の観測船の研究項目との境界は何か?(杉ノ原)

process orientedなのはWG2という感じである。WG1は海域も広く,時間がかかってもいいから,decadal, inter-decadalなものを把握していこうというもの。重複が多いのは確かである(深澤)

WHP的観測を目指す研究項目のうち,気象庁がこのWGにあり,他の二つがWG1にある。連携を密にして欲しい。これについてはまた後で(杉ノ原)

 

「二酸化炭素の挙動分科会(WG3)」(佐々木)

 資料4により説明。二酸化炭素分圧のデータ管理について,分科会の意見として,気象庁が担当することにしたい(資料4P3)。また、「動植物プランクトングループ」から、北水研の研究の関係でその一部を、北海道東海大学に委託をしたいとのこと。以下,主な質疑。

・中央水研の144E観測は,気象庁とうまく調整して欲しい(杉ノ原)

・二酸化炭素分圧データの管理について,長いスケールのデータアーカイブは気象庁で大丈夫か?JODCとのリンクを考える必要があるのでは(永田)

WDCGGはこのプロジェクトの間だけの組織ではないのでその点は問題ない(吉田)

・二酸化炭素分圧データの管理については気象庁とJODCで十分詰めて欲しい(永田)

・各機関が測ったpCO2が一致するのか疑問があるのですが?(深澤)

・環境研中心に一度各機関で比較したことがある。pCO2はまあまあ一致する。アルカリ度はばらばらだった(佐々木)

JGOFSinter comparisonをやっているはずだが(杉ノ原)

・確かに比較は必要。気象庁も水産庁も参加してやらなくては。気象庁は二酸化炭素観測のメインなのだから(佐々木)

pCO2を多機関で観測する目的は?(小池)

・大気海洋間のフラックスのseasonalityの把握が目的。また全炭酸の海洋中での輸送の問題にも取り組みたい(佐々木)

 

「モデル化及びデータ管理分科会(WG4)」(遠藤)

 資料5により説明。気象庁とJODCのデータベースの仕訳は,気象庁が単年度の研究成果やフローデータを扱い,また,最終アーカイブ前のデータを研究者間で共有するスペースを提供するというもの。JODCは観測データの最終アーカイブを行う。研究者間では最終QC前のデータでも見たいし,見せたい。最終QC前のデータでも,PIの許可のもとで使えるよう,フローデータとしてSAGEグループの中で流通させるようなシステムが欲しい。以下,主な質疑。

・実際にどういうふうにデータを出し,管理するのかという問題がある。それぞれの分科会で,いつまでにどんな形で出していくという話はなされていない。データリスト(カタログ)作り,分類も含めて,次期推進委員会で決めたい。WG4として案を作り,各分科会にまず検討してもらう。推進委員会の前のWG4でその結果をまとめ,推進委員会に諮る(遠藤)

・メタデータについて,既存のデータでメタデータの不足しているものの処理に苦慮している。メタデータをきちんと残すようにお願いしたい。QCについて,データセンターで行ういままでのQCは集まったデータにフラグを付けるというものであったが、集まる前のデータを良くする方策を考えないといけない(永田)

・データリスト作りにあたっては,どうデータを集約するかについて事務局案を作って各分科会主査に諮ることとする(遠藤)

・観測計画を集めるにはフォーマットを決めればなんとかなるのでは?(杉ノ原)

JODCに既存のものがある(遠藤)

・データの公開について議論したい。PIは最終QCが終わっていなくても良いからftp等でデータベースに入れるべき。提出期限を設けるべきか?(杉ノ原)

・期限は設けるべきだ。ただし最終QCまで行かないものの話。それなら観測後一週間で十分だろう。みんな気象庁のデータベースに放り込むようにしよう(深澤)

・データの種類によってQCのスピードが違う。化,生物は遅くなるだろう。物理は可能だが。できるところはできるしできないところはできない,といった形に成らざるを得ない(永田)

・データの種類によって期限を変える必要は無いということですね(杉ノ原)

・科技庁としてしばりはあるのか?(永田)

・科技庁としては公開の姿勢ですか?(杉ノ原)

・データの公開について話し合ってはいるが具体的な形はない。原則としてはデータは公開していくべき,それもなるべく早く(堤)

・提出期限等具体的なことはWG4で議論を(杉ノ原)

・宣伝できる成果等は気象庁のデータベースに載せていく。生データについては何段階か経て最終的な物をJODCのデータベースにという形にしたい(永田)

 

5−3)その他

WHPワンタイム的観測について」(杉ノ原)

 本プロジェクトのなかでhydrocast関連課題がWG1WG2に分かれている。このうち,水路部(P1, 47N),東海大(P16, 152W),気象庁(P30, 165E)が目指すWHPワンタイム的観測はこのプロジェクトの柱のひとつである。今の体制ではこれらの課題が別々のWGで議論されているが,ワンタイム的観測を特に重要と位置づけ,そのためのWGを作ることを提案したい。やるからにはワンタイムのre-occupationとして満足できる物にしたい。それはCLIVAR DECCENの先取りを意味し,日本として,気候モニタリングの分野でのイニシアチブを示すことになる。以下は主な質疑。

coast to coast はとても不可能では?(永田)

・もちろん可能な範囲でである(杉ノ原)

・気候変動のシグナルをつかむのであれば海底まででなくともよいのでは?(遠藤)

・そう言ったことも含めて科学的な評価と観測の技術的な問題を議論するグループを作って検討していただきたい(杉ノ原)

WHPの再観測が重要なので,そのために新たに別枠でがんばるということか?(小池)

・既に計画として三本のラインが提案されている。それをやるからには実りの多い物にしたいという意図である。本プロジェクトには10100年変動の解明という目的がある。そのためにはモデルなども利用していかなくてはならないが,観測データとしてワンタイムが必ず寄与することになる。WGを作ることに異論はありませんか?(杉ノ原)

・何をする作業部会かもう一度クリアにしていただきたい(永田)

terms of referenceから作っていこう。深澤さんにWGの責任者になって頂きたい。メンバーの選定はその後(杉ノ原)

・ワンタイムの重要性から始めるのではなく,今,誰が,どこをやる気があるかというところから始めるべきである。新たにワンタイムを立ちあげるのは無理(深澤)

WGの設置については異論はないということでお願いします(杉ノ原)

 

「次回推進委員会のスケジュール」(矢吹)

  次回は年度末に実施することになる。120日くらいまでに日時を決定するよう調整をすすめる。この時も、まずWGの1と2と3を行い、その後にWG4を行って、最後に研究推進委員会という段取りにしたい。その中で、データリストの作り方についても討議をお願いします。最終的には、推進委員会で討議になります。

  平成10年度の積算を発注した。作成かたよろしくお願いします。

 

(6)閉会

以上